(白血球破砕性血管炎①の続きです)
< Clinical scenario >
62歳男性の白血球破砕性血管炎(Leukocytoclastic vasculitis;LCV)の分類をしています。
Uptodateで調べる限り、LCVはMicroscopic polyangiitis (MPA) の皮膚病変の組織型であり、Small vessel vasculitisの7つの分類(※)に当てはまらない場合、過敏性血管炎であることが多いようです。
しかし、過敏性血管炎の原因は多くの場合薬剤で、まれに慢性感染症があるくらい。この方には原因らしい所見がありません。
LCVの良いレビューがないか、さらにPubmedで調べてみることにしました。
Differential diagnosisとしてParaneoplastic(傍腫瘍性)との記載があり、これに関するものがあればよいのですが・・・
※Small Vessel Vasculitisの7つの分類
ANCA Associated Vasculitis (AAV)
Microscopic Polyangiitis ; 顕微鏡的多発血管炎 (MPA)
Granulomatosis with Polyangiitis (Wegener’s) ; 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)
Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis (Churg Strauss) ; チャーグ・シュトラウス症候群 (CSS)
Immune Complex Vasculitis
Anti-GBM Disease ;抗基底膜抗体病
Cryoglobulinemic Vasculitis;クリオグロブリン血症性血管炎
IgA Vasculitis (Henoch-Schonlein) ; IgA血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病 (HSP)
Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis (Anti-C1q Vasculitis) ; 低補体性蕁麻疹性血管炎
< Pubmed >
Pubmedでleukocytoclastic vasculitis[tiab] を検索します。
白血球破砕性血管炎を title または abstract に含むという条件です。
ReviewとEnglishで絞り込み、138件になります。
そのなかで、以下の二つを読みました。
(CRR2012)
Myelodysplasia and malignancy-associated vasculitis.
Curr Rheumatol Rep. 2012 Dec;14(6):526-31.
(JR2008)
Paraneoplastic vasculitis in patients with solid tumors: report of 15 cases.
J Rheumatol. 2008 Feb;35(2):294-304.
LCVに関連する部分を抜粋します。
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(CRR 2012)
・悪性腫瘍に合併した血管炎60例の研究において、63%がhematologic;29.2%がリンパ系、32.3%がMyelodysplastic syndrome (MDS)。MDS、リンパ系とも最もコモンな血管炎はLCVと結節性多発動脈炎(PAN)。ただし、真のparaneoplasticは稀。
・皮疹は血管炎でもMDSでもコモンであるため、診断が難しい。原発性MDS157例を中央値44ヶ月フォローした最近のレビューによると、10%がMDSによる皮膚病変を呈する。その大多数がneutrophilic dermatosesであるが、皮膚血管炎が2例、ベーチェット病が1例あった。
(JR2008)
・固型癌に合併した傍腫瘍性血管炎15例の報告によると、尿路6例(膀胱3、前立腺2、腎1)、肺4例、GI4例(大腸3、胆管1)。
・血管炎に対する通常の治療に反応が悪く、早いうちに炎症性の症状が出現する事、健康の顕著な障害は根底にある悪性疾患を疑わせる。
・LCVの2例において重症の指の虚血があり隠れた悪性腫瘍を疑わせた。この所見は稀な傍腫瘍性症候群として異なる悪性腫瘍において報告されている。報告例の大多数において、虚血性変化は両側対称性で上肢に起きるが、治療で改善する。
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<リウマトロジストのコメント>
LCVは数ある血管炎のなかで、もっとも悪性腫瘍と関連する血管炎なのですね。
特発性のLCVと判断する前に悪性腫瘍の検索をしておくべきだと考えました。
固型癌よりは血液系が多いとのことで、血球異常やリンパ節腫脹には要注意ですね。
この度の患者さんは悪性腫瘍は診断されず、過敏性血管炎の原因となりえる薬剤、感染症もありませんでした。
その3(特発性皮膚症血管炎へ)