<Clinical scenario>
60代女性
多関節痛と結節性紅斑にて紹介された。
3週間前より両下腿にむくみと圧痛を伴う紅斑が出現。紅斑は4日ほど続いて消退傾向。
2週間前より肩、背中~腰、臀部~大腿の疼痛が出現。両肘の疼痛、左第3MCP、両MTP、両踵の痛みがあり、足をつけない位痛く、寝て過ごすことが多かった。痛みは朝が強かった。
初診時すでに、関節痛は消退しており、1週間前より改善傾向にあるとのこと。
診察上、薄くなりつつある紅斑、アキレス腱付着部あたりの圧痛とわずかな腫脹を認めるのみであった。
左後頚部に2-3cmのリンパ節腫脹を認めた。
(症例は架空です)
< 疑問、発生!>
結核による反応性関節炎、Poncet's diseaseについて勉強しよう。
<Pubmed>
稀な病気なので、最初からPubmedで調べます。
PubmedでPoncet’s diseaseを検索し、Englishでlimlitsすると50件
さらに、Reviewで絞って6件ヒットします。
1. Clinical features of Poncet's disease. From the description of 198 cases found in the literature.
Clin Rheumatol. 2013 Jul;32(7):929-35.
2. Poncet's disease (reactive arthritis associated with tuberculosis): retrospective case series and review of literature.
Clin Rheumatol. 2012 Oct;31(10):1521-8. doi: 10.1007/s10067-012-2042-0. Epub 2012 Aug 2.
3. Poncet's disease: reactive arthritis accompanying tuberculosis. Two case reports and a review of the literature.
Rheumatology (Oxford). 2007 Mar;46(3):484-9.
2、3は以前読んでいましたが、Literature reviewとは当然新しいものがよいのです。
この度は1をまとめてみました。
Introduction
・結核の1-3%、肺外結核の10-11%が関節と骨を侵す。約半数は脊椎結核、ついで結核性関節炎、結核性骨髄炎、結核性指炎、そして反応性関節炎。最後の反応性関節炎は膀胱癌の補助的な結核治療に関連するものと、Poncet病に分けられる。
Clinical characteristics
・自験例を含め199例。
・男女比42.2% vs 39.2%(=ほぼ1:1)。平均年齢は33.7歳(範囲2-78歳)
・インド35%、ブラジル13.1%、メキシコ10.1%、イギリス6%、、、日本1.5%(たったの3例)、、
・侵される関節は足(63.3%)、膝(58.8%)、手(29.1%)、肘(23.1%)。
・少数関節炎41.6%、多関節炎27.6%、単関節炎24.6%
・関節炎が改善するまでの期間は抗結核剤を開始されて平均51.6日(SD±37.6日)
・PDは足、膝、手、肘のような大きな関節を主に侵す少数関節炎で軸の関節を侵さない。関節外症状はなく、結節性紅斑が見られることは稀。
Pathogenesis
・いくつかの著者がPDの患者にHLA-DR3, DR4があると報告している。一方で、メキシコのPD16例においてHLA-B27とHLA-DQB1*0301 allelesの頻度が一般人口より高かったとするものもある。この度の研究ではHLA-B27を検索された15例のうち4例(26.6%)が陽性。
Reactive arthritis and Poncet’s disease
・ReAとは古典的にはHLA-B27に関連し、クラミジア、エルシニア、サルモネラ、赤痢、カンピロバクター、クロストリジウムによってトリガーされる関節炎。しかし、その他の感染症はHLA-B27と明らかな関連をもたない事が分かっており、ボレリア、ブルセラ、ヘモフィルス、Hafnia、レプトスピラ、ナイセリア、ぶどう球菌、連鎖球菌、Ureaplasma、ビブリオ、そして結核が含まれる。
・HLA-B27と関連をもたないため、古典的でないReAの臨床像は慢性経過になりにくいこと、軸の関節炎がないこと、関節外症状が少ないこと。Toivaneはトリガーする微生物によってHLA-B27関連と非関連の二つに分けられると述べた。この度の解析によってPoncet’s diseaseはこの両方の特徴を有する。
・早期の病院ベースの研究ではHLA-B27のReAにおける頻度が60-90%であると報告した。しかし、より最近のアウトブレイクに基づく研究と一般人口に基づく調査によると、HLA-B27の頻度はわずかに上昇しているか、上昇していないとされた。そういう理由でHLA-B27を検査することに疑問を持っている著者もいる。
・ReAについての議論はあるが、PDの特徴はHLA-B27に関連しないReAにより似ており、軸の関節炎がなく、慢性になりにくく、関節外症状に乏しく、抗生剤によって改善する。その一方でメキシコの研究ではHLA-B27との関連性があった。
Table 3
HLA-B27関連ReA | HLA-B27非関連ReA | Poncet病 |
トリガー | Chlamydia, Campylo., | Vibrio, Borrelia, Brucel., | Mycobacteria |
Clostrid., Salmonel., | Haemophilus, Hafnia, | ||
Shigella, Yersinia | Leptospira, Neisseria, | ||
Staphylo., Strep. | |||
発症時の経過 | 週単位 | 週単位 | 週単位 |
好発する関節 | 膝、足 | 膝 | 膝、足 |
関節炎 | 少数関節炎 | 多関節炎 | 少数関節炎 |
HLA | B27 | B27、DQB1 | |
関節外症状 | Yes | Not frequent | No |
慢性経過 | Yes | No | No |
軸の関節症 | Yes | No | No |
抗生剤改善 | No | Yes | Yes |
<Scenario caseの経過>
初診後、関節痛、紅斑は消失し、以降これらは出現しなかった。