リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

PM/DMの治療① (初期治療)

Mayo clinicのリウマチ科+小児リウマチ科より特発性炎症性筋症のレビューが出ております。
 
Recommendationとありますが、コンセンサスが得られたものではなさそうです。
 
ですが、一流の施設の治療方針を勉強するにはよい機会です!
 
 
Idiopathic inflammatory myopathies: currenttrends in pathogenesis, clinical features, and up-to-date treatment recommendations.
Ernste FC, Reed AM.
Mayo Clin Proc. 2013 Jan;88(1):83-105.
 
(Free downloadできます)
 
TREATMENT GUIDELINES
治療の主なゴールは炎症を排除し筋のパフォーマンスを保持し、慢性の筋力低下とその他の臓器のダメージを防ぐこと、および合併症を減らしQOLを取り戻すこと。新たに診断された特発性炎症性筋症(Idiopathicinflammatory myopathiesIIM)はリウマチ科医、神経内科医、皮膚科医、呼吸器科医、理学療法士言語療法士作業療法士、整形外科医を含む専門医とともに多方面からのアプローチを要する。
 
Initial Treatment Approach to AdultPatients With IIM
成人のIIMの診断に対し私たちは高用量のステロイド剤とステロイド節約のための薬剤(Figure 1)を用いる。
 
ステロイドを使用する合理性は筋の炎症が改善する事を記述した早期の試験に基づく。Lumbergらはプレドニゾロンで3-6ヶ月治療した成人において筋力の改善とともにIL-1a, IL-1bを含むclass I MHC抗原の発現と接着分子を減少することを発見した[105]0.5 – 1 mg/kg/dのプレドニゾン、典型的には60-80mg/dの単回投与で治療を開始し、患者の反応に応じて2-4週間で漸減する。30mg/dまでは10mg/2wkで減量する。その後は20mg/dまで5mg/2wkで漸減する。一旦20mg/dまで減量できればその後の漸減は2.5mg/2wkに速度を落とし漸減が完了するまで減量する。
 
ステロイドと同時にステロイド節約効果のある免疫抑制剤を開始する。典型的にはこれらの薬剤は緩徐に効果しフルに効果を発揮するまで3-6ヶ月もかかるかもしれない。通常はMTXAZPMMF (Figure 1)
 
これらの薬剤のいずれかがその他のいずれかに対して優越性が高いことを示した試験はない。Bunch106は二重盲検比較試験においてAZP 2mg/kg3ヶ月間治療を行った患者が筋力に改善を認めたが、コントロール群と比較して有意差はなかった。長期フォローした試験によってプレドニゾンとAZPで治療された患者において3年後の身体機能の改善を証明した[107] 。もしAZPを使うとき私たちは酵素欠乏をスクリーニングするため患者のthiopurine methyltransferaseの値をチェックする。thiopurinemethyltransferase欠乏の患者では標準的な投与量で治療すると骨髄抑制が起こりうる。AZPの目標投与量は理想体重あたり2mg/kgを分割とすべきである。
 
イメージ 1
 
 

 

 
典型的には私たちは25-50mg/dより開始し、目標の投与量に到達するまで25-50mg/wkで増量する。コモンな副作用は吐き気、軟便;よりコモンでないものとして発熱、肝障害がある。
 
MTX1970年代よりIIMの治療に用いられてきた。MetzgerらはDMまたはPMの患者をMTX静注で治療し22例中17例においてCK正常化と筋力の改善を認めた[108]MTXを使う場合、私たちは初期量15mg経口、週1回で開始し、MTX葉酸代謝の拮抗薬であるため葉酸の補充1mg/dを併用する。私たちはMTXに耐用できなくなる可能性と副作用の可能性を避けるため低用量で開始する。MTXの目標の投与量25mg/wk3-6ヶ月以内にすることを目標にしている。AZPと同様、トランスアミナーゼの上昇、消化管の副作用がコモン。MTXの肝障害を防ぐため患者には過度のアルコール摂取を控えるよう助言する。MTXを開始する前に既存の肝疾患をスクリーニングするため、ベースラインの肝機能、HBVHCVの抗体の測定を行うべきだ。肺疾患のスクリーニングも必要;MTX肺炎は稀な副作用であるが膠原病に関連する間質性肺疾患ILDと区別できないかもしれない。しかし、ILDの存在はMTXの絶対的な禁忌ではない。有痛性の胃炎が禁煙の成人には起こりうる。より高用量の葉酸、ロイコボリンをMTX毒性のレスキュー療法として用いてもよい。出産の可能性がある女性はMTXを投与中は催奇形性があるため信頼性の高い避妊の方法をとるよう助言すべきだ。治療の耐用性を確かめるための検査を行う。MTXAZP開始後、2-4週間以内にCBC、肝機能検査、クレアチニンの測定を3ヶ月の間は毎月行うべきだ。一旦維持量が達成されれば検査のフォローは2-3ヶ月に1回が適切[109]
 
MMFIIMの有効な治療薬として台頭してきた。de novo purine合成とT細胞・B細胞増殖に影響するinosine monophosphatedehydrogenaseの阻害薬である。いくつかの後ろ向きのケースシリーズが重症DM/PMの治療においてその有効性を示している。
 
Gelberらは重症の皮疹を有するDM患者4例においてMMFが有効であったことを報告した[110]Edgeらは重症の皮疹を有する筋炎患者12例のうち10例においてMMF治療4-8週間で効果があったことを見出した[111]。抗シンテターゼ症候群のような肺病変を有するIIMの患者はMMFに良好に反応するかもしれない。小さいシリーズではあるが、MorganrothらはILDを有するDM患者16例中4例について調査し、4例のうち3例において肺機能が1年後に完全に正常化したことを見つけた[112]。しかし、ILDIIMの成人患者の20%までに合併するが、大規模な比較試験は今日までに行われていない。IIMの成人患者に対し私たちはMMF500mg12回より開始し、耐用性をみながら毎週、時には2週間おきに500mgずつ、目標の投与量2g/d1g2回)まで増量する。耐用できれば、稀に3g/d1500mg12回)に増量するかもしれない。MMFが治療域に入っているか確認するためMMFのレベル(glucuronide)がをモニターする医師もいる。吐気と軟便のため高用量ではコンプライアンスが問題になるかもしれない。白血球減少やトランスアミナーゼの上昇をモニターするためラボは基本。MMFも催奇形性があるため出産の可能性がある女性は二つの避妊法を助言されるべきである。
 
嚥下困難、体重減少、重症の皮疹や重症の筋力低下のあるIIMの成人患者に対しては私たちは免疫グロブリン静注IVIGを理想体重あたり1-2g/kgで用いる。通常1-6ヶ月目には1g/kg2日続けて月に1回行う。血清IgAの値をIVIGを投与する前にチェックすべし。IgA欠乏は発熱や注射時反応and/or重症のアナフィラキシーの原因になるかもしれないからだ。これらは注射されたIgAと抗IgA抗体との間で高分子複合体が形成されることに起因するものと信じられている[113]。もしIgA欠乏が分かれば患者はIgAの少ないIVIGを投与すべきだ。もし、IVIG80gよりも高用量になれば、私たちは時々3-5日間かけて0.4g/kgを投与する。IVIGを用いることの合理性は3ヶ月毎にIVIGをクロスオーバーにて投与されたDM患者15例のプラセボコントロール試験に基づく。12例において筋力、皮疹、ADLの改善を認めた。IVIG治療を受けた5例は繰り返し筋生検を受けた。その結果、筋繊維の直径、毛細血管に沈着する補体の消失、MHCclass I抗原の減少を示した[114]。いくつかのメカニズムがその効果を説明しうる:Fcレセプターの阻害、補体活性化の抑制、感作T細胞による抗原再認識に影響すること、Fcレセプターを介した活動性の調節。これらは貪食作用のダウンレギュレーションに至る[113,115]。しかし、筋生検の組織で観察されたIVIGの筋の炎症に対する良好な効果は、治療抵抗性のDMJDMPM、封入体13例を含んだ後の試験では繰り返されなかった[116]