リウマチ膠原病のQ&A

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新しいSLEの分類基準、SLICC分類基準 -その2-

 
SLEの新たな分類基準を作成し、評価した論文です。
 
ここでは基準の検査特性について述べます。
 
この基準の定義は その1 にまとめています。
 
 
 
Arthritis Rheum 2012;64(8):2677-86.
Derivation and validation of the Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus.
Petri M, et al.
 
 
ABSTRACT
 
OBJECTIVE:
全身性ループス国際協力クリニック(SLICC)グループはアメリカリウマチ協会の全身性エリテマトーデス分類基準を改訂し、妥当性を評価した。その目的は臨床的妥当性を改善すること、厳しい方法論の必要性を満足させること、SLEの免疫学に関する新たな知見を得ることである。
 
METHODS:
分類基準は専門医に評価された患者シナリオのセット702例からderivationされた。SLICCの医師のコンセンサスに基づいて簡略化・洗練された初期ルールを生成するために再帰分割法を用いた。SLICCグループはその分類基準を新しいvalidationのためのサンプル、専門医に評価された690例の新たな患者シナリオにおいて妥当性が評価された。
 
RESULTS:
17の基準が定義された。Derivationセットにおいて、SLICC分類基準は現在のACR分類基準と比較し、分類ミスが少なく(49 versus 70; p = 0.0082)、感度が高く(94% versus 86%; P < 0.0001)、特異性は同等であった(92% versus 93%; P = 0.39)。validationのセットにおいてSLICC分類基準はACR分類基準に比べ分類ミスがより少なく(62 versus 74; P = 0.24)、感度が高かった(97% versus 83%; P < 0.0001)。しかし、特異性は低かった(84% versus 96%; P < 0.0001)
 
CONCLUSION:
新しいSLICC分類基準は専門医に評価された患者シナリオの大きなセットにおいて検査特性が良かった。SLEの分類のためのSLICCルールによると、患者は臨床基準、免疫学的基準をひとつずつ以上、計4項目を満たさなければならない。あるいは、生検で証明されたループス腎炎を有し、抗核抗体陽性か抗ds-DNA抗体を有さなければならない。
 
Table 6
イメージ 1
 
 
 
<リウマトロジストのコメント>
簡単に解説すれば、分類基準をderivationセット(702例)を用いて作ります。できた分類基準をderivationセットを用いて評価してもいいに決まっているので、新たなvalidationセット(690例)を対象に感度、特異度を再度評価します。
 
その結果、ACR分類基準(1997年)は感度 83%、特異度 96%
 
新たなSLICC分類基準(2012年)では感度 97%、特異度 84%でした。
 
つまり、見逃しが14%少なくなったが、間違って診断することが12%増えたということです。
 
リウマトロジストとしては、「見逃し」よりも「間違い」の方がまずいと思うので、この新たなSLICC分類基準、今後の検証が待たれます。
 
この論文から学んだことは、ACR分類基準(1997年)の特異性が96%と優れているということ。 
皮肉にも、越えるべきは偉大だったと示しているように思うのですが。。。
 
このSLICCの基準は感度が97%と高いので、スクリーニングや除外には有効かもしれませんね。
 
 
SLICC基準でスクリーニングして、ACR基準で確認をするという感じで使い分けるというのはいかがでしょうか。
 
 
ps;ABSTRACTよりも詳しい内容をお知りになりたい方は、Result、Discussionの訳へどうぞ。
 
その3(誘導と検証) Resultの訳
 
その4(より理解しよう) Discussionの訳
 
 

 

ps

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