Molina 2023
Background 多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症(EGPA)は、しばしばグルココルチコイド依存性の喘息や耳鼻咽喉(ENT)症状を伴う。 免疫抑制剤および/またはメポリズマブが無効な場合、デュピルマブが選択肢となりうる。 再発性および/または難治性EGPAにおけるデュピルマブの適応外使用の安全性と有効性について述べる。
Patients and methods デュピルマブ治療を受けたEGPA患者の多施設観察研究を実施した。 完全奏効はバーミンガム血管炎活動性スコア(BVAS)=0かつプレドニゾン投与量≦4mg/日、部分奏効はBVAS=0かつプレドニゾン投与量>4mg/日で定義した。 好酸球増多は好酸球数500/mm3以上と定義した。
Results 51例が組み入れられた。 デュピルマブの主な適応は、92%の患者が耳鼻咽喉科的症状であった。 追跡期間中央値13.1ヵ月後、18例(35%)が有害事象(AE)を報告し、うち2例が重篤なAEであった。 好酸球増多は34例(67%)で報告され、ピークは13週(IQR 4-36)で2195/mm3(IQR 1268-4501)であった。 CRは21例(41%)、PRは12例(24%)であった。 16例(31%)がデュピルマブ投与中にEGPA再発を経験し、14/16例(88%)で血中好酸球増加と関連していた。 デュピルマブ投与開始時の好酸球数の中央値は、非再発例に比べて再発例で有意に低く、抗IL-5/IL-5Rを中止してからデュピルマブに切り替えるまでの期間の中央値も同様であった。
Discussion 以上の結果から、デュピルマブはEGPAに関連した耳鼻咽喉科症状を有する患者の治療に有効である可能性が示唆された。 しかしながら、EGPAの再燃は患者の3分の1で発生し、88%で好酸球増多が先行したことから、注意が必要であることが示唆された。
Patients and Methods
Patients 我々は、ACR分類基準を満たし、再発性または難治性のEGPAに対してDupilumabを投与されたEGPA患者を対象に、欧州の多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。 Relapsing diseaseは、Birmingham Vasculitis Activity Score(BVAS>0)、活動性の喘息症状、または経口GCの増量を要する副鼻腔症状の悪化と定義した。 難治性疾患は、PSNの漸減中に活動性疾患のためにGCを7.5mg/日以下に減量できない場合と定義。
Assessments of clinical characteristics 臨床的および生物学的データは、標準化された症例報告書を用いて、EGPA診断時、治療前、Dupilumab投与開始時、およびフォロー期間中にレトロスペクティブに収集した。 臨床的および生物学的評価には、BVAS version 3を用いた疾患発現の評価20、好酸球数、CRPおよび血清Crの測定、ANCA力価および特異性、血尿および蛋白尿のスクリーニングのための尿分析、強制呼気1秒量(FEV1)およびFEV1/FVC、ならびに治療内容が含まれ、0日目および15日目、1カ月目、3カ月目および6カ月目、そしてその後6カ月ごとに、最終フォローアップまで行われた。 最後に、再発とAEに関するデータを収集した。 好酸球増多は、Eos>500/mm3以上と定義。
Response to therapy 臨床効果は、血管炎症状、喘息および耳鼻咽喉科症状、プレドニゾン投与量の変化の経過を分析することにより定義した。 CRは、喘息、耳鼻咽喉科および血管炎の症状がなく(BVASが0)、プレドニゾン相当量が4mg/日以下であることと定義した。 PRは、喘息、耳鼻咽喉科および血管炎の症状がなく(BVASが0)、プレドニゾン相当量が4mg/日以上と定義された。 デュピルマブ投与中の全身性再発は、活動性疾患に起因する呼吸器外症状の再発または新たな発症と定義し、BVAS項目に含めた。
Results
Patient characteristics

51例が登録され、年齢は中央値52歳(IQR 45-57)、57%が女性。全例EGPA診断時に喘息を有し、98%がEos>1000。患者の特徴と治療歴はTable 1のとおり。Dupilumabは主に3rd lineで使用された。33例(65%)が少なくとも一つの抗IL5/IL5R抗体療法を受けていた;Mepolizumabが26例(51%)、Benralizumab 16例(31%)、resulizumab1例(2%)。


Dupilumab開始時のEGPAの特徴と併用薬はTable 2に示す。Dupilumabの適応は耳鼻咽喉科的症状47例(92%)、高用量GC依存症29例(57%)、コントロール不良の喘息27例(53%)であった。 Dupilumabは、MTX(n=5)、AZ(n=3)、MMF(n=1)を含む9例で免疫抑制剤と併用投与された。
Table 2

Safety of dupilumab
頭痛(n=4)、注射部位反応(n=3)、筋肉痛(n=3)、関節痛(n=2)、インフルエンザ様症候群(n=2)、咳(n=1)、膀胱炎(n=1)、鼻炎(n=1)、結膜炎(n=1)、手指知覚異常(n=1)、乾癬増悪(n=1)など。 好酸球増多は34例(67%)で報告され、ピークのEosは 中央値2195/mm3(IQR 1268-4501)で、治療期間中央値13週間(IQR 4-36)後に発現した(Figure 2)。 好酸球増多は、14/34例(41%)では無症状であり、14例(41%)ではEGPAの再発に関連し、6例(18%)では医師の評価によりEGPAとは無関係の症状を伴っていた。 好酸球増多を発症した16例(47%)ではDupilumabが中止され、その内訳は症候性患者14例と無症候性であったが血中好酸球数が高値であったためデュピルマブを中止した患者2例であった。 好酸球増多を経験した34例のコホートのうち、16例はPSN量を減量したが、18例はPSNの投与量を安定に維持するか、PSNを全く服用しなかった。 また、好酸球増多の有無によるPSN減量の差は観察されなかった(データは示さず)。
Figure 2

Evolution of eosinophil count in patients treated with dupilumab. (A) The kinetics of eosinophil count in all patients (expressed as mean and SE of mean). (B) The kinetics of eosinophil count only in patients who experienced eosinophilia (expressed as median).
Efficacy of dupilumab
21例(41%)がCRを、12例(24%)がPRを示した。 14例(27%)はCRもPRも得られず、残りの4例は早期に治療を中止したため治療効果は評価できなかった。 PSN量の中央値はDupilumab投与開始時で8mg/日(5; 13.8)であり、1ヵ月後には5mg/日(2.5; 7.5)(0日目と比較してp=0.001)、3ヵ月後には5mg/日(0; 8)(0日目と比較してp=0.0003)、6ヵ月後には3.5mg/日(0;5)(0日目と比較してp=0.003)、12ヵ月後には2.5mg/日(0;5)(0日目と比較してp=0.04)であった(Figure 3A)。
PSNを完全に中止できた患者は8例のみであった。 BVAS中央値はDupilumab開始時で2であり、1ヵ月で0(0;2)(0日目と比較してp<0.0001)、3ヵ月で0(0;1)(0日目と比較してp<0.0001)、6ヵ月で0(0;2)(0日目と比較してp=0.001)、12ヵ月で0(0;1.5)(0日目と比較してp=0.01)に減少した(Figure 3B)。
FEV1中央値はDupilumab開始時85%(71;92)(25例でavailable)であったが、3ヵ月後92%(79;103)(14例でavailable)(0日目と比べp=0.04)、6ヵ月後90%(69;103)(15例)(0日目と比べp=0.04)、12ヵ月後79%(68;98)(8例)(0日目と比べp=0.64)に上昇した(Figure 3C)

フォロー期間中、16例(31%)の患者がDupilumab投与中にEGPAの再発を経験し、14/16例(88%)で血中好酸球増多を伴い、12/16例(75%)でDupilumabの投与中止に至った。 再発には、10例の全身性再燃が含まれ、全身症状(n=5)、関節痛(n=4)、肺病変(n=4)、筋肉痛(n=2)、鼻痂皮(n=2)、副鼻腔症状(n=2)、 耳炎(n=1)、糸球体腎炎(n=1)、心筋症(n=1)および胃腸病変(n=1)、喘息増悪5例、耳鼻咽喉科および喘息増悪1例であった。 重篤な症状(糸球体腎炎、心筋症、胃腸病変)は3人の患者に発現した。 血中好酸球増多を伴わずに再発した2人の患者には喘息の増悪がみられたが、全身性の再燃はみられなかった。 EGPAが再発したにもかかわらずDupilumabの投与を継続した4人の患者のうち、2人は免疫抑制剤の追加投与を開始し、1人はAZからMTXに変更し、残りの1人はDupilumabに加えBenralizumabの投与を開始した。 16例の再発患者のうち、12例(75%)はDupilumab開始前にMepolizumabまたはBenralizumabの投与を受けていたのに対し、非再発患者では21/35例(60%)であった。 しかし、Dupilumab投与開始時の好酸球数中央値は、再発例で非再発例より有意に低く(100(IQR 0-525) vs 410(IQR 86-1425)/mm3、p=0.019)、抗IL-5/IL-5Rを中止してからDupilumabに切り替えるまでの期間中央値も同様に少なかった(0.5(IQR 0-1.9) vs 4.7(IQR1.3-9)ヵ月、p=0.017)。