TNF阻害薬はリンパ腫の発生に関係するのでしょうか。
GLMについて興味深いデータがでました。
GLM 100mgで1000人中1.8人のリンパ腫が発生したというものですが、プラセボ→GLM 50mg→GLM 100mgと用量依存性に増えているようです。
しかし、有意差はつきませんでした。
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Golimumab 3-year safety update: an analysis of pooled data from the long-term extensions of randomised, double-blind, placebo-controlled trials conducted in patients with rheumatoid arthritis, psoriatic arthritis or ankylosing spondylitis.
AnnRheum Dis. 2015 Mar;74(3):538-46.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24344160
Abstract
OBJECTIVE:
関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎の試験における3年までのゴリムマブの安全性に関してプールされたデータを評価すること
METHODS:
・従来の治療に反応しない活動性の関節リウマチ患者(MTX-naïve, methotrexate-experienced and anti-TNF-experienced)、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎にゴリムマブ50mgと100mgが4週間毎の皮下注射で投与された。
・プラセボコントロールはwk24(MTX-naïveではwk 52)まで続けられ、wk16の早期離脱(*)(MTX-naïveではwk 28)を認められた;ついで全ての患者にゴリムマブ50mgと100mgを4週間毎に投与された。
・盲検化比較の時期の後、ゴリムマブの投与量は調査者の判断で調整されてよいものとした。
・安全性についてプールされたデータの解析にはプラセボ比較のものとそうでないものをwk160まで含んだ。
・稀なイベントのために100人年あたりの発生率を決定するために第2b相の試験のRA患者を含んだ。
RESULTS:
・ゴリムマブの第3相の5試験を通し、639例がプラセボの投与を受け、2226例(50mg1249例、100mg1501例)がゴリムマブの投与をwk160まで受けた(反応がなければ早期離脱が認められたため、患者は複数のグループに含まれたかもしれない);1179例が156 週以上治療された。
・プラセボ、ゴリムマブ50mg、ゴリムマブ100mgにおいて160wkまでに相当する100人年あたりの各々の副作用は以下の通り。
placebo | 50mg GLM | 100mg GLM | |
死亡 | 0.28 | 0.30 | 0.41 |
重症感染症 | 5.31 | 3.03 | 5.09 |
結核症 | 0.00 | 0.17 | 0.35 |
日和見感染症 | 0.00 | 0.13 | 0.24 |
脱髄疾患 | 0.00 | 0.01 | 0.12 |
リンパ腫 | 0.00 | 0.04 | 0.18 |
CONCLUSIONS:
・3年までのゴリムマブ皮下注射の安全性はその他のTNF阻害薬と一致していることを保った。
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Discussionにあったリンパ腫に関する記載を追加しておきます。
・TNF阻害薬における悪性腫瘍のリスクはTNFが腫瘍増殖を阻害する役目を持っているため、懸念されてきたが、このことは関節リウマチの患者の研究において証明されていない。しかし、TNF阻害薬を投与される患者において長期に持続する慢性炎症、それ自体が悪性リンパ腫のリスクに関連するというしっかりとしたエビデンスがある44)。
・全体としての悪性腫瘍のリスクはゴリムマブで上昇していなかったが、GLM 100mgにおけるリンパ腫の発生率はGLM 50mg、プラセボと比較しより高かった。しかし、GLMの二つの投与量における95%信頼区間はプラセボの95%信頼区間のなかに完全に含まれていた(※)。
・ゴリムマブの研究で見られたリンパ腫7例のうち6例はRA患者に発生した。7例のうち4例はGO-AFTER試験におけるものであったが、この試験は以前にTNF阻害薬で治療され、ベースラインでかなりの疾患活動性があった患者を含んだ。これは予測できないことではなかった。なぜなら、リンパ腫の発生のリスクは高い炎症がより長期間持続し、よりTNF阻害薬で過去に治療されやすかったRA患者において高く、TNF阻害薬そのものに関連するものではないからだ45)。
・大多数のリンパ腫がGLM 100mgで治療された患者に発生したが、これは持続的な高い活動性を有する患者でGLM 50mgから100mgに増量され、より多くの患者が100mgにより長期に曝露された可能性があるとすると、想定の範囲内だ。
(*)Table 1より
Early escape、早期離脱とは治療反応に乏しい時にプラセボならGLM 50mg、GLM 100mg+placeboならMTX追加、GLM 50mgならGM 100mgに移行することを認めるというものです(GLM100mgならそのまま)。
(※)Table 5より
Week 160までの100人年あたりのリンパ腫の発生は以下の通りでした。
Placebo 0.00 (0.00 to 0.84)
GLM 50 0.04 (0.00 to 0.24)
GLM 100 0.18 (0.06 to 0.38)
<リウマトロジストのコメント>
Discussionで引用されていたTNF阻害薬とリンパ腫の関連を否定した2つの論文44)45)を次項にまとめました。
ps; この論文はメーカーのファンドによるものです。データは信頼しますけどね。
Funding
The studies contributing data to these pooled analyses were funded by Janssen Research & Development, LLC, a Johnson and Johnson pharmaceutical company, and Merck/Schering-Plough.