リウマチ膠原病のQ&A

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反応性関節炎(ReA)の治療

反応性関節炎(ReA)を経験したので、治療についてUptodateの記載をまとめます。
稀な疾患のため、エビデンスは少ないようです。
2014.3月現在のものなので、随時Updateしてくださいませ。
 
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TREATMENT管理についてはいくつかの大きな側面がある。とくに、尿生殖器感染の患者は関節炎の原因となった感染症に対する治療が適応となる;関節炎と関節周囲の問題はそれらの症状を有する患者において治療されるべきである。関節外症状の治療のための介入も必要になるかもしれない。
 
Treatment of the infection抗生剤を関節炎の治療に用いることはない。しかし、尿生殖器感染症がまだ続いている場合や原因となった可能性がある病原体が検出されている場合は抗生剤の適応があるかもしれない。慢性の関節症状に対する抗生剤の役割は確立されていない。
ReAの治療として抗生剤をプラセボや無治療の場合と比較したRCTのシステマティックレビューとメタ解析によると、抗生剤はReA寛解導入失敗を有意に減らすことはないことが分かった:試験は非常に不均一であり、またデザインも多様で多くの試験でバイアスのリスクがあったが。寛解の割合がそのレビューに含まれた12試験のうち7試験の375において解析された。さらに、疼痛、関節数や患者の全般評価に対し抗生剤は有意な効果がなかった。しかし、消化管の副作用は抗生剤を投与された患者において倍近く多かった。
 
Enteric infection一般に合併症のない腸管感染症に抗生剤は適応とならない。しかし、活発な腸管感染症を呈する患者は合併症や病原体によっては抗生剤を要するかもしれない。たとえば、重症の消化管症状を呈する患者や高齢者、免疫不全の患者には抗生剤が適応になるかもしれない。腸管の細菌によって誘発された慢性ReAの患者では入手できるエビデンスでは長期の抗生剤投与を支持していない。
 
Genitourinary tract infection多くの腸炎の患者とは異なり、尿生殖器の急性クラミジア・トラコマティス感染症の患者とそのセックスパートナーは尿生殖器クラミジア感染症に対する標準的な抗生剤治療を受けるべし。
クラミジア誘発性の関節炎の既往がある患者は再発性の尿生殖器感染について評価をすべし。関節炎や尿生殖器感染の症状が再発していないかについて。また、クラミジア感染症の検査が陽性であれば抗生剤で再度治療をするべきだ。感染症の抗生剤治療は再発性の尿生殖器症状を呈する患者では関節炎の再発をひょっとすると予防するかもしれない。証明されてはいないが、ReA発症前の急性クラミジア感染症の速やかな治療は患者とセックスパートナーにおいてReAの発症のリスクを減らすかもしれない。
 
Chronic Chlamydia-related arthritis私たちは完成したReAに対し長期の抗生剤をルーチンに使用することを勧めない。長期抗生剤治療のRCTの結果は混沌としており、ほとんどは利益がない。
反対にメタ解析にも含まれている一つの研究においてクラミジアPCR陽性のReAの患者には抗生剤のコンビネーションはひょっとすると有用かもしれなかった。この研究は6ヶ月以上のReA C. trachomatis or C. pneumoniaePCR検査が血液や滑膜組織において陽性であった42例を対象とした。患者はランダムにリファンピシン+(ドキシサイクリンorアジスロマイシン)か、プラセボに割りつけられ、6ヶ月治療された。複合エンドポイントの筋骨格症状・所見の改善は抗生剤コンビネーションを投与された患者でより多く到達された (17/27 [63%] vs 3/15 [20%], p = 0.01). 副作用は軽症で両群間で同等。しかし、この試験のLimitationは両群とも抗生剤レジメンの違いを比較するには小規模すぎること。また、研究対象は通常使われる尿サンプルではなく、血液滑膜組織を用いた特別なPCRで持続的クラミジア感染が証明された患者に限られている。血清学的検査はこれらのPCRの結果に関連しなかったし、この研究で用いられたPCRは通常の診療では用いられないもので、有効性も証明されていないものであった。この結果を確かめるにはさらなる大規模な研究が必要である。その他のタイプのReAに対し抗生剤治療が利益を示したエビデンスはない。
 
Treatment of arthritis抗炎症剤と免疫抑制剤の治療は二つにステージに分けられる:急性ReAの治療と、通常6カ月以上と定義される難治性(慢性)ReAの治療である。
最初の治療のゴールは関節炎の症状の緩和である。この病気は大多数の患者で自然に改善し、有意に持続する関節障害は稀だからだ。
治療のアプローチはReAの患者のRCTと長期的な観察研究が少ない事を考慮すると、ReAの臨床経験、およびこれらの治療がその他の関節炎疾患、とくにSpAのその他のタイプにおいて利益が証明されているかに基づく。
実際の臨床では、疾患活動性と治療への反応は腫脹関節数と圧痛関節数、痛みの強さ、付着部炎の存在と重症度、医師と患者の全般評価で決まる。ReAにおいて妥当性が証明された疾患活動性の指標はない。
 
Acute reactive arthritis急性のReAの患者では私たちは通常治療の基本となるNSAIDsを使用する。これに抵抗性の患者には関節内and/or全身ステロイドを用いるかもしれない。
 
Initial therapy私たちは薬剤アレルギー、心血管疾患or腎機能などの禁忌事項がない限り、NSAIDsをほとんどの患者で対症的に効果があり抗炎症作用を発揮する量で用いることを提案する (eg, ナプロキセン500 mg12-3, ジクロフェナク50 mg3, インドメタシン50 mg3-4)。疼痛と炎症をコントロールするために最大投与量と持続的な使用が必要になるかもしれない。十分量のNSAIDの投与とは通常少なくとも2週間である。個人間の反応は様々であり、効果がはっきりするまでに複数のNSAIDsを試さなくてはならないかもしれない。NSAIDsが疾患の経過を短くするか、また何らかの影響を与えるかは分かっていない。
NSAIDsは最初から用いられる。その理由は感染症の治療で症状・所見が改善するわけではないこと、ほとんどが自然寛解すること、ほとんどの患者が炎症をコントロールしたり、関節のびらんを予防するために抗リウマチ剤を必要としないことである。NSAIDsの使用はSpAのその他の型において有意に症状を緩和する効果があること、およびReAにおけるNSAIDsの臨床経験に基づく;ReAに対するNSAIDのちゃんとした臨床試験はほとんどない。
NSAIDsを投与した患者はNSAIDによる胃腸症、消化管出血などの消化管障害、腎機能障害、肝機能障害、および心血管系の副作用に注意すべし。CBC、腎機能、アミノトランスフェラーゼを2ヶ月後に測定し、その後、NSAIDsを継続する患者では併存疾患に応じ3-4ヶ月おきに測定するべきだ。
 
Inadequate response to NSAIDsステロイドの関節内注射はNSAIDに抵抗性で持続する症状に用いて良い。経口ステロイドはこれらの治療に反応しない患者には有益かもしれない。
 
Intraarticular glucocorticoidsNSAIDに十分な反応を示さない患者にはステロイドの関節注射を提案する。経験上、トリアムシノロンを膝のような大関節なら40mg、それより小さい関節ではより少ない量を、それ以外のステロイドであればそれに相当する量を関節注射すると、通常はその他のSpAや関節リウマチと同様、関節炎と症状の緩和に有効だ。それで経口ステロイドや抗リウマチ剤を必要としなくてよいほど、症状は緩和されるかもしれない。これらの薬剤の副作用のリスクも回避できる。
関節内・全身ステロイドに関して副作用が増えたり、疾患を悪くするという経験はないし、そういう報告もない。このことは病因によらないし、ReAの少数の患者で見られる病原体が関節内から検出されていてもそうだ。この問題はシステマティックに評価されていない。足底筋膜の疼痛と腫脹もステロイドの局所注射で改善しうる。
 
Systemic glucocorticoids — NSAIDsと関節内ステロイド注射に十分反応しない患者や多関節炎を呈する患者には少量から中等量のステロイドを提案する(プレドニゾン20mgより開始)。ただし、徐々に減らして症状がコントロールできる最少の量にまで減らすべし。経験上、限られた期間、耐用できる範囲の量でステロイドを使用することで、抗リウマチ剤を使用しなくてもよくなるかもしれない。ReAに対する全身性ステロイドRCTはない。
 
Resistant to NSAIDs and glucocorticoids抗リウマチ剤の治療は初期治療に十分に反応しない患者に適応となる。抗リウマチ剤を開始するまでの期間は併存疾患や症状を緩和する量を考慮したうえで、疾患活動性やNSAIDsステロイドのリスク・ベネフィットの関係にもよって異なる。私たちは通常少なくとも二種類のNSAIDs4週間治療しても十分反応しない患者、およびプレドニゾン7.5mg相当量以上を3-6ヶ月以上要するに抗リウマチ剤を使用する。
 
Chronic reactive arthritis私たちは通常6カ月以上の関節炎の持続で定義される、難治性ReAの患者や急性関節炎に対しNSAIDsステロイドによる初期治療に抵抗する患者には、nonbiologic DMARD(生物製剤でない抗リウマチ剤)、通常スルファサラジン(SSZ)、そうでない場合はメトトレキサート(MTX)を使う。これらに抵抗性の患者にはTNF阻害薬を使う。ReAにこれらの薬剤を使うことの根拠は限られたデータと臨床経験に基づく。
 
Nonbiologic DMARD use
Sulfasalazine難治性のReAの患者や急性関節炎の初期治療に抵抗するReAの患者にはSSZを提案する。500mg11回より開始し、毎週500mgずつ1000mg2回まで増量する。最大投与量は13000mgで、必要であれば2-3回に分ける。
ReASSZを用いる根拠はまずはReAにおけるひとつのRCTであり、さらには強直性脊椎炎や乾癬性関節炎の患者におけるプラセボコントロールRCTとそれらのメタ解析、RAにおけるプラセボコントロールRCTやその他のnonbiologic DMARDと比較したRCTである。私たちがMTXよりもSSZを好む理由は乾癬性関節炎を含む末梢性SpAの患者においてより良い効果が報告されているからである。
SSZの利益はNSAIDsに十分に反応しなかった慢性ReA患者134例を対象とした36週間のRCTによって示唆される。反応は複合的な指標で定義され、それには患者の自己評価、医師の評価、関節痛・圧痛、関節腫脹の改善が含まれた。Primary outcomeSSZに利益がある傾向を示したが有意ではなかった。しかし、もし差があれば臨床上有意義なものかもしれなかった。SSZは軽度の消化管の副作用も見られたが、よく耐用された。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8961907
一般にSSZを中止しなければならないようなコモンな副作用は消化管障害であるが、中枢神経障害、皮疹、その他の稀な副作用も起きるかもしれない。
 
Methotrexate — SSZにアレルギーがあったり耐用できない患者、SSZに反応しない患者にはMTXが代賛のnonbiologic DMARDとして使えるかもしれない。しかし、MTXReAにおいて正式には研究されていない。さらに、ASの軸関節に対してはMTXを支持するエビデンスは足りない。たとえ、臨床経験上、そのような患者の末梢性関節炎には効果があったとしても。
MTXの使用は乾癬性関節炎などの末梢性SpAにおける臨床上の経験、およびRAにおけるRCTとメタ解析のエビデンスに基づく。私たちはReAに対しては乾癬性関節炎、RAに用いるのと同じように用いる(15-25mgを週に1回)。
 
Duration of therapy — nonbiologic DMARDは反応するかどうかを見極めるため、SSZなら4ヶ月、MTXなら3ヶ月は少なくとも、耐用できる最大の量で使用する(SSZなら3g/日まで、MTXなら25mg/週まで)。患者が臨床所見と症状が消失する寛解状態に入って3-6ヶ月後に中止をする。最初の抗リウマチ剤に反応しない患者もいるかもしれないが、私たちの経験上そういう場合でも別な抗リウマチ剤に反応するかもしれない;しかし、二番目のnonbiologic DMARDを用いるべきなのか、生物学的製剤に直接移行するべきなのかはちゃんと評価されていない。もし再発すれば、以前有効であった薬を再開している。
 
Resistant to nonbiologic DMARDs — NSAIDsステロイドに反応しない場合やSSZMTXが禁忌の患者にはTNF阻害薬を用いる(エタナセプト皮下注射50mg/週、インフリキシマブ3-5mg/kg0,2,6週後、以降8週おきの投与)。最初のTNF阻害薬をを3ヶ月投与しても反応しない患者には別のTNF阻害薬を用いてもよい。TNF阻害薬で少なくとも3ヶ月寛解が続く患者には中止する努力をする。しかし、疾患が再発すれば再開すべし。ReAに対するTNF阻害薬の使用は症例報告や小規模シリーズによって支持される程度である。SSZ, MTX以外のnonbiologic or biologic DMARDsを使用せず、TNF阻害薬を使用することの根拠は臨床経験、および軸性・末梢性SpA、多様な型の乾癬性関節炎を含むその他のSpAの型における効果に基づく。
TNF阻害薬をReAに使用するエビデンスとして以下の例がある。
ReA7例、分類不能SpA9例がエタナセプトで6ヶ月治療された;治療への反応(疼痛スコア、圧痛関節数、腫脹関節数で複合的にみた反応)は治療を6ヶ月続けることができた両群10例のうち9例で見られた。関節炎が悪化したり、根底にある感染症が悪化した患者はいなかった。
・フランスからの観察研究は1年以内に発症したReA10例におけるTNF阻害薬の効果と安全性を報告した。5例がInfliximab4例がEtanaercept1例がAdalimumabで治療された。10例中9例が圧痛・腫脹関節数、疼痛スコア、CRPの低下で定義される反応の基準を満たした。ステロイドを投与されていた8例全例が中央値4ヶ月の間に中止できた。6例が平均7.5ヶ月後にTNF阻害剤を中止できた;3例は中止後に再発し、再治療に反応した。
その他の慢性炎症性関節炎の治療法は乾癬性関節炎などのSpARAにおいて評価されているが、TNF阻害薬に抵抗性であった患者に関する研究はないl。二種類のTNF阻害薬を含む上述の治療法に抵抗する患者は非常に稀ではあるため、診断を見直した方がよい。
 
Treatment of other clinical features眼症状、粘膜皮膚症状などのいくつかの関節外症状は追加的な介入を要する。管理のアプローチはその他の疾患における患者におけるこれらの症状または似たような症状に対する治療、臨床的な経験に基づいている。
これらの介入はRCTで系統的に評価されていないし、ReAの患者における観察研究でも検討されていない。ReAに対する関節炎の治療や抗生剤治療の研究はほどんど、およびこの疾患のレビューでは、そのような治療法が関節外症状に有効かどうかは議論されていないし、治療の推奨も議論されていない。治療を要する関節外症状は以下の通り:
・眼症状―目の疼痛、視力障害、眼球の異常は眼科に紹介すべし。ぶどう膜炎があるかどうかを調べるためにスリットランプ検査が行われるかもしれない。
・皮膚・粘膜病変―皮膚症状がわずかであったり、目の潰瘍がわずかである患者は介入を要さないかもしれない。口腔粘膜潰瘍を有する患者には対症療法で十分かもしれない。ステロイドの局所投与が有効な患者もいる。
より症状があるような軽症から中等症の膿漏性角皮症は局所のステロイド投与が有効かもしれない。サリチレートの局所投与で治療できる皮疹もあるかもしれない。一般にこれらの皮膚病変に対する治療はその他の原因による掌蹠膿疱症に対するアプローチと非常に近い。
より重症の膿漏性角皮症、局所療法に反応しない膿疱性病変はMTXTNF阻害薬のような全身性DMARDsを要するかもしれない。利益があるかもしれないその他の治療に軽症から中等症に対する局所のビタミンDcalcipotriol/calcipotriene)、重症例に対するレチノイドがある。これらの皮膚所見、爪変化は乾癬の治療法と同様。
 
PROGNOSIS — ReAの臨床経過は様々であり、おそらくトリガーとなった病原体と患者の遺伝的な背景による。典型的な病気の期間は3-5ヶ月。ほとんどの患者が6-12ヶ月以内に完全に寛解するか、わずかな活動性を残す程度である。しかし、15-20%が慢性の持続性関節炎を呈するかもしれない。末梢性関節炎の寛解導入の後でも時には関節、付着部や脊椎に疼痛に気付かれるかもしれない。代表的な結果は以下の結果で示される:
EULARは発症2ヶ月以内のReA 152例について評価した。さらに24週間の観察期間が終わるまで、ほとんどの患者が医師・患者による全般評価で定義された疾患活動性は非常に低いものであった。
フィンランドにおいて、1年以上持続するReAYersinia, Salmonella, Shigella, ChlamydiaによるReAのうち4-19%であった。この慢性ReAに至る割合がその他の地域にも応用できるかどうかは分からない。
慢性ReAの患者のなかには乾癬性関節炎、強直性脊椎炎や炎症性腸疾患関連性関節炎のようなその他のSpAの型に移行するものもいる。HLA-B27の検査は予後が悪いことに関連するという報告もあるが、全てではない。それらの研究が示唆することはHLA-B27陽性の患者はよりX線変化を伴うような慢性SpAになりやすいということである。感染症後の関節炎、尿道炎、結膜炎の三徴候を呈する患者もより予後は悪いかもしれない。
 
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