リウマチ膠原病のQ&A

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ステロイド抵抗性の高安大動脈炎の治療②-メトトレキサート-

ステロイド抵抗性の高安動脈炎の19歳女性の治療について勉強しています。

 

※必要に応じて↓飛んでくださいませね
その①
 
その③(AZP、アザチオプリン)

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/13430816

 
この度は保険適応はなくても候補となりうるMTXについて勉強します。
 
Treatment of glucocorticoid-resistant or relapsing Takayasu arteritis with methotrexate.
Hoffman GS, et al.
Arthritis Rheum. 1994 Apr;37(4):578-82.
 
OBJECTIVE:
ステロイド単独に抵抗性の持続性・再発性TAの治療におけるMTXの役割を明らかにすること
METHODS:
毎週の低用量MTXステロイド剤のOpen-label pilot studyを行った。評価したアウトカムは臨床的特徴、ラボデータ、ルーチンで行った血管造影検査の所見、ステロイドMTX療法を減量できるかどうか。18例が研究に登録された;2例が脱落し、16例が平均2.8(範囲1.3-4.8)フォローされた。.
RESULTS:
毎週のMTX投与、平均維持量17.1mgステロイドによる治療によって16例中13 (81%)寛解した。しかし、7(44%)ステロイド減量中、あるいは中止寸前に再発した。再治療によって寛解に至り、7例中3例はステロイドを中止することができた。寛解に至った患者のうち8 (全例の50%) 4-34ヶ月(平均 18ヶ月)の持続的寛解を呈し、そのうち4例はステロイドMTX7-18ヶ月間(平均11.3ヶ月)要していない。3例は治療にもかかわらず進行を示した。
CONCLUSION:
TA患者の約半数はステロイド単独に抵抗性で慢性活動性を呈し、持続的寛解に至らないため、治療の減量ができない。毎週の低用量MTX寛解導入療法として有効であり、ほとんどの患者においてステロイド治療とその毒性を最小限にする上でも有効。難治性TAにおける寛解の持続期間とMTX維持療法の必要性を評価するためにはさらなる長期の試験が必要であろう。
 
Patients and methods
Patient population/entry requirements.
18例のTAの患者がMTXの治療開始の基準を満たした。基準とは以下;1)大動脈and/orその枝における多巣性の血管造影の病変(狭窄、拡張、動脈瘤など)、2)ステロイド連日(1mg/kg日>1ヶ月)にて疾患の改善がないこと、あるいは5ヶ月以内に隔日投与に減量できないこと、1年後もステロイドを中止できないこと、3)ステロイド療法の漸減後にTAが再燃すること。
・全ての患者においてベースライン、6ヶ月、12ヶ月の時点、その後は毎年、血管造影が得られた。臨床的な適応があれば追加された。活動性または再発性の疾患とは新たな血管造影の異常があれば考えられた。とくに以前には問題なかった場所に起きた場合。また、活動性の疾患とは以下の2項目があってもあると考えられた。1)新たな頸動脈圧痛の発生または大血管に沿った疼痛、2)その他の要素に起因しない一過性の虚血性エピソード、3)新たな血管雑音、脈の左右差、血圧の左右差、4)感染症によらない発熱、5)再現性のあるESR上昇。これらのガイドラインを基に活動性の再発の家庭的な診断が主要な調査者(GSH)によってなされた;これはプロトコールを適応される時には血管造影にて再評価を受けた。新たな血管造影の変化は再発の確定的な証拠とみなされた。血管造影の進行がない場合、上記5項目のうち2項目以上があればProbable relapseの所見と判定された。
・除外基準には以下を含む。急性・慢性肝障害、急性の肺疾患、アルコール乱用、IDDMに関連した病的肥満(理想体重を>33%超える)、妊娠、看護を受けている、または妊娠の可能性がある場合Birth controlができないこと。軽度のアルコール使用は除外基準ではなかったが、アルコール飲料の消費をしないよう言われた。コンプライアンスが守れないという歴があれば登録されなかった。
 
Treatment
・経口MTXステロイドのレジメンに0.3mg/kg/週まで(2.5mgずつの増量に最も近い量)で追加された。初期量は15mg/週を超えないこととした。全ての患者は週1回の投与方法とされた。これが耐用できなければ薬剤は2-3回に分けて12時間開けて投与された。投与量は1-2週間毎に2.5mgずつ増量し、25mg/週までか耐用できる最大の量まで増量された。MTX開始から6ヶ月以内に活動性の症状・所見が改善し、ステロイド療法が最初の半分未満に減量出来ていれば、MTX療法は少なくともさらに6ヶ月間は継続された。
・治療の成功とは患者が活動性の疾患の症状を有さず、ステロイドを中止できているかどうか、そして繰り返しの血管造影で大血管炎の新たな所見があるかどうかによって判定された。活動性の血管炎があれば、患者は研究うから脱落し、MTXの治療は失敗と考えられた。もし活動性血管炎の所見がなければ、MTXの投与量は漸減され、最終的には寛解から1年以上たって中止された。繰り返しの血管造影は疾患の進行がないことを証明するために行われた。もしMTX中止後に客観的な再発の所見が出現すれば、MTXステロイドの治療が既述の投与法で再開された。
・以下の毒性に関するガイドラインMTXの投与量の変更のために適応された。正常であった血小板数が<12万、<10万、<8万になれば、MTXの投与量は各々25%50%100%減量する。正常なWBCが<4000、<3000に減少すれば、MTXの投与量は50%100%減量する。肝機能障害が正常上限の2倍、3倍になれば各々50%100%減量する。MTX以外の原因がない軽度の皮疹があれば50%減量し、軽度の粘膜潰瘍(1回に2-3ヶ)、または吐き気and/or嘔吐があれば耐用できる量に減量するか、12時間おきの分割投与にするか、筋注とした。重症(全身性)の皮疹や全身の粘膜潰瘍になれば中止。MTXの中止を要した時、後に耐用できる最大の投与量で再開してもよいこととした。
 
 
Guideline for GC therapy
ステロイド療法中に疾患の再燃のためにこの研究に登録された時、プレドニゾンの投与量はMTXの開始と同時に1mg/kg/日に増量された。
・患者がESR正常を含む寛解に入ったのであれば、PSNの投与量は隔日レジメンにて4日毎に5mgずつ減量された。隔日の低い方の投与量が20mgに到達した時、それ以降の減量は4日毎に2.5mgずつとした。隔日投与のPSNのスケジュールに到達した時(例、60mg隔日)、さらに減量してステロイドの中止を目指した。
・活動性の症状が再発すれば、過去に有効であったPSNの投与量にて再開された。
・もし12ヶ月以内にステロイドが完全に減量され中止されなければ、患者は別な治療方法を提案された。患者は彼らにとって容認できないいかなるタイプの毒性が出現すればこの研究から脱落できるものとし、これ以上参加しないという選択をするという任意の理由によって脱落できた。
 
Results
・試験開始時、18例(女性15例、男性3例)の平均年齢は30歳(13-56歳)で平均罹患期間は11-44年。登録時15例はその時に内服しているステロイド量において疾患の再燃なくさらに減量することができなかった。
3例はステロイドを中止し、再発性の疾患であった。各々5年、6年、11年後に再燃した形であった。
6例においてTAは過去のCY4例)、AZP2例)のtrialにて寛解導入されなかった。
 
 

Table 1. エントリー時におけるTA18例の臨床所見


新たな血管造影異常 10
最近のESR上昇(55-82mm/h)* 15
四肢の間欠性跛行 8
関節痛・筋痛 6
発熱 5
頸動脈圧痛 3
頭痛(新規または明らかな悪化) 3
寝汗 2
一過性の虚血性エピソード 1
結節性紅斑 1
腎血管性高血圧症の悪化 1
 
 

3例は臨床的、血管造影上は活動性疾患であったがESRは正常。ESR正常は疾患の改善悪化を通し持続した。

 
 
 
18例の臨床所見はTable 1。疾患の慢性度と前治療の効果に制限があったことは動脈造影の所見に反映されていた。もっとも良くある例には鎖骨下動脈狭窄・閉塞(16例)、総頸動脈狭窄・閉塞(10例)、大動脈狭窄(8例)、動脈瘤形成(4例)、腹腔動脈狭窄・閉塞(8例)、腎動脈狭窄・閉塞(9例)。10例が過去に1回バイパス術を受けており、4例は少なくとも1回の血管形成術を受けていた。
・18例中16例はフォロー時の評価のガイドラインを全て満たした。1例は1ヶ月後にニューモシスティス肺炎を起こしたため試験から脱落した。その時、PSN 60mg/日、MTX 20mg/週を投与中であった。もう一例は15ヶ月後に個人的な理由で脱落した。
・残り16例における平均フォロー期間は2.8年(1.3-4.8年)。全例の安定したMTXの平均投与量は17.1mg/週(10-25mg)。
 
 
Table 2 MTXステロイド剤による持続的TA16例の治療成績

 
 
Outcome No. of pts  
Remission 13/16 (81%)
Relapse following remission 7/13 (54%)
Sustained remission 8/16 (50%)
(mean=18 mo; time w/o GC=14.4 mo)    
Remission in absence of both GC+MTX 4/16 (25%)
(mean=11.3 mo)    
Progressive disease 3/16 (19%)

 
 
 
MTX+ステロイド療法によって16例中13例(81%)で寛解が得られた(活動性の臨床所見全ての消失と新たな血管造影の所見がないこと)。
寛解に至った7例がステロイド減量が中止直前の時点で、あるいは中止された時点で再発をした。再発例はGC+MTXで再治療を受け、7例中3例において1ヶ月、25ヶ月、28ヶ月でGCを完全に中止できた。
8例(50%)が寛解を達成し、4-34ヶ月(平均18ヶ月)持続し、GC2-28ヶ月(平均14.4ヶ月)要さなかった。4例においてMTXも漸減され中止された;これらの患者はMTX7-18ヶ月(平均11.3ヶ月)内服していない(Table 2)。
MTX治療前にステロイドなしで疾患が寛解することは16例中3例のみであった。
 
3例が臨床的に進行の証拠(3例)があり、and/or血管造影における治療失敗の証拠があった(3例中2例)。
・そのうち1例の経過は再発性の大動脈腸骨・鼠径のバイパス術を伴った。そして、左下肢の切断に至った。
 
MTXの最も有害な効果は吐き気と倦怠感であり、4例において投与量の減量の原因になった。5例において正常上限の2倍より高い肝機能異常のため減量が必要であった。
・一例はMTX>10mg/週を投与すると再発性の口腔潰瘍を来たした。
1例においてニューモシスティス肺炎による重症呼吸不全のため人工呼吸器に依存するに至った。このケースは後に改善した。彼は最初の1ヶ月でPSL 60mgMTX 20mg/週を投与中であった。
 
 
<リウマトロジストのコメント>
ステロイド抵抗性のTAを対象MTXPSNの併用療法を行った観察研究の結果です。
 
対象は18例ですが、PCP、個人的理由による中止の2例を除けば(MTXを継続投与した16例のうち)
 
寛解導入が80%、持続的寛解50%Drug free remission25%
 
になります。
 

ps;その③(AZP、アザチオプリン)

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/13430816

 

 

 ps;↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

以下でEGPAのreviewを執筆をさせていただきました!