リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

PMRのリコメンデーション (2015EULAR/ACR)

リウマチ性多発筋痛症(PMR)のリコメンデーションが報告されました。
 
もっとも勉強になったのは、運動プログラムの推奨でした。たしかに転倒、骨折しやすいですからね。
 
 
2015 Recommendations for the Management ofPolymyalgia Rheumatica: A European League Against Rheumatism/American Collegeof Rheumatology Collaborative Initiative.
Arthritis Rheumatol. 2015;67(10):2569-80.
Dejaco C, et al.
 
 
Box 1. Summary of the 2015 European LeagueAgainst Rheumatism (EULAR)/American College of Rheumatology (ACR)recommendations for the management of polymyalgia rheumatica (PMR)
 
 
Target population:
ターゲットとなる集団:
 
現在入手できる診断・分類基準に支持されるかもしれない臨床診断に基づくPMRを有する患者 (3,4,7–11).
 
Overarching principles for the management of PMR:
PMRの管理のための包括的指針:
 
A. PMRの定義を確かなものにするための安全で特異的なアプローチの導入。
臨床評価は(側頭動脈炎やRA、薬剤性、内分泌疾患、感染性疾患、悪性腫瘍関連疾患のような)関連性のある真似をする疾患の除外に向けられるべきだ。
 
B. PMRの患者は全て処方の前に以下の評価を受けるべきだ(初期対応においても二次的な対応においても):
 
・基本的な検査所見の記述。これによって真似をする病気の除外をするのに役立ち、治療のモニタリングのベースラインを築くのに役立つであろう。
これはRF and/or CCP抗体(ACPA)、CRP and/or ESR、血液検査、血糖、クレアチニン、肝機能、骨の検査(カルシウム、アルカリフォスファターゼを含む)、尿検査。考慮する追加検査は蛋白電気泳動TSH、クレアチニンキナーゼ、ビタミンD
 
・臨床所見と症状、その他の疾患の可能性によって、その他の疾患を除外するためにANAANCA結核の検査より広範囲な血清学的検査を追加が行われるであろう。医師の判断で胸部X線のような追加の検査をその他の診断を除外する目的で追加してもよい。
 
Smolen (21)Gossec (22)らが示したように、とくに高血圧、糖尿病、耐糖能異常、心血管系疾患、高脂血症、消化性潰瘍、骨粗鬆症[そして、最近の骨折]のような合併症の同定、白内障緑内障の存在、緑内障のリスクの存在、慢性・再発性の感染症NSAIDsの投与歴、その他の関連する投薬、ステロイド関連の副作用の危険因子。質が低いまたは中等度の質の研究において、女性はステロイドの副作用のリスクが高かった (23–25)
 
・再発と長期の治療の危険因子の役割は明らかでない。質が低いまたは中等度の質の研究において再発率が高いこと、and/orPMRの長期の治療に関連するベースラインの要素は:女性 (24,26)ESR高値(>40 mm/hour) (26–31)、末梢性の関節炎 (32)。一方で同じ程度に低いか中等度の質の多くの研究がこれらの要素と再発・長期治療との関連を示すことができなかった (27–30,32–44)
 
C. 専門医への紹介を考慮するのは以下。末梢性関節炎や全身症状、炎症マーカー低値、60歳未満のような典型的でないケース、治療関連の副作用の経験やそのリスクが高いこと、ステロイドに抵抗性のPMRand/or再発性・長期の治療。
 
D. PMRの患者の治療は最善のケアを目的とし、患者と治療する医師との共有された決定に基づかなければならない。
 
E. 患者は個々のPMRの管理のプランを持つべきである。患者の考えと好みを最初のステロイド投与量の選択と漸減の仕方において考慮されるべきである。
 
F. 患者はPMRと治療の影響に焦点を当てた教育の機会を得るべきである(合併症や疾患の予測因子)。ここに応じた運動プログラムについてアドバイスを得るべきである。
 
G. 一次的または二次的ケアにおいてPMRの治療を受ける患者全てが以下の評価項目についてモニターされるべきだ:ステロイドに関連する副作用の危険因子・証拠、合併症、その他の関連する投薬、再発・長期治療の証拠と危険因子。ステロイドを処方する間は最低限の臨床的・ラボ的なセットを継続するべきだ。フォロー期間の提案は最初の1年は4-8週間、2年目は8-12週間。再発例であることやプレドニゾロンの漸減・中止に応じる。Follow-upvisits are suggested every 4–8 weeks in the first year, every 8–12 weeks in thesecond year, and as indicated in case of relapse or as prednisone is taperedand discontinued.
 
H. 患者にとって医師や看護師あるいはトレーニングを受けた連携のあるヘルスケア・スタッフからの助言に素早く直接的にアクセスできることは大切だ。再燃や副作用のような彼らの状況の変化を報告するために。
 
Specific recommendations for the managementof PMR patients:
PMR患者の管理における特異的な推奨:
 
1. 委員会はPMR患者にNSAIDsの代わりにステロイドを強く推奨する。その他に関連した疼痛を有するPMR患者にできるだけ短期でNSAIDs and/ or鎮痛剤を使用することは例外である。鎮痛剤について特異的な推奨はできない。
 
2. 委員会はPMR患者に個々に応じ有効で最小限のステロイド治療を強く勧める。
 
3. 委員会はPMRの初期治療としてプレドニゾン12.5-25mgの範囲で、有効な最小限のステロイド量を用いることを条件付きで勧める。より高用量の初期量は再発のリスクが高い患者で副作用のリスクが少ない患者には考慮されてもよい。一方、糖尿病、骨粗鬆症緑内障のような関連する合併症、その他のステロイドに関連する副作用を有する患者にはより少ない量が好まれるかもしれない。委員会は7.5mg以下の初期量は勧めない。そして30mgを超える高用量の初期量の使用は強く反対する。
 
4. 委員会は定期的な疾患活動性、ラボ、副作用のモニタリングを前提として個々に応じた投与量の漸減のスケジュールを勧める。以下のステロイド減量の指針が提案される:
A. 初期の減量: 4-8週間以内にPSN10mg/日に減量する。
B. 再発の治療: PSNを再発前の投与量に増量し、4-8週間かけて緩徐に再発が起きた量まで減量する。
C. 一旦寛解した時の減量(初期治療、再発の治療においても): 毎日のPSN4週間毎に1mgずつ寛解が維持されている限り中止できるまで減量する(あるいは10mg/7.5mgのような隔日スケジュールを用いて1.25mgずつ)。
 
5. 委員会は条件付きでメチルプレドニゾロンの筋注を経口ステロイドの代賛として勧める。経口ステロイドとメチルプレドニゾロンの筋注の選択は治療する医師の決定に基づくままである。ある臨床研究ではメチルプレドニゾロン120mgで開始す、3週間毎に継続するという方法が用いられた (23)
 
6. 委員会は条件付きでPMRの治療において経口ステロイドを分割ではなく単回投与で用いる事を勧める。ステロイド漸減中にPSN5mg相当の低用量より低い投与量でステロイドを漸減する間、夜間に著名な疼痛があるような特別な状況を除く。
 
7. 委員会は条件付きでMTXのステロイドへの早期の併用を考慮することを勧める。とくに再発an/or長期の治療のリスクが高い患者。ステロイド関連の副作用が起きやすい危険因子・合併症・併用薬を有する患者においても。MTXはステロイドへの反応が十分でない、あるいはステロイド関連の副作用を経験している再発性の患者のフォロー中に考慮してもよい。MTX臨床試験では7.5–10 mg/wの経口投与量で用いられている (24–27)
 
8. 委員会はTNF阻害薬をPMRの治療に用いることに強く反対する。
 
9. 委員会は条件付きでPMR患者の個々に応じた運動プログラムを考慮することを勧める。とくに長期のステロイド治療を受けた高齢者、きゃしゃな患者において筋肉の量と身体機能を維持すること、転倒のリスクを減らすことを目的として。
 
10.委員会はPMR患者に中国の漢方薬Yanghe and Biqiカプセルを用いることに反対する。
 
 
(Figure 1)
 
イメージ 1
 
 
 

 

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