リウマチ膠原病のQ&A

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成人の炎症性筋症の分類①(DMとIMNM)

Classification and management of adultinflammatory myopathies.
 
Selva-O'Callaghan A, et al. 
Lancet Neurol. 2018 Sep;17(9):816-828. 
 
 
 
 
Classification
 
Dermatomyositis皮膚筋炎
 
皮膚筋炎は典型的には週単位から月単位で出現する近位筋の筋力低下と皮膚所見を呈する。しかし皮膚筋炎の皮疹を有する患者の中には筋症状がほとんどないか全くないものもいる。その場合、筋力低下、筋原酵素上昇、EMGMRI、筋生検で異常がでない。医師のなかにはhypomyopathic or amyopathicの型が異なるタイプと考えるものもいるが、ここでは簡便のため一緒に扱うこととする。
 
病因的な皮膚所見はすみれ色の眼窩のしばしば浮腫状の皮疹(ヘリオトロープ疹)と関節伸側の紅斑(Gottron’s papules)を含む。通常筋原酵素は上昇し、MRGは筋原性パターン(mopathic motor units with fibrillations and spontaneous sharp waves)を呈する。その他の炎症性筋症と同様、MRIは筋の炎症と壊死を反映した筋内のT2高信号を呈する。さらにDMの患者は筋膜の病変の結果として個々の筋を取り囲むT2高信号域を有し、これはその他の炎症性筋症ではあまり見られない所見である。筋痛と掻痒も疾患の重要な特徴である患者もいる。
 
筋束周囲の萎縮はDM患者の筋生検において特性の高い所見である(特異度>90%);しかしこの所見は感度は高くない(25-50%)。データによると筋束周囲のヒトmyxovirus抵抗性蛋白1retinoicacid-inducible gene 1が筋膜周囲の萎縮よりも高い診断特性を有し(71% and 50%)、特異性は同等であった。さらにDM患者の組織はしばしばplasmacytoid denric cells, Bcells, CD4 T cells, and macrophages有意の細胞浸潤を有する。これらの細胞はしばしば中型血管を取り囲み、筋周囲に浸潤する。しかしDM16%までの患者が明らかな細胞浸潤を有さずIMNMと区別がつかない著名な壊死を有する。筋内毛細血管におけるmembraneattack complexの沈着とmicrotubular inclusionsの存在がDMの早期の所見である;病気が進行するにつれて毛細血管の脱落もおきうる。さらにその他の炎症性筋症と同様にclass-1 major histocompatibility complexが筋線維の筋細胞膜上でupregulateされている。DM患者ではclass-1 major histocompatibility complexupregulationとその組織所見(筋線維変化と再生、壊死)が筋束周囲に特に顕著たりえる。
 
頻度を調査した研究において約70%DM患者がDMの特異抗体を有し、ユニークな臨床的なphenotypeを呈する(table 1)Mi2核抗原を認識する自己抗体が近位筋の筋力低下と重症の皮膚所見のような典型的なDM所見と関連する。NXP2を認識する自己抗体を有するDM患者はその他の抗体を売宇する患者よりも近位筋・円いきんともに筋力低下を呈し、皮下の浮腫、嚥下障害を起こしやすい。さらに抗NXP2抗体陽性の患者は軟部組織の有痛性のカルシウム沈着を来たす石灰化を来たしやすい。NXP2TIF1抗体を有するDM患者は診断前後の3年以内の悪性腫瘍のリスクが高い。そのため包括的な癌のスクリーニングやPET-CT検査がこれらの患者に重要。
 
小さいユビキシン様modifier activating enzymeまたはmelanoma differentiation-associated gene 5 (MDA5)を認識する自己抗体を有するDM患者は筋炎よりも重症の皮膚所見を有する傾向がある。DMの典型的な皮膚所見とともに抗MDA5抗体陽性の患者は手指の伸側や手掌に潰瘍を来たしやすい。抗MDA5抗体を有する患者の多くがhypomyopathic or amyopathicである。さらにその他の自己抗体のDM患者とは異なり、抗MDA5抗体陽性の患者は急速進行性で時に致命的な間質性肺疾患を呈する。間質性肺疾患が疑われる筋炎の全ての患者は肺機能検査(DLCO、吸気・呼気圧)とHRCTで初期に評価されるべきである。間質性肺疾患のモニタリングは定期的な肺活量に基づき、肺の問題を起こす患者に限って検査されるべきである。
 
遺伝的な危険因子と環境因子への曝露がDMをトリガーするために必要。実際、class-2 HLA allelesのようないくつかの免疫遺伝学的な危険因子がDMの病因になっている可能性がある。紫外線への曝露もDM発症の危険因子として知られている35。しかし既知の遺伝学的危険因子を有する患者のほとんどが、高度の紫外線曝露をしてもDMを発症するわけではない。抗TIF1抗体陽性のDM患者に発生した腫瘍中のTIF1 geneshetero zygosityの多数のmutationや損失が報告されている36。この観察はTIF1遺伝子のmutationが自己免疫をトリガーしうる新しい抗原を産生しうることを示唆する。
 
原因がどうであれ一旦患者がDMを発症するとどういうメカニズムが筋障害と筋力低下を続けるのかについては不明。内皮細胞におけるmembrane attack complexの沈着を含むいくつかの証拠からは筋ダメージが内皮の破壊による低かん流によってもたらされることを示唆する。さらにインターフェロンの主な産生細胞であるplasmacytoid dendric cellsが筋束周囲に存在すること、およびtype-1interferon-inducible proteinsの発現が増加していることはインターフェロンが筋束周囲の萎縮をいくらか介在していることを示唆する。しかしながら、DMの筋障害においてこれらの蛋白に役割があるのかを明らかにするためにはさらなる研究が必要だ。
 
 
 
Immune-mediated necrotising myositis 免疫介在性壊死性筋炎
 
免疫介在性壊死性筋症近位筋の筋力低下、筋原性酵素の異常高値、筋原性のEMG所見、最小限のリンパ球浸潤を有し筋束周囲の萎縮を伴わない壊死・再生を示す筋組織で特徴づけられる独立したIMの型。IMNMの筋生検の典型像としてclass-1MHCupregulationを有し、M2-macrophageの浸潤、壊死していない筋線維におけるmembrane attack complexの沈着がある。筋外症状は稀でありもしあっても軽症。IMNMの約2/3SRP3-hydroxy 3-methylglutaryl coenzyme-A reductase (HMGCR)に対する自己抗体を有する。その一方で抗SRP or HMGCR抗体陽性の患者の約20%が筋生検でリンパ球浸潤を有する。しかし壊死組織を呈するもう一方の群と区別がつかない。近位筋の筋力低下、CK上昇と抗SRP抗体を有する患者は抗SRP抗体筋症と定義されるが、同様の所見と抗HMGCR抗体を有する患者は抗HMGCR抗体筋症と定義される。この分類によって自己抗体陽性のIMNMの患者を分類する上で特異的な筋組織は不要である。反対に壊死を示す生検結果は自己抗体陰性のIMNMを分類するためにはいまだ必要。抗SRP抗体筋症と抗HMGCR抗体筋症は同様の筋組織、CK高値、最小限の筋外所見のような多くの所見をシェアする。さらに両方とも若い患者はより侵襲的で難治性の筋症を呈するようだ。しかし2つのIMNMの違いも報告されている。まず最初に抗HMGCR抗体はスタチンの暴露歴と関連するが、抗SRP抗体筋症はそうでない。次に抗SRP抗体陽性の患者は抗HMGCR抗体の患者よりも重症の筋力低下を来たす傾向がある。3番目に実際のところ抗HMGCR抗体と抗SRP抗体を有する全ての患者がいくらかの壊死を示すが、抗SRP抗体の患者の方が壊死した筋線維の数がより多い。4番目に間質性肺炎お存在は両群ともまれではあるが、抗SRP抗体の患者に多い。5番目として抗HMGCR抗体筋症と自己抗体陰性IMNMの患者は悪性腫瘍のリスクがひょっとすると高いかもしれない(抗SRPとは異なり)。最後に抗HMGCR抗体筋症が心筋障害を伴うことは稀。しかし早期の抗SRP抗体のcross-sectional studiesはこれらの患者は心臓症状の頻度が高いことを提案した。心筋障害が疑われる患者では心電図、心エコーを行うべし。GD造影のMRIは活動性の心筋炎を評価しえ、一部の患者では心膜生検が診断を確認しうる。
IMNMにおける免疫遺伝学的危険因子に関して、class-2 HLA-allele DRB1*08:03が項SRP筋症に関連することを示唆した研究がある。さらにいくつかの症例対照研究はDRB1*11:01 が抗HMGCR筋症の免疫遺伝学的な危険因子であることを支持している。これらのallelleは抗HMGCR抗体の約70%に存在するが、一般人口では約15%のみである。さらにHMGCR酵素活性を阻害し、HMGCR産生を増加させるスタチンは抗HMGCR筋症の危険因子である。これらの観察からHMGCR産生の増加は抗HMGCR筋症発症の抑制閾値を壊すことに貢献していることが示唆されている。別なシナリオではDRB1*11:01が重要なHMGCRペプチドを提供することで一役買っているかもしれない。これらの抗HMGCR筋症のメカニズムの重要性を示すためにさらなる研究が必要である。

IMNMにおける筋線維壊死の根底にあるメカニズムはまだ分かっていない;しかしいくつかの手がかりが出てきた。たとえば非壊死線維の表面にmembrane attack complexが沈着することを考えると、抗SRP、抗HMGCR抗体は直接的に原因しているかもしれないことが提案されたきた。ある研究はこれらの自己抗体が筋委縮を誘発しえ、TNFIL6のようなreactiveoxygen species and cytokinesの濃度を上昇させて、IL4IL13の産生を減らすことで培養筋細胞における筋芽細胞の癒合を阻害しうることを示した。しかし抗SRP、抗HMGCR抗体は壊死を引き起こすわけではない。これら二つの自己抗体がvivoでも病気をもたらすことを示すためいんはさらなる研究が必要。

 
その②へつづく

 

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