リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ASのブドウ膜炎にTNF阻害薬は有効か?②

①のつづき

6. Rheumatology (Oxford) 2009;48(9):1029-35.
Treatment of ankylosing spondylitis andextra-articular manifestations in everyday rheumatology practice.

レビューです。前項の5(Maghraoui 2011)と文章が酷似していますが、こちらが大本です。

AS患者は疾患の経過中20-30%がブドウ膜炎を起こす。さらに、期間が長くなれば有病率は上がる。急性の片側性のブドウ膜炎が90%。臨床的には羞明、涙液の増加、視力障害を伴う有痛性の赤い目が特徴。炎症は前房の中で起き、硝子体の炎症細胞がレンズの後ろのスペースにあふれ出て、虹彩や毛様体のブドウ膜管に炎症が及ぶ。最初のエピソードは通常急性で軽度の目の違和感が1-2日先行し赤目と疼痛が起き、片側性である。再発の傾向が強く、しばしば反対側に起きる。ブドウ膜炎は通常視力障害を残さず2-3ヶ月以内に収まる。もし十分に治療されなければ、前房蓄膿、癒着、白内障緑内障に至る。
PsAIBDにおいてブドウ膜炎は片側性であるか同時に両側性であるかもしれない。潜在性に発症するかおしれないし、慢性の経過かもしれない。後部の炎症を起こすかもしれない。ASの患者は20-30%、ブドウ膜炎を起こす。逆にHLA-B27陽性の前部ブドウ膜炎の患者は仙腸関節and/or末梢性関節炎を非常に合併しやすい。実際、発生率はDefinite or possible ASを有するHLA-B27陽性の前部ブドウ膜炎の患者の90%までに及ぶことが報告されている。
ステロイドはブドウ膜炎の治療の要である。局所的に投与されるプレドニゾロンアセテートは角膜を通しよく吸収され効果を発する。しかし、後部の炎症にはそれほど効かない。スコポラミンのような散瞳の点眼薬は後方癒着を避けるため、瞳孔サイズを調整するための毛様体筋の収縮から来る疼痛を緩和させるたえに用いられるかもしれない。局所療法にもかかわらず炎症が持続する場合、眼周囲のステロイド注射を使用してもよい。短期間の経口ステロイドと同様に。NSAIDsSSZMTXのような細胞障害性薬剤の治療は役割が少ない。
臨床的なブドウ膜炎の患者における房水中のTNFαが高値であることが示されている;したがってTNFα阻害薬は論理的なアプローチである。標準治療に不耐であるか無効であった中間部and/or後部ブドウ膜炎の患者に対しIFXを使用した46週の小さな試験は視力の改善において有効であることを示した。
TNF阻害薬ETAIFXのメタ解析はAS患者において両剤ともプラセボに比べブドウ膜炎の発生を有意に減らしたことを示した (placebo: 15.6/100 PY; infliximab: 3.4/100 PY; etanercept: 7.9/100 PY;P=0.01; TNF-inhibitors vs placebo)IFXETAを分けて解析すると、IFXとプラセボの違いは大きな有意差があった(P=0.005)ETAとプラセボとの差に比べて (P=0.05)ETAよりもIFXでブドウ膜炎発生において大きな減少がある傾向があったが、有意差には到達していない(P=0.08) [Brau 2005]
SpAの患者の後ろ向き研究は前部ブドウ膜炎の再発を減らす上でのTNF阻害薬の効果を確かめた (Fig. 1)TNFα阻害薬を投与される患者が病院のデータベースより抽出された。どの時期でもブドウ膜炎の発作を経験したことがある患者を特定した。SpA+ブドウ膜炎50例が抽出され、46例がTNF阻害薬開始後の解析のために十分フォローされた: 33例がTNF抗体製剤 [IFX (n=25) or ADA(n=8)]13例が可溶性TNF受容体(ETN)の治療を受けた。 TNF阻害薬はブドウ膜炎の発作を治療前の51.8/100PYより治療後21.4/100PYに減らした(p=0.03)。しかし、この解析はETATNF抗体(IFX, ADA)との間には明らかな差があった;ETAでは変わらなかった (54.6 vs 58.5/100 PY; P=0.92)。抗体製剤投与後には劇的に減少したが(IFX: 47.4 vs 9.0/100 PY; P=0.008, ADA: 60.5 vs 0/100 PY; P=0.04)TNF阻害薬を投与する前にブドウ膜炎になったことがなかった患者2例がETA投与中にブドウ膜炎を発症した。しかし、有意差はないもののETAを投与された患者は追加の抗リウマチ薬を投与されることが少ない傾向があり、このことは発作回数に影響したかもしれない。

イメージ 1
 
ADAOpen-label studyAS患者1250例においてブドウ膜炎の発作が減少したことを示した。患者はADA40mg隔週を12週間投与された。ADA投与前の100PYあたりのブドウ膜炎の再発率をADA投与中と比べると有意な減少を示した(15 vs 7.4/100 PY; P<0.001)
全体としてADAは発作を~50%減少させた。

6-51(↑の棒グラフの試験です)
Efficacy of tumour necrosis factor blockersin reducing uveitis flares in patients with spondylarthropathy: a retrospectivestudy.
Ann Rheum Dis 2006. 65(12):1631-4.
 
Abstract
OBJECTIVE:
日常診療でリウマチ性の症状に使用されたTNF阻害療法がブドウ膜炎の頻度を減らすかどうかを調べる。
METHODS:
ひとつのセンターにおいて治療された1回以上のブドウ膜炎発作を有するSpA全例の後ろ向き観察研究 (Dec. 1997-Dec. 2004)100PYあたりのブドウ膜炎の発作回数をTNF阻害療法前後で比較した;個々の患者がコントロールになる。相対リスク(RR)NNTを計算した。
RESULTS:
少なくとも1回のブドウ膜炎発作を有しTNF阻害薬で治療されたSpA46 (TNF抗体製剤;IFX or ADA33、可溶性TNF受容体ETA13)。発症時の年齢は平均26歳、71%が男性。患者はTNF阻害療法より前に平均15.2年フォローされ、投与後1.2年フォローされた。TNF阻害療法前後の100PYあたりのブドウ膜炎発作の回数は以下の通り: TNF阻害療法全てにおいて51.8 v 21.4 (p = 0.03), RR =2.4, NNT = 3 (95%CI 2 to 5); 可溶性TNF受容体 54.6 v 58.5 (p = 0.92), RR = 0.9; TNF抗体製剤50.6v 6.8 (p = 0.001), RR = 7.4, NNT = 2 (95% CI 2 to 5)
CONCLUSION:
TNF阻害薬はSpAのブドウ膜炎の発作を減らす上で有効。抗TNF抗体はブドウ膜炎の発作を減らしたが、可溶性受容体製剤は減らさないようだった。これらは特定の患者においてTNF阻害薬が選択肢とする上で意味がある結果である。
 

 
7. Adalimumab effectively reduces the rate ofanterior uveitis flares in patients with active ankylosing spondylitis: resultsof a prospective open-label study.
 
 

 
OBJECTIVE:
活動性AS患者において前部ブドウ膜炎(AU)発作のADAの効果を調べること。
METHODS:
ADA40mg隔週で20週まで投与するという他施設Open-label, uncontrolled臨床試験において活動性AS1250例において眼科医の診断によるAUの病歴を決定した。全てのAU発作はADA治療の期間とさらに70日の間において記述された。ADA前の1年における100PYあたりの発生率をADA投与後の1年の間の発生率と比べた。全患者およびサブグループにおいて。
RESULTS:
全患者(n = 1250)においてADA投与前のAUの発生率は15/100 PYAUの病歴がある274例では68.4/100 PY、最近AU発作があった患者106例では176.9/100 PY、ベースラインで症状のあるAUを有した28例では192.9/100 PY、慢性ブドウ膜炎の43例では129.1/100 PYADA治療中、AUの発生率は全患者で51%減少し、AUの病歴がある274例では58%、最近のAUがあった106例では68%、ベースラインで症状のあったAUを有した28例では50%、慢性ブドウ膜炎の43例では45%減少した。ADA治療中のAU発生は主に軽症。ASの疾患活動性が高い時期にあった2例が治療中に新規発症のAUを起こした。
CONCLUSIONS:
この前向きOpen-label studyADAが活動性ASの患者におけるAU発生率に予防的な効果を有することを示唆した。最近のAU発生の病歴のある患者を含めて。
 
 
 
8. Uveitis and tumour necrosis factor blockadein ankylosing spondylitis.
 
 
ここ10130例のASTNF阻害薬で治療し(49%IFX,48%ETA,3%ADA)、ブドウ膜炎の新規発症を5例経験した。そのシリーズ報告。
 
 
 
9. Do TNF-blockers reduce or induce uveitis?
 
 
150例のASTNF阻害薬で治療。ブドウ膜炎の発生率はIFX61.73/100PYIFX2.64ETA34.29/100PY60。この上昇の差は有意(p=0.041
 

 
10. Do tumor necrosis factor inhibitors causeuveitis? A registry-based study.
 
OBJECTIVE:
AS患者のPopulation-basedstudiesTNF阻害薬がブドウ膜炎をを予防することを示唆する。逆説的ではあるが、逸話的なレポートがエタナセプトがブドウ膜炎の原因であることを暗示する。そのため二つの薬剤イベントのデータベースからの情報を用いて、TNF阻害薬の使用に関連したブドウ膜炎の報告例を評価する。
METHODS:
USにおいて20061月より前に2つの自発的報告データベースに報告されたETAIFXADAに関連して発生したブドウ膜炎をレビューする。
RESULTS:
全体としてETAに関連したブドウ膜炎が43例、IFX14例、ADA2例。各々の薬剤で治療された推定患者数によって補正した後、ETAIFXADAと比べより大きな数のブドウ膜炎が報告された (P < 0.001 and P < 0.01)ADAIFXとの間にはそのような関連はなかった (P > 0.5)。基礎疾患がブドウ膜炎に関連した患者を含むことを避けるための推測的な基準を用いて、ETA関連が20例、IFX4例、ADA2例が特定された。繰り返しの解析によって再度ETAに関連したブドウ膜炎の数はIFXに比べて大きかった (P < 0.001)
CONCLUSION:
ETA2つの副作用レジストリーにおいてIFXADAに比べブドウ膜炎の報告数が有意に高かった。これらの毛化は過去の研究と関連しており、この関係がTNF阻害薬全体ではなく薬剤特異的であることを示唆する。しかし、私たちの結果はETAよりもIFXの使用を支持するものではない;むしろ患者がもしETA投与中にブドウ膜炎を起こせばIFXへの変更を正当化するものかもしれない。
 
 
 
 
 
11. Decreased incidence of anterior uveitis inpatients with ankylosing spondylitis treated with the anti-tumor necrosisfactor agents infliximab and etanercept.
 
 
 
 
OBJECTIVE:
 
最近報告された臨床試験のデータを用いてTNF阻害薬を投与されたASにおける前部ブドウ膜炎の発生率を推測すること。
 
METHODS:
 
ASTNF阻害薬を用いた4つのプラセボ比較を有する試験(2つはETA2つはIFX)、3つのOpen-labelの研究のデータを前部ブドウ膜炎の試験の前の有病率と発生率に関して解析した。
 
RESULTS:
 
Medlineを用いた系統的な文献検索によって、出版された臨床試験の経過の間に前部ブドウ膜炎のために治療を受けた717例が特定された。前部ブドウ膜炎のフォローアップの情報が397例で入手できた。これらのうち297例はETA90例はIFXに暴露された。各々、計430年、146.4年。プラセボを投与された190例の中で全体の暴露は70.5年。プラセボ群の前部ブドウ膜炎の発生は100PYあたり15.6(95%CI 7.8-27.9)TNF阻害薬で治療された患者は100PYあたり平均6.8の前部ブドウ膜炎の発作しか起こさなかった(P = 0.01)。前部ブドウ膜炎の発作はETAよりもIFXで治療された患者において有意ではないがより少なかった(3.4 per 100 PY and 7.9 per 100 PY)
CONCLUSION:
TNFαをターゲットとした生物製剤によるAS患者の治療は前部ブドウ膜炎の発作の減少に関連する。この傾向はIFXで治療された患者において少し目立ったが、有意差はなかった。
 
そのにつづく