65歳男性、胸鎖関節の化膿性関節炎を経験しました。
※ 胸鎖関節の化膿性関節炎 (1/2)
<Uptodateの孫引き>
[29] Medicine (Baltimore).2004 May;83(3):139-48.
Sternoclavicularseptic arthritis: review of 180 cases.
Ross JJ,Shamsuddin H.
~ つづき ~
RiskFactors
危険因子をTable3に示す。最もコモンな危険因子はIVdrug user (21%)であり、次いで離れた部医の感染症(15%)、糖尿病(13%)、外傷(12%)、中心静脈ルートの感染(9%)。非連続性のフォーカスを有する25例のうち、10例が肺炎、8例が蜂窩織炎、3例が心内膜炎を呈した。尿路感染からの敗血症、化膿性の肺塞栓、特発性細菌性腹膜炎、硬膜外膿瘍、腹腔内膿瘍、歯肉炎、播種性結核が1例ずつ;2例が関節外の感染症を有した。23%の患者では基礎疾患はなかった。
Table 3 胸鎖関節の化膿性関節炎168例における危険因子 | ||
危険因子 | 患者数 | (%) |
なし・健康 | 38 | (23) |
IV drug user | 36 | (21) |
遠隔部位の感染症 | 25 | (15) |
糖尿病 | 22 | (13) |
外傷 | 20 | (12) |
中心静脈ルートの感染 | 15 | (9) |
慢性腎不全 | 13 | (8) |
アルコール依存症 | 10 | (6) |
ステロイド | 7 | (4) |
HIV感染症 | 7 | (4) |
悪性腫瘍 | 7 | (4) |
肝硬変 | 6 | (4) |
Miscellaneous | 29 | (17) |
Bacteriology
胸鎖関節の化膿性関節炎において検出された病因菌がTable4にリストされている。ブドウ球菌が49%の症例の原因、緑膿菌10%、ブルセラ・メリテンシス(マルタ熱菌)7%、大腸菌5%。感受性試験を行われたブドウ球菌80菌のうち6菌がMRSAであり、このうち2例がCommunityacquired (Cases 6 and 8 fromTable 1)。
1981年より前はIVdrug user の胸鎖関節の化膿性関節炎11例中9例 (82%)が緑膿菌だった。しかし、1981年以降はIV drug userの22例中17例(77%)がブドウ球菌であり、緑膿菌は22例中3例のみ(14%)であった。(カンジダ・アルビカンス、肺炎球菌が1例ずつ)。ブドウ球菌はHIV患者の7例中4例 (57%)の原因でもあった。
Table 4. 胸鎖関節の化膿性関節炎176例における菌 | ||
Staphylococcus aureus | 86 | (49) |
Pseudomonas aeruginosa | 18 | (10) |
Brucella melitensis | 13 | (7) |
Escherichia coli | 8 | (5) |
Group B streptococcus | 6 | (3) |
Mycobacterium tuberculosis | 6 | (3) |
Polymicrobial | 6 | (3) |
Streptococcus NOS* | 5 | (3) |
Streptococcus pneumoniae | 4 | (2) |
Anaerobes | 2 | (1) |
Group A streptococcus | 2 | (1) |
Haemophilus influenzae type b | 2 | (1) |
Group G streptococcus | 2 | (1) |
Streptococcus milleri group | 2 | (1) |
Neisseria gonorrhoeae | 2 | (1) |
Other enteric Gram-negative rodsy | 5 | (3) |
Miscellaneous | 7 | (4) |
TreatmentandOutcome
手術が174例中102例で行われた。この102例中48例において壊死した骨と軟部組織の限局的なデブリードマンのみで十分であった。54例ではより広範囲なデブリードマン、胸骨柄(胸骨の最上部)の半分までの切除と鎖骨の内側3分の1の切除による胸鎖関節の全摘出が行われた。いくつかの患者は第1,2肋骨の軟骨部の切除を行われた。胸鎖関節の全摘出術を行われた54例中13例が過去に限局的なデブリードマンを行われ改善しなかったためにその手術に至った。
内科的に治療され奏功しなかった11例は抗生剤6-90日の投与後に手術を受けた。結核の症例を除外すると、手術を受けなかった患者の抗生剤の平均投与期間は41日、手術を受けた患者では52日であった。この違いは手術を受けた群に骨髄炎や縦隔炎のような合併症が多かったことを反映したものである。
<胸鎖関節炎180例のレビューまとめ>
・男性(73%)。症状は胸痛(78%)、肩の疼痛(24%)、胸鎖関節の疼痛・腫脹(4%)。
・胸鎖関節は右側57%、左側39%、両側性5%。多関節性化膿性関節炎21%。
・合併症は菌血症(62%)、骨髄炎(56%)、膿瘍(25%)、縦隔炎(13%)。
<Clinical scenarioの経過>
禁酒の指導をした。
CT、MRIにて骨髄炎や縦隔炎などの合併症を認めなかった。
ペニシリン系抗生剤にて治療を開始した。