< Clinical scenario >
62歳男性。
1年前からの下腿の紫斑のため、皮膚科に紹介された。
皮膚生検の結果、白血球破砕性血管炎(Leukocytoclastic vasculitis;LCV)との診断であった。
血管炎の分類・診断のため、リウマチ科にコンサルトがあった。
紫斑以外に症状は、繰り返す発熱(38度台、CRP高値)、体重減少のみ。
ROS; 喘息なし。目耳鼻、肺に異常なし。しびれなし。腎機能、尿検査は正常。
皮膚生検の免疫染色にてIgAは陰性。
ANCA陰性、抗GBM抗体陰性、低補体血症なし。
さて、白血球破砕性血管炎、どうする?
(症例は架空です)
<Uptodate>
まずは、概略をつかみましょう。
Leukocytoclastic vasculitisを引いて、以下を読みます。
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Hypersensitivity vasculitis in adults
INTRODUCTION —過敏性血管炎の命名は多彩でしばしば紛らわしい。名称はしばしば変化なく用いられるが、以下の用語まで含む様になったが、これは適切なことではない;薬剤性血管炎、白血球破砕性血管炎、皮膚血管炎、血清病、血清病様反応、アレルギー性血管炎。
血清病と血清病陽反応は血管炎の要素を持っている。多くは持っていないが。典型的には、外因性の蛋白への曝露の結果である。
DEFINITION —この疾患の定義の多様性のため、ACRは1990年に血管炎患者の中から過敏性血管炎を分類するために以下の5つの基準を提案した:
●年齢>16歳
●原因となりうる薬剤使用が症状の出現と時間的関係がある事
●触知可能な紫斑
●斑状丘疹性の皮疹
●生検にて細動脈・細静脈周囲に好中球浸潤が見られること
3項目以上の存在は過敏性血管炎の診断において感度71%、特異度84%であった。これらの基準はHSP(IgA vasculitis)を鑑別しない;後者はIgAの皮膚病変への沈着で特徴づけられる。
Cutaneous vasculitis —もう一つ提唱されている分類は内臓障害の有無を考慮に入れ、過敏性血管炎と言う名称を含んでいない。この命名法に従って、紫斑だけの患者は皮膚破砕性血管炎を有すると考えられ。血管に免疫物質がほとんどつかない全身性の疾患を顕微鏡的多発血管炎と考えられた。これらの病変において免疫物質が乏しければ、免疫グロブリンが血管壁に沈着するHSP (IgA vasculitis)と混合性クリオグロブリン血症(2,3型クリオグロブリン血症)ではなく、Microscopic polyangiitis (MPA) と言える。
薬剤性過敏性血管炎―過敏性血管炎は原因がないかもしれないし、直接薬剤によって引き起こされるかもしれない。あるいは感染症(HCV感染によるクリオグロブリン血症)のような既知の原因に関連して起きるかもしれない。薬剤がもっともコモンな原因であるが、薬剤性血管炎はきちんと定義されていない。関連性を証明することはしばしば難しいからだ。特定の原因への曝露に直接的に起因する血管炎が証明された信頼性の高い所見がないことが理想的である。
私たちは以下の特徴によって薬剤性血管炎と疑われるすべてのケースを分類することを好む:
●原因となる物質
●侵される臓器(例、皮膚単独、消化管)
●病因に関する記述
PATHOLOGY —触知可能な点状出血や紫斑を伴う皮膚の血管炎が典型的には過敏性血管炎のメジャーな所見である。これらの病変の生検によって白血球破砕性血管炎と呼ばれる、毛細血管の後の細静脈を主体とした小血管壁の炎症が示される。
主に二つの組織パターンがあり、ともに壊死性であることも非壊死性であることもある。
●単核細胞優位
●多核細胞優位
皮膚の病理学と免疫組織学のパターンが生検のタイミングと病変の年齢に対し敏感だ。24時間以内の病変は白血球破砕性の変化を認めやすく、多核球が有意。より古い病変では単核球の数が明らかに増える。臨床所見と特定の組織パターンとの関連はほとんどない。
PATHOGENESIS —過敏性血管炎は免疫複合体の反応によると考えられている。循環する免疫複合体の証明は可溶性の複合体の検出、多くの患者で見られる低補体血症(HSP-IgA vasculitisでは見られない)、血管への免疫反応物質の沈着でなされる。免疫複合体は後期よりも早期ではしばしば検出される。
ETIOLOGY —過敏性血管炎は過去にはまず異種の抗血清の投与で起きた(従って血清病と言う名前がついた)。この疾患は典型的にはハプテンのように恐らくは免疫反応を刺激する薬剤によって起きた。多くの薬剤が過敏性血管炎を起こしうるが、ペニシリン、セファロスポリン、スルフォナミド(ほとんどのループ系・サイアザイド系利尿剤を含む)、フェニトイン、アロプリノールが最もよく原因とされてきた。B/C型肝炎ウイルス、慢性細菌感染症(例、心内膜炎、シャントの感染)、HIVのような特定の感染症がこの病気の原因になってもよい。
CLINICAL MANIFESTATIONS —皮膚病変である触知可能な紫斑and/or点状出血に加え、メジャーな臨床所見として発熱、掻痒、関節痛、リンパ節腫脹、低補体血症、ESR高値が含まれる。ほとんどの患者においてこれらの症状and/or所見は高原への曝露から7-10日で始まる。これが抗原抗体の複合体を作るために十分な抗体を産生するのに必要な時間なのだ。しかし、潜在期間は2回目の抗原暴露から2-7日ほど短いものかもしれない。あるいはベンザシンペニシリンのような長期作動型の薬では2週間より時間がかかるかもしれない。
内臓が障害されることは稀であるが、重症なこともある。皮膚以外の病変の頻度を確定することは難しい。その理由は内臓病変の詳細な検査がしばしばなされていない事、重症の末期臓器障害の報告にはバイアスがあることがあげられる。糸球体腎炎、間質性腎炎、様々な肝細胞障害の程度が記述されている;肺、心臓、中枢神経は稀に報告されている。
通常軽症な腎障害が見られる。所見は血尿、蛋白尿、細胞円柱。急性腎不全は稀で重症または長期の抗原暴露による。腎生検は行われれば通常、毛細血管壁に免疫グロブリン(主にIgG)と補体の沈着が見られる、増殖性糸球体腎炎を呈する。
SERUM SICKNESS —血清病と血清様反応はしばしば一貫せず用いられる。歴史的には外因蛋白の治療的な投与後8-12日後に起きる臨床病理的な疾患を意味する。コンセンサスとして、「血清病」という診断名は外因蛋白、蛋白の生物学的製剤やその他の薬剤の曝露から5-14日後に起きる皮疹、関節痛、関節炎、発熱を言う。
DIAGNOSIS —過敏性血管炎の診断は通常臨床所見と薬剤や感染症の病歴から疑われる。皮膚生検は上述の通り白血球破砕性血管炎を呈し、もしIgA沈着が見られればHSP (IgA vasculitis)と考えられる。二つを区別するための臨床基準もある。ある報告によれば過敏性血管炎は以下の基準のうち二つより多くない限り、HSP(IgA vasculitis)ではなく、74%正しく存在する:
●触知可能な紫斑
●腸管のアンギーナ
●消化管出血
●血尿
●20歳以下
●血管炎を起こしうる薬剤の使用がない事
DIFFERENTIAL DIAGNOSIS —過敏性血管炎をその他のタイプの血管炎と鑑別することは難しいかもしれない。とくに皮膚に限局する場合:
●紫斑は時に傍腫瘍性、あるいは悪性腫瘍に合併した血管炎として出現することがある。後者はしばしばリンパ増殖性疾患によるものである。これらは慢性の経過となりやすく、悪性腫瘍の所見や症状を呈さないが、臨床的には潜在的に存在しているかもしれない。
●多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー)、結節性多発動脈炎(B型肝炎によるものを含む)、顕微鏡的多発血管炎は時に触知可能な紫斑のような皮膚障害が主体となることがある。全身性の所見と症状があること、標的となる内臓病変の証拠、ANCA陽性が免疫沈着がないこととともにこれらの症候群を診断するのに役立つ。
TREATMENT —原因となる薬剤や抗原を除去することが症状の改善と診断に導くはずだ。これは数日から数週間以内。例えば、95例の報告において54例が治療を要さず、26例がNSAIDを要しただけだった。14例はグルココルチコイドを投与された。平均16ヶ月の時点で93例が完全に回復し、2例がわずかな腎機能障害を呈した。
現行の感染症による過敏性血管炎を認識することは極めて重要だ。抗炎症薬を開始することは有害になるかもしれないからだ。治療は根底にある感染症に向けられるべきだ。HCV+クリオグロブリン血症の患者にインターフェロンとリバビリンを投与するように。
より重症または持続的な皮膚疾患を有する患者で感染症によらない場合、コルヒチン、抗ヒスタミン薬、だぷ損のような薬が有効かもしれない。時にこれらの併用(例、ダプソンとペントキシフィリン)は単剤よりも有効だ。
複雑な疾患や全身性疾患を有する患者でより毒性のある治療が必要な場合、リウマトロジストにコンサルトすべし。グルココルチコイドや細胞障害性薬剤による免疫抑制療法は劇症型や進行性の疾患を呈する稀な患者にとっておくべきだ。そういう患者の一部は顕微鏡的多発血管炎になるかもしれない。ある報告では重症で進行性の皮膚の小血管の血管炎2例にリツキシマブを用い成功したという報告がある。よく定義されたグループにおいてリツキシマブのさらなる調査が求められる。
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<リウマトロジストのコメント>
白血球破砕性血管炎はCHCC2分類ではMPAの組織に該当します。糸球体腎炎や全身症状があればMPAで良いのですが、皮膚だけに限局する場合、薬剤などの原因があることが多く、慣用的に過敏性血管炎と言われているようです。
なので、この患者さんにおいて、7つの小さいサイズの血管炎(※)に分類されない場合、薬剤などが原因となる過敏性血管炎であることが多いようです。
(※)
Small Vessel Vasculitisの7つの分類
ANCA Associated Vasculitis (AAV)
Microscopic Polyangiitis ; 顕微鏡的多発血管炎 (MPA)
Granulomatosis with Polyangiitis (Wegener’s) ; 多発血管炎性肉芽腫症(GPA/WG)
Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis (Churg Strauss) ; 多発血管炎性好酸球性肉芽腫症 (EGPA)
Immune Complex Vasculitis
Anti-GBM Disease ;抗基底膜抗体病
Cryoglobulinemic Vasculitis;クリオグロブリン血症性血管炎
IgA Vasculitis (Henoch-Schonlein) ; IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)
Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis (Anti-C1q Vasculitis) ; 低補体性蕁麻疹性血管炎
ただし、原因らしい薬剤がない場合、どういうことが考えられるでしょう。
リウマトロジストはDifferential diagnosisのParaneoplasticと言う言葉にひっかかりました。
では、Pubmedにて情報を追加しましょう。
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