リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ステロイド抵抗性の高安大動脈炎の治療①

Clinical Scenario
高安大動脈炎の19歳女性
 
PSL 50mg/日にて改善したが、半年後、PSL17.5mg/日を投与中、頸部の違和感が出現。
 
炎症反応は漸増し、CRP 2.7 mg/dLESR 43 mm/1h(症例は架空です)
 
 
< 疑問、発生!>
ステロイド抵抗性の高安大動脈炎に対して有効な治療法は?
  
Uptodate
Treatment of Takayasu arteritis – Glucocorticoid-resistent diseaseを読みます。
 
TAの約半数が慢性的に活動性を有し、ステロイド単独では持続的な寛解をもたらさない。MTXAZP、およびその他の薬剤を追加的に使うことはいくらかの価値があるかもしれない。
 
Methotrexate — MTXの使用は18例のOpen-label studyで評価された。そのうち16例は平均約3年フォローされた。毎週のMTX(平均維持料17.1mg)+ステロイド16例中13例(81%)に寛解をもたらした。ステロイドを減量し中止あるいは中止に近くするまでに7例(44%)が再発した。再治療は再度寛解をもたらし、7例中3例はステロイドを中止することができた。
寛解に至った患者のうち、8例(16例)が平均18ヶ月のフォロー時に寛解を維持した;このグループの4例は平均11ヶ月の間いずれの薬もいらなかった。治療にもかかわらず疾患が進行したのは3例。ステロイド抵抗性の患者において寛解の期間、MTXの維持療法の必要性を評価するためにはさらなる長期の研究が必要である。
 
Leflunomide — 従来のステロイド剤とその他の免疫抑制剤に抵抗性であったTAを有する15例のうち12例におけるOpen-label studyにおいてレフルノミドの有効性が観察された。平均9ヶ月のフォロー期間の後、疾患活動性スコア、急性期反応物質、ステロイド使用の有意な減少が見られた。2例は寛解に分類されているにもかかわらず、新たな血管病変を起こした。
 
Mycophenolate mofetil — TAの治療におけるステロイド減量のための薬剤としての安全性と有効性を支持するデータは限られている。21例のTAの患者が平均9.6ヶ月フォローされた観察研究において、20例が疾患活動性の改善を示した。患者の全てステロイドを併用していたが、フォロー中ステロイドの投与量は有意に減少した。
 
Tocilizumab — TCZで治療された少なくとも8例において利益があったと報告された。TCZGCAの大規模なケースにおいても利益が示されている。
 
Azathioprine — AZPステロイドのコンビネーションはインドの若い女15例の比較のないシリーズ報告で評価された。全例フォローの血管造影が行われ疾患の動脈造影の所見があった。AZP 2mg/kg日に加えPSL1mg/kg/日を6週間、ついで12週までに5-10mg/日まで減量した。この治療によって全例が12週間以内に寛解した。AZP1年間続けられたが、繰り返しの血管造影にて新たな動脈病変は見られず、過去の狭窄や動脈瘤の悪化は見られなかった。しかし、血管造影の所見に改善は見られなかった。この併用療法はよく耐用され、副作用は報告されていない。
 
Anti-TNF agents — 難治性のTAの患者におけるTNFα阻害薬の経験は限られている。比較のないシリーズにおいて、寛解を維持するために高用量のステロイドを要しその他の薬剤で治療中に再発した(あるいはステロイドの再治療を拒否した)15例がエタナセプトかインフリキシマブで治療された。前者は7例が初期量25mgを週2回で、後者は8例が初期量3-5mg/kg2週後、6週後の後に8週間隔で治療された。
高用量ステロイドと細胞毒性の薬剤を用いる患者にはST合剤の予防が行われた。改善は15例中14例に認められた。持続的な寛解ステロイドを中止できた10例で得られた。14例中9例が疾患のコントロールを維持するためDose escalationを要した。TAのための抗TNF療法についてより大規模なRCTが計画される。
 
Other medications — シクロフォスファミドはその他の多くのタイプの全身性血管炎にはよく使われるが、TAにおける経験は非常に限られている(略)
 
Recommendation — ステロイドに抵抗性のTAの患者にはAZPMMFMTXTCZまたはレフルノミドを試してみることを勧める。CYはそれらの薬剤で効かない時にとっておく。上述の薬剤のいずれかがその他と比べ明らかに良いことを示すデータはない。治療する医師は使い慣れた薬剤を4-6カ月用い、結果が満足いくものでなければ別な薬のスイッチするかもしれない。抗TNF阻害療法がシクロフォスファミドに変わる薬剤として用いられる可能性はあるが、IFXETNをこのセッティングに用いるには効果と安全性を評価するエビデンスがもっと必要である。
 
 
Uptodateの孫引き>
このなかで、高安に保険適応があるのはAZPのみです。TCZIFXETNは倫理委員会レベルのように感じます。AZPを用いる前からこれらを優先するほどのエビデンスはありません。
 
 
MTX
Treatment of glucocorticoid-resistant or relapsing Takayasu arteritis with methotrexate.
Hoffman GS, et al.
Arthritis Rheum. 1994 Apr;37(4):578-82.
 
OBJECTIVE:
ステロイド単独に抵抗性の持続性・再発性TAの治療におけるMTXの役割を明らかにすること
METHODS:
毎週の低用量MTXステロイド剤のOpen-label pilot studyを行った。評価したアウトカムは臨床的特徴、ラボデータ、ルーチンで行った血管造影検査の所見、ステロイドMTX療法を減量できるかどうか。18例が研究に登録された;2例が脱落し、16例が平均2.8(範囲1.3-4.8)フォローされた。.
RESULTS:
毎週のMTX投与、平均維持量17.1mgステロイドによる治療によって16例中13 (81%)寛解した。しかし、7(44%)ステロイド減量中、あるいは中止寸前に再発した。再治療によって寛解に至り、7例中3例はステロイドを中止することができた。寛解に至った患者のうち8 (全例の50%) 4-34ヶ月(平均 18ヶ月)の持続的寛解を呈し、そのうち4例はステロイドMTX7-18ヶ月間(平均11.3ヶ月)要していない。3例は治療にもかかわらず進行を示した。
CONCLUSION:
TA患者の約半数はステロイド単独に抵抗性で慢性活動性を呈し、持続的寛解に至らないため、治療の減量ができない。毎週の低用量MTX寛解導入療法として有効であり、ほとんどの患者においてステロイド治療とその毒性を最小限にする上でも有効。難治性TAにおける寛解の持続期間とMTX維持療法の必要性を評価するためにはさらなる長期の試験が必要であろう。
 
AZP
Role of immunosuppressive therapy on clinical, immunological, and angiographic outcome in active Takayasu's arteritis.
J Rheumatol. 2003 Aug;30(8):1793-8.
 
OBJECTIVE:
活動性TAの患者における臨床的、免疫学的、血管造影的なアウトカムにおいてAZPPSLの免疫抑制療法の役割を評価すること。
METHODS:
19961月から20011月の間過去にいかなる免疫抑制療法も受けていない連続した新規TA患者65例のうち、15例が疾患活動性の基準を満たした。これらの患者において詳細な臨床的、ラボ的な評価を行った。AZPPSLの併用療法を1年間行った。全例で大動脈造影を治療が終了する前後で行った。
RESULTS:
治療開始3ヶ月以内に全身症状と疾患活動性のラボデータの改善が得られた。ESR3ヶ月以内で平均55.5 +/- 14.7 mm/hから21.9 +/- 9.5 mm/hに減少し (p < 0.001)1年後にはさらに20.8 +/- 15.2まで減少した(p = NS)CRP4.8 +/- 5.2 mg/dlから3ヶ月後0.5 +/- 0.2 mg/dl (p = 0.004) 1年後0.5 +/- 0.3 mg/dl (p = NS)。末梢の脈拍や四肢の血圧に変化はなかった。繰り返し行った血管造影ではベースラインと比べ有意な変化はなかった。新たな病変が出現した患者はいなかった。免疫抑制療法は目立った副作用なく、よく耐用できた。
CONCLUSION:
AZPPSLの免疫抑制療法は安全でよく耐用された。TAの疾患活動性の全身症状、ラボデータを改善させる上で有効であった。血管造影における病変の進行を少なくとも1年間は止めるが、動脈の狭窄を改善させるには見えなかった。
 
MMF
Mycophenolate mofetil in Takayasu's arteritis.
Clin Rheumatol. 2010 Mar;29(3):329-32.
 
MMFは自己免疫疾患において有用な選択肢となることが最近報告されている。TAに使用したという文献はほとんどない。
・この研究の目的はインド人のTAにおけるMMFの安全性と有効性を評価すること。
20051月から20088月の間、私たちのセンターにおいて経口MMFで治療した連続したTA21例の診療録を研究した。
・臨床所見、ラボ、血管造影所見を記録し、ベースラインと最終受診時において疾患活動性の評価をインドのTA疾患活動性スコア(ITAS)と医師の全体観察スコアを用いて行った。
MMF開始前、11例はベースラインでステロイド単独で治療され、10例がAZPを投与されていた。MMFで治療された平均フォロー期間は9.6 (+/-6.4)ヶ月。
19 (90%) は疾患活動性のためMMFを投与され、2例はステロイドを減量するために投与された。
1例において皮疹のためMMFが中止されていた。
・最終受診時にMMFを継続されていた残りの20例全例がITASの中央値の顕著な低下を示し疾患活動性が改善した;7 (範囲0-19) vs 1 (範囲 0-7)p=0.001)。
・同様の傾向がラボの炎症マーカーでも見られ、ESR (68+/-36.5 vs 43.2+/-34 mm/1h; p=0.003)CRP(3.1+/-4.67 vs 1.73+/-2.39 mg/dL; p=1.00)が低下した。
・全ての患者がステロイドを併用したが、ベースラインの36 (+/-16) mg/日から最終受診時の19 (+/-14) mg/日に低下した(p<0.001)。この研究はTAにおいてMMFステロイドスペアリングのための安全で有効な免疫抑制剤であることを確立する最も大きなシリーズである。
 
LEF
Short-term effect of leflunomide in patients with Takayasu arteritis: an observational study.
Scand J Rheumatol. 2012 May;41(3):227-30.
 
OBJECTIVES:
従来の治療に抵抗性あるいは耐用できないTA患者の疾患活動性をコントロールする上においてLEFの有効性を評価すること。
METHODS:
私たちは臨床評価、血沈・CRPMRAを基づく活動性のTA患者15例(平均年齢36.2歳)を対象に前向きOpen-label studyを行った。患者はLEF 20mg/日を6ヶ月内服し、平均9.1ヶ月フォローされた。LEFによる副作用を記録した。
RESULTS:
・ベースライン時、14例がステロイド免疫抑制剤の治療にもかかわらず活動性疾患を有した。1例は治療に耐用できなかった。
・フォローのための受診時に活動性TAを有する患者の割合が有意に減少した(93% vs. 20%, p = 0.002)。一日の平均PSN(34.2 vs. 13.9 mg, p<0.001)、平均ESR (29.0 vs. 27.0 mm/h, p = 0.012)、平均CRP (1.03 vs. 0.53 mg/dL, p = 0.012)
2(13.3%) がフォローのMRAにて新規の血管病変を呈した。3 (20%) は研究中軽度の副作用を経験したが、中止に至ったケースはなかった。
CONCLUSIONS:
・この研究はステロイド免疫抑制剤による従来の治療に抵抗性または耐用できないTA患者においてLEF 20mg/日を用いて疾患活動性と急性期反応物質の改善を証明した最初のOpen-label studyである。
LEFは安全でステロイドスペアリング効果が見られた。これを確かめるためには二重盲検RCTが理想的である。
 
 
< まとめ >
対象(新規か治療抵抗性か)と治療期間(1年と2年では大違い)、効果;ESRCRP(これは基本)、血管病変の出現・進行、副作用・脱落についてまとめます。
 
MTXステロイド耐性TA18例に平均2.8年用いられ、脱落2例、寛解13例(Drug free 4例)、進行3
 
・活動性のある新規TA15例(新規65例のうち疾患活動性基準を満たした者)にAZPPSL1年間用いてESRは平均55.520.8CRP4.80.5。血管は不変。目立った副作用なし。
 
・治療抵抗性TA21例(19例が活動性、2例がsteroid-sparing)がMMFで平均9.6ヶ月治療され、1例が副作用中止、残り20例が改善。ただし、ESR6843.2CRP 3.11.73ステロイド36 mg/日→19 mg/日。血管は不明。
 
TA15例(治療抵抗性14例、不耐用1例)をLEFで平均9.1ヶ月治療し、平均でPSN 34.213.9 mgESR 2927CRP 1.030.532例が新規血管病変。
 
  
<リウマトロジストのコメント>
この度のセッティングである、治療抵抗性を対象としている研究はMTXMMFLEFですが、AZPは保険適応があるので読むべきでしょう。
 
 
4剤の有効性を比較することはできませんが、MTXはもっとも長期の成績であり、寛解が8割。AZP1年で進行ゼロ、治療後、ESR 20CRP 0.5
 
 
MMFで治療された21例では治療後ESR 43, CRP 1.73と高めですLEFの対象はESR29, CRP1.03と活動性が低そうです。
 
 
MTXとAZPの論文を読んでみることにしました。

その②(MTX、メトトレキサート)
その③(AZP、アザチオプリン)

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/13430816

  

 

 ps;↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

以下でEGPAのreviewを執筆をさせていただきました!