横断性脊髄炎、ループス脊髄炎についてUptodateにて勉強しました。
この度はPubmedを用いて、最近の報告から勉強してみます。
Pubmedにて↓を検索し、英語でlimitsして79件
(transverse myelitis[title]) OR transverse myelopathy[title] AND lupus
Case seriesかReviewがほしいですね。
Uptodateの孫引きで登場したものを割愛します。
4. Lupus. 2015 Jan;24(1):74-81.
Systemic lupus erythematosus-associated acute transverse myelitis:aanifestations, treatments, outcomes, and prognostic factors in 20 patients.Saison J , et al.
Abstract
TMはSLEの稀な合併症。このretrospective多施設研究は比較的大きなシリーズにおいて予後因子を同定するものだ。20例がSLEのACR分類基準とTM共同ワーキンググループの基準を満たした。重症の神経学的悪化は運動神経レベルにおける筋群の半数より多い筋において筋力グレード<3/5と定義した。走ることができないこと、もうひとつの有意に歩行に関してできないことを神経学的に不良なアウトカムとした。
脊髄炎は12例においてSLEの最初の症状;残り8例ではSLE発症から平均8.6年で起きた。11例は重症の神経学的障害を呈した。治療は全例でステロイド、11例でIVCY、14例でヒドロクロロキン。神経学的に不良なアウトカムは6ヶ月で53%、フォロー終了時に28%で見られた(中央値5.9年)。最初の重症の神経学的障害、シクロフォスファミドを使わないことは6ヶ月後とフォロー終了時のの神経学的に不良なアウトカムに関連した。
TMはSLEを露わにするかもしれないし、診断から10年以上たって発症するかもしれない。対麻痺を伴う最初の神経学的重症度が主な予後のマーカー。この研究はシクロフォスファミドの使用について議論を提供する。
12. The epidemiology of transverse myelitis.
Autoimmun Rev. 2010 Mar;9(5):A395-9.
Bhat A, et al.
(本文より)
5.5. Systemic lupus erythematosus (SLE)
TMはSLE患者の1-2%を侵す稀な重症病態(Table 3)。Retrospectiveな研究によるとTMはSLEの39-50%で初発症状としてみられる。頸髄が最も良く侵され、患者の50%。ほとんどの患者で胸部レベルの感覚障害を認める。メチルプレドニゾロン静注、IVCYが最も有効。全患者の70%がMRI異常を有した。その研究でSLE+TMの患者の48%が視神経炎を呈した。
多くの著者が言うようにTMの患者はSLEと抗リン脂質抗体症候群について病歴、臨床所見、aPLの検査を行うことで評価するえきだ。TMは動脈炎による脊髄の虚血性壊死の結果と考えられている。ある研究ではSLEの主な症状としてTMを呈した15例のうち11例(73%)がaPLを有した。多くのSLE患者がaPLが陽性になるため、抗リン脂質抗体症候群に関連したTMと診断することは難しい。しかし、抗リン脂質抗体症候群もTMを合併することが良く知られる。
最近の報告によるとSLEには二つの脊髄炎のタイプがあることが示唆された[35]。この22例に関する研究は1994-2007年におけるSLE+TMのretrospectiveなコホート。患者は神経学的に評価され、SLEに関して臨床・血清学的に評価され、脊髄MRI、髄液検査、自己抗体の検査を受けた。11例は灰白質病変のサインを呈し(弛緩性麻痺、腱反射低下)、11例は白質病変のサインを呈した(痙性麻痺、反射亢進)。灰白質の所見を呈する患者はより急速に進行し6時間以内に最悪の状態まで悪化した。そのうち90.9%が持続的に弛緩性麻痺となり反射低下のままであった。二つのタイプに性、年齢、民族の差はなかった。灰白質の脊髄炎に出現するより重症の神経学的欠損はループスの活動性と有意な全身性炎症性所見に関連した。白質の脊髄炎と異なり灰白質の脊髄炎の再燃は必ず発熱を伴った。灰白質の脊髄炎の11例中10例が不可逆性の対麻痺より前に尿閉の症状の評価のために受診した。
ループスの活動性の指標である、SELENA-SLEDAIは灰白質の脊髄炎において白質の脊髄炎に対し有意に高い値を示した(9.8 versus 2.0)。
aPLと抗リン脂質抗体症候群は灰白質ではなく白質の脊髄炎に関連した。抗リン脂質抗体に関連する再発性の血栓性のエピソードは白質性の脊髄炎で見られやすかった。抗SSA抗体は白質性脊髄炎(60%)で見られやすく、灰白質の患者よりも多かった(18.2%)。抗dsDNA抗体が灰白質性の脊髄炎において白質性よりも頻度が高かった(90.9%vs 54.5%)。灰白質性脊髄炎の炎症を呈する患者はIVCY、血漿交換、IVIGを含むより強力な免疫抑制療法を要した。
(12-35)孫引き
Arthritis Rheum. 2009 Nov;60(11):3378-87.
Distinct subtypes of myelitis in systemic lupus erythematosus.
Birnbaum J, et al.
Abstract
OBJECTIVE:
脊髄炎は疼痛、筋力低下、括約筋不全を来たす。SLE患者では一般人口に比べ1000倍多い。ここ10年、SLE脊髄炎の記載は症例報告に限られる。これに反し、大きなコホート研究によって、特発性の脱髄疾患でも起きる脊髄炎(すなわち多発性硬化症vs視神経脊髄炎)は異なる疾患を表現することが明らかになった。この研究はSLE髄膜炎が同様に異なる疾患を包括するかどうかについて決めるために行われた。
METHODS: SLEと脊髄炎の患者22例のコホートを解析した。患者は脊髄炎に関連する神経学的な変数について、SLEの臨床的・血清学的な所見について評価された。脊髄MRI、髄液検査、自己抗体のプロファイルが得られた。
RESULTS:
11例は灰白質不全のサイン(すなわち、弛緩性麻痺と反射低下)を呈し、11例は白質不全のサイン(すなわち、痙性麻痺で反射亢進)を呈した。灰白質不全の患者は不可逆性の対まひを多く呈した (P < 0.01)。単相性vs多相性の経過を呈したのにもかかわらず。またSLEの活動性がより高く(SLEの疾患活動性の平均9.8vs2.0;p=0.01)、細菌性髄膜炎から区別することが難しいような髄液検査の結果であった。これらの患者は非可逆的な対まひの前に発熱と尿閉の前駆症状を呈しやすく、専門医でない医師によって尿路感染症と診断された。白質不全を呈する患者はより視神経脊髄炎の基準を満たしやすく(P = 0.04)、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント)を有しやすかった (P = 0.01).
CONCLUSION:
私たちの所見はSLE髄膜炎は二つの異なる、かつては認識されていなかった症候群を包括するものであることを示唆する。これは灰白質病変か白質病変かによって臨床的に区別することができる。発熱と尿閉を非可逆的な対まひの前駆症状として認識することは灰白質病変を呈するSLE患者を早期に診断・治療することを可能にするかもしれない。
(Table 1)
→一旦、対まひに至った患者は回復後も対まひであることが多い(10/11)。
カテーテル依存になった患者のうち離脱できたものはいなかった(0/14)。
(Table 3)
(Table 4)
→ 白質の脊髄炎は再発しやすい。半数がNMO。
・一旦、対まひに至ると回復後も対まひであることが多い(10/11)。カテーテル依存になった患者のうち離脱できたものはいなかった(0/14)。
・TMは二つのタイプに分けられる:灰白質性の脊髄炎(弛緩性麻痺、腱反射低下)、白質性の脊髄炎(痙性麻痺、反射亢進)
・灰白質性は急性疾患。ESR高値とSLEの高活動性を伴い、ほぼ1日以内に最悪の状態まで進行する。白質性は1日から1ヶ月くらいかけてゆっくり進行する。
・aPLは白質の半数に関連。
→この度のケース(28F)は症状の完成までには3週間程度を要し、痙性麻痺で反射亢進なので白質らしい経過です。SSA(+), DNA(-)と血清学的にも白質らしい結果でした。MRIがPoor studyであり、白質vs灰白質までは迫れませんでしたが。
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