リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

サラゾスルファピリジンによる無顆粒球症

サラゾスルファピリジン投与中の無顆粒球症について、まとめました。
 
リウマトロジストはこの薬をよく使う方ですが、個人的な経験では1例のみ。その際はさすがに冷えましたが、抗生剤とG-CSFで切り抜けました。
 
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pubmedで検索してみる>
salazosulfapyridine agranulocytosis を検索します。Englishでlimitsして60件あるなかでtitleから読みたいものを抽出しました。
 
Fatal cases
24. Fatal agranulocytosis with sulfasalazine therapy in rheumatoid arthritis.
J Rheumatol. 1993 May;20(5):909-10.
 
26. Fatal neutropenic enterocolitis associated with sulphasalazine therapy for RA.
Br J Rheumatol. 1992 May;31(5):351-3.
 
35. Fatal agranulocytosis in sulfasalazine treated rheumatoid arthritis.
J Rheumatol. 1989 Aug;16(8):1166-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2573730
 
 
(頻度について)
28. Sulfasalazine associated agranulocytosis in Sweden 1972-1989. Clinical features, and estimation of its incidence.
Eur J Clin Pharmacol. 1992;43(3):215-8.
 
スェーデンで1972-1989年にみられたスルファサラジンによる無顆粒球症;臨床所見と発生率の推定
 
1972-1989年の18年間スルファサラジンの使用に伴う無顆粒球症がスェーデン薬剤安全性勧告委員会に62件報告された。年齢の中央値は52歳で、スルファサラジンの使用期間は中央値43日。死亡率は6.5%。回復した患者において回復までにかかる時間の中央値は10日。12人が無顆粒球症の原因として一般に知られているその他の薬剤を併用していた。販売データと処方データよりスルファサラジン投与中の平均発生率は1750人年あたり1件と見積もられた。スェーデンで進行中の処方モニタリングプロジェクトを用いることで異なる投与期間におけるスルファサラジン投与中の患者の割合が可能になった。無顆粒球症の発生率は最初の30日間が1/240031-90日の間が1/70091-365日の間が1/11200と推定された。無顆粒球症を起こすリスクが高いのは最初の3ヶ月であり、従来のリスクの表示(1/1750人年)では個人のリスクを過小評価することになる。
 
→ はじめの3ヶ月が0.1%前後ですが、それ以降は無顆粒球症が起きる可能性は<0.01%。
 
→ 3gまで使用できる欧米のデータですので、1gまでの日本ではさらに稀と期待したいところです。
 
 
しかし、用量の問題だけではないのかもしれません。
 
 
(薬の代謝について)
13. Polymorphisms of NAT2 in relation to sulphasalazine-induced agranulocytosis.
Pharmacogenetics. 2000 Feb;10(1):35-41.
 
この薬はNAT2によってアセチル化され不活化します。SSZを3カ月内服できた患者に比べ、無顆粒球症が起きた患者においてslow acetylatorの割合が多かったという報告です(69% vs 45%)。
 
 
つぎに、pubmedsalazosulfapyridineとNAT2を検索し、以下の報告にたどりつきました。
 
(日本人とサラゾスルファピリジン
日本からの報告で144例のSSZで治療されたRA患者のNAT2遺伝子が解析されました。副作用は16例(11.1%)にみられ、そのほとんどが発熱と皮疹でした。NAT2*4 halotypeを持たないSlow acetylatorでは6割に副作用がみられ、Slow acetylator25%が副作用のため入院を要したとされています。
 
 
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添付文書にも、「最初の3ヵ月間は2週間に1回、次の3ヵ月間は4週間に1回、その後は3ヵ月ごとに1回」血液学的検査及びをするよう肝機能検査を行うこと。」と記載されており、注意が必要です。