リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Window of opportunity by Nagy, 2015 ①

Arthritis Res Ther. 2015 Aug 3;17:181.
Sustained biologic-free and drug-freeremission in rheumatoid arthritis, where are we now?
Nagy G, van Vollenhoven RF.
 
Abstract
新しい薬の開発とRAの新しい治療ストラテジーはほとんどの患者で寛解達成を可能なものにした。
さらに最近の臨床試験、登録研究によると最初に積極的な治療を行った患者はBiologic-freeremissionrecoveryに近いDrug-free remissionを達成するかもしれないことを示唆する。私たちはこの問題に焦点を当てた、最も重要ないくつかの試験のレビューを示す。全体的な結果に基づいてBiologic-free remission (BFR)drug-free remission(DFR)が疾患の自然歴によるものか、’window of opportunity’の仮説を支持する早期の治療介入によるものなのかは分からなかった。DFRはごく一部の患者で達成できたにすぎなかったが、この患者のコホートを特徴付けることができれば予後良好因子と根底にあるメカニズムに関する重要な情報が得られるかもしれない。すなわち、ある一部の患者ではBFR、あるいはDFRでさえも達成可能である;実臨床でこれらの可能性を追求することは長期的な副作用のリスクを減らし、疾患に関わる経済的負担を減らすかもしれない。
 
Background
RAの早期治療は一般により良いアウトカムをもたらす;そのため現在の治療戦略は診断が着いたらできるだけ速やかに積極的な治療を開始するというものだ。そして疾患活動性に応じ臨床的寛解を目指して治療を伸展させる。この目的を達成するため私たちは現在多くの合成および生物学的DMARD (sDMARD and bDMARD)を用いることができる。適切な生物学的製剤の使用とタイトコントロールによって臨床的アウトカムを顕著に改善することが達成できる。寛解も多くの患者で可能であるbDMARDsによる生涯の治療は大変高価で長期的な副作用の可能性をもたらす。EULARrecommendationに基づき、患者が寛解であればbDMARD、あるいはsDMARDでさえも減量できるかもしれない。本稿で私たちはRAにおけるBiologic-/drug-free remissionの現在の理解をサマライズする。
逆説的ではあるが、私たちは理想的な治療開始について多くを知っているが、理想的な治療終了についてはあまり知らない。持続的寛解20-40%で達成され、一般に治療の継続を要する。しかし、bDMARDs and/orsDMARDsはこの患者群の一部で減量できるかもしれない。わずかではない少数のRA患者はDFRのチャンスを有するかもしれない。DFRは疾患の自然歴であるかもしれないが、治療による結果かもしれない;鍵となる疑問は現在の入手可能な治療はこのチャンスを変えられるかもしれないかどうかだ。
PTPN22HLA-DRB1のような遺伝的な危険因子に加え、環境因子もRAの病因の中心的な役割を有する。喫煙はもっとも確立された環境的リスクだ。中等度のアルコール消費はprotectiveに働くようだ。RA発症前のACPAsRFの産生は証明されており、これらは自己免疫の開始に関連し、自己の構造に対する免疫寛容の喪失に関連する。遺伝的・環境的要素は未知のトリガー(感染など)とともにRAの発症に直接的に導く。Regulatory T helper cellは末梢の寛容寛容の喪失において役割があるようだ。これらの細胞の機能障害は免疫寛容の喪失に寄与するかもしれない。
獲得免疫・自然免疫系とも活性化することが特徴的である;破骨細胞の分化と活性化の加速によって、骨びらんは発症後最初の数ヶ月で出現し、通常持続的な炎症に関連する。RAは脳血管疾患、心不全心筋梗塞のような心血管疾患のリスクが上昇しており、一般人口と比べ短命である。
炎症滑膜の多くの細胞集団から産生されたサイトカインがRAの病因において中心的な役割を有する。さらに、proinflammatory cytokineの複雑なネットワークと無数のポジティブ・フィードバックが慢性炎症を長続きさせるといういくつかのエビデンスがある。Biologicalsはサイトカインのネットワークをしっかりと作り直し、有意な臨床的改善をもたらす。IL-1,IL-6, IL-17, IL-18, IL-33, TNFRAで過剰に発現されている。TNFIL6の阻害は有効な治療オプションであるが、IL1阻害はやや弱い。入手可能なデータによるとIL17阻害薬のセクキヌマブも中等度の効果であるようだ。サイトカイン阻害に基づく臨床的な利益が多様である理由はひょっとするとサイトカインによる炎症は個々のRA患者において違うのかもしれないといことだ。

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Remission induction and taperingbiologicals
寛解導入とBiologicalの減量
window of opportunityの概念に応じて疾患の早期に積極的に治療することは素晴らしい改善と持続する利益をもたらすかもしれない。window of opportunityにおける寛解導入はその後の中間の期間において治療を減量することを可能にすることが期待される。このコンセプトは最初の3ヶ月間の治療反応性がその後の寛解を達成する確率を予測することで支持される。早期介入の有効性を説明する可能性として、この時期には自己免疫が完全には確立されていないかもしれないということだ。いくつかの研究はBiologicalsを減量することを調査した。
 

QuinneらはBilogicalを中止後も改善が持続することを最初に報告した。早期RA(症状が12ヶ月未満、65%RF+)はMTXで治療され、IFXまたはPBO12ヶ月間治療された。患者はさらに12ヶ月間フォローされた。この二重盲検試験Prmary endopointMRIで評価される滑膜炎であった。12ヶ月後ACR50, 70MTX+IFXMTX+PBOと比べ良かった(P < 0.05 and P < 0.05, respectively)。新たな骨びらんは見つからなかった。MRIスコアは有意に良かった。さらに顕著なのはIFX中止1年後に70%の患者が持続する素晴らしい臨床的改善を維持し、QOL、機能の利益が依然として明らかであったことだ。それ故にこの結果はwindow ofopportunityの仮説を支持した。
 
BeSt試験はRAにおいてTreat-to-targetアプローチが臨床的、レントゲン的な利益をもたらすことを明らかにした。この試験で患者は4つの寛解導入治療グループに割り付けられた。
Group 1, sequential monotherapy (n = 126);
Group 2, step up combination therapy (n =121);
Group 3, initial combination withprednisone (n = 133);
Group 4, initial combination with MTX andinfliximab  (n = 128)
RA罹患期間は最大で2年。DAS3ヶ月毎に測定し、実際の疾患活動性に基づいて治療内容を調整した。全ての治療アームのゴールは可能な限り速やかに効果的に疾患活動性を減らすことであった。DAS44 ≤ 2.4が良好な臨床的反応と定義され、DAS44 >2.4であれば次のステップが適用された。もしDAS44が少なくとも半年間≤2.4であれば単剤治療に減量された。Group 1MTX 15 mg/wkで開始され、効果不十分例には25mg/wkに増量された。それから次の治療薬に変更された:sulphasalazine (SSA); leflunomide (LEF); MTX+IFX (3 mg/kgより段階的に増量し10 mg/kgまで); gold; MTX+ CSA+PSN; AZA+PSN.
Group 2ではMTXに効果不十分の患者は以下の治療を受けた: MTX+SSA; MTX+SSA+HCQ;MTX+SSA+HCQ+PSN; MTX+IFX ( Group 1と同様);  MTX+CSAPSN; gold; AZAPSN.
Group 3では治療の順番は;MTX+SSA+PSN; MTX+CSA+PSN; MTX+IFX(Group 1と同様); LEF; gold; AZA+PSN
Group 4における治療の順番: MTX+IFX(MTX15 to 25 mg/wk)に増量し、ついでIFX量をGroup1と同様に増量; SSA; LEF; MTX+CSAPSN; gold; AZA+PSN
Group 4では43 %寛解(DAS44 < 1.6)に至り、56%IFXの治療を最初の2年間に完遂した。4グループのpost hoc解析では45 %の患者がBiologicalを中止することが出来た。これらの患者の52%はフォロー期間の中央値7.2年の間IFXを再投与することはなかった [20]. Shared epitope (SE)陽性, 喫煙、長期のIFX投与がIFX再投与に関連した;すなわちTNF阻害薬阻害薬なしで寛解を維持出来なかった。これとは逆にSE陰性、非喫煙者、より短期の抗TNF阻害療法は持続するBFRの予測因子であった。