リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

成人スチル病の分類基準

成人スティル病の分類基準、Yamaguchi criteriaについて解説します。
 
日本で作られた、世界に誇るべき基準です。
 
32施設から146例のASDが集められ、definite, probable, possibleに分けられました。そのうち、definiteと判定された90例をASD群としました。
 
一方、コントロール群として、10施設から267例が集められました。
 
この集団はASDと似た臨床所見を有するさまざまな疾患からなり、どの病気もASDと鑑別を要する病気です。
 
33 with sepsis
31 PAN
31 seronegative RA
31 PMR
25 rheumatoid vasculitis
15 Takayasu’s arteritis
11 AS
5 arthritis with IBD
5 allergic purpura or hypersensitivity angiitis
3 WG
2 temporal arteritis
1 CSS
1 pustulotic arthroosteitis
62 FUO
 
各々のアイテムにおいて、もっとも良い定義やカットオフを決めていきます。
 
熱なら何度の熱とするか、期間はどうするのがよいか・・
白血球ならカットオフを1万とするか、1.5万とするか、WBCだけでいくか、顆粒球でいくか、それとも両者を組み合わせるか・・
関節痛は関節炎とするか、期間で定義するか・・
 
この二つの集団を用い、感度と特異度を計算して、決めるのです。
 
 
その結果、以下が優れた検査特性を有することがわかりました。
 
 
大項目

1.発熱≧39 and 1週間       感度76 特異度76
2.関節痛≧2週間                     感度90 特異度48
3.定型的皮疹*                         感度87 特異度99
4.WBC1and顆粒球≧80%  感度78 特異度78
小項目
1.咽頭                               感度70 特異度83
2.リンパ節腫脹and/or脾腫     感度84 特異度62
3.肝機能障害                       感度85 特異度59
4.RF陰性 and ANA陰性          感度89 特異度39

 
※項目の定義について
 
* 非掻痒性のサーモンピンクの斑点または斑状丘疹性発疹。通常発熱時に出現する。
 
 
 
リンパ節腫脹は最近の有意なリンパ節腫脹と定義され、脾腫は触診かエコーで確認されたもの。
 
 
肝機能障害はトランスアミナーゼ and/or LDHの異常な上昇と定義する。薬剤アレルギーや肝毒性またはその他の原因によらない、この疾患に関連したもの。鑑別のために肝障害のある薬剤を中止して肝機能が正常値に戻るかどうかを確認してから、この基準に当てはめることを勧める。
 
 
 
血清RFはIgM RFを検出するルーチンの検査にて、血清ANAはルーチンのIF法で陰性であること。
 
 
 
 
つぎに、これらの組み合わせを検討しました。
 
4項目満たせば良いのか、5項目満たせば良いのか、あるいは、大項目2項目を必須として、計何項目が検査特性が良くなるかを検討しました。
 
その結果、 「大項目2項目を含む計5項目以上§」  の検査特性が
 
 感度96.2% 特異度92.1% と、もっとも優れていました。
 
 
こうして、世界に誇る分類基準ができあがりました。
 
でも、この基準のなかで、計算はできない、もっとも大切な記載があります。
 
「§ 全ての基準はその他の臨床状況で説明がつかない場合にのみ適用すべし。」
 
 
悪性腫瘍、感染症、その他のリウマチ性疾患を除外する」
 
です。
 
 
PubmedでAdult still disease and mimickingを検索してみると、さまざまな病気がASDと紛らわしい発症を呈することが分かります。
 
ASDを真似した慢性EBV感染症
 
 
ASDを真似したNK/T cell lymphoma
 
ASDを真似したMulticentric Castleman's disease
 
ASDを真似したバルトネラ症)
 
山口の基準はあくまで、完成された病気(上述のコントロール群)を集めて作られた分類基準です。満たせば診断決定ではなく、除外に精を出しましょう。
 
※分類基準とは・・・
主に研究対象を定義するときに用いる基準です。このように「有疾患群とコントロール群を用いて、検査特性を調べる」ことで作られる基準はすべて分類基準なので、SLEもRAも分類基準となるのです。さまざまな臨床セッティングで診断に使える診断基準を作ることは難しいのです。
 
 

 

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