<Clinical scenario>
50代男性、diffuse cutaneous SScと診断。
胸部CTにて軽度の間質性肺炎あり。
強皮症腎を起こしやすい抗体なので、血圧測定をするよう指示した。
上司に報告すると、褒められると思ったのに意外な言葉が返ってきた。
「最近、悪性腫瘍との関連が言われているから、注意しておこうか。」
< 疑問、発生!>
<Uptodateにて>
scleroderma malignancyを検索し、Overview of theclinical manifestations of systemic sclerosis (scleroderma) in adultsを開いた。
根拠となっている研究は以下の二つ。後者の最近の大規模なコホート研究を読むことにした。
Arthritis Rheum. 2010 Sep;62(9):2787-95. doi: 10.1002/art.27549.
Close temporal relationship between onset of cancer and scleroderma inpatients with RNA polymerase I/III antibodies.
Shah AA, Rosen A, Hummers L, Wigley F, Casciola-Rosen L.
Arthritis Res Ther. 2014 Feb 14;16(1):R53.
Association of anti-RNA polymerase III autoantibodies and cancer inscleroderma.
Moinzadeh P, Fonseca C, Hellmich M, Shah AA, Chighizola C, Denton CP,Ong VH.
Abstract
INTRODUCTION:
METHODS:
大きな三次病院を受診したSScを詳しく調べた後ろ向きコホート研究を行った。私たちの臨床データベースを用いて、また患者の診療録のレビューによって。私たちはこのコホートにおいて全ての癌の発生を評価し、癌のないSScと比較した。臨床背景、抗体を含む詳細がSSc患者における癌の発生リスクに関連するかを調べた。
RESULTS:
SSc患者2177例のうち、7.1%が癌の病歴を有した。26%が抗セントロメア抗体陽性、18.2%が抗Scl-70抗体陽性。26.6%が抗RNA polymerase III (anti-RNAP)抗体陽性。癌のタイプの主な者は乳癌(42.2%)、血液系(12.3%), 消化管(11.0%)、婦人科癌(11.0%)。 RNAPを有する患者における癌の頻度 (14.2%)は抗Scl-70 (6.3%)、ACAs (6.8%)よりも高かった (P < 0.0001and P < 0.001, respectively)。SScの発症から36カ月以内に診断された患者の中で、RNAPを有する患者は(55.3%)はその他の抗体を有する患者と比べ多かった (ACA = 23.5%, P < 0.008;and anti-Scl-70 antibodies = 13.6%, P < 0.002, respectively)。乳がんは抗RNAPのSSc患者で時間的に関連し、抗RNAP陽性の患者はACAを有する患者と比べ癌のハザード比が2倍高かった (P < 0.0001)。
CONCLUSIONS:
私たちの知る限りこの研究は現在まで最大の人口からなり、独立して抗RNAP抗体を有する患者において癌との関連がSSc発症と時間的に密接に関連することを確かめた。これはSScの患者の一部はParaneoplastic現象であることを指示するものだ。これらの患者には注意を維持しなければならない。臨床的に適切であれば根底にある悪性腫瘍を考慮すべきだ。
Figure 1. 強皮症に特異的な自己抗体の各々における異なる癌の発生頻度。
<イギリスのデータのまとめ>
・RNAPの46.3%が乳癌。
・Scel-70の17.9%が肺癌。
・ACAの20%が消化管の癌。
では、日本人ではどうなのでしょう。
以下の検索式を検索します。
(rna polymerase[title]) AND (systemic sclerosis[title] or scleroderma[title]) Japanese
6件ヒットしたうち、2番が求めていた研究です。Abstractだけ訳します。
Association of anti-RNA polymerase III antibody and malignancy inJapanese patients with systemic sclerosis. Saigusa R, et al.
J Dermatol. 2015 May;42(5):524-7.
Abstract
・SScの患者は一般人口に比べ悪性腫瘍のリスクが高い。最近、RNA polymeraseIII 抗体を有するSScの患者はその他の疾患特異的な事項抗体を有する患者と比べ悪性腫瘍のリスクが上昇していることが米国人、ヨーロッパ、オーストラリア人において報告されている。
・そのため、私たちは261例の強皮症患者において疾患特異的自己抗体と悪性腫瘍との関連を調べた。
・抗RNA polymeraseIII抗体を有する悪性腫瘍の頻度は (7/22, 31.8%)、抗topoisomerase I抗体を有する場合(2/82, 2.4%)、抗セントロメア抗体を有する場合と比べ(8/137, 5.8%)、有意に高かった。
・重要なことに抗RNA polymeraseIII抗体と悪性腫瘍を有した7例のうち、3例 (42.9%)はSSc発症から6ヶ月から12ヶ月の間に悪性腫瘍を発生したことだ。このように日本人の抗RNA polymeraseIII 抗体を有するSSc患者における悪性腫瘍の合併はその他の人種と同様高い。このことは抗RNA polymeraseIII抗体を有するSSc患者は人種の差を超えて、同じ病因プロセスを有することを示唆する。
→日本人でも抗RNA polymerase III抗体を有するSSc患者は3割が悪性腫瘍を合併します!
<Scenario caseの経過>
イギリス(UK)のコホート研究にて、男性なので、乳癌と婦人科は差し引いて考えます。
・RNAPは9.8%が肺癌、7.3%が消化管の癌、4.9%が泌尿器生殖器癌、血液系12.2%、皮膚癌7.3%。
・胸部CTで肺癌はなかった。CBCに異常なし。皮膚に皮膚硬化以外の所見なし。
→消化管、泌尿器生殖器についてスクリーニングを検討することとした。
日本の研究でも22例のうち7例(31.8%)が悪性腫瘍を合併し、7例のうち3例は6-12ヶ月以内に合併します。
→次回の受診時に、悪性腫瘍のスクリーニングについてICすることにした。