リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

血管内大型細胞リンパ腫 (Intravascular large cell lymphoma)

不明熱診療でもっともchallengingだと思っている疾患です。
 
同僚が診断したケース(DLBCL+Hemophagocytic lymphohistiocytosis)をはたから見ましたが、自分で診断をつけたことはありません。
 
いつかの日のためにまとめておきます。出典、いつものUptodate・・・
 
 
血管内大型細胞リンパ腫 Intravascular large cell lymphoma
 
Introduction
Intravascular large cell lymphoma (ILCL)は大細胞リンパ腫のまれなサブセットである。小血管、とくに毛細血管と後毛細血管の小静脈の内腔にリンパ腫細胞が浸潤することが特徴で、血管外の腫瘤形成を欠き、循環するリンパ腫細胞の検出されることもない。intravascular lymphomatosis, angiotropic large cell lymphoma, and malignant angioendotheliomatosisとも記述される。
・臨床像は様々で血管の閉塞による臓器不全に関連した症状を呈しやすい。とりわけ昔は診断は剖検でしか分からなかった。近年、適切な検査でILCLの認知に重きが置かれるようになり、生存中に診断され、治療することが可能になってきている。
ILCLに関する情報は症例報告やシリーズからのものである。病理医と臨床医の専門委員会が国際節外リンパ腫研究グループのスポンサーのもと開催され、実践的なガイドラインを提唱した。
 
Epidemiology
ILCLは稀であり、発生率は不明。年齢の中央値は60-70台。男女差なし。
 
Clinical presentation(アジア人優先で訳しました)
Symptom
・発熱、寝汗、体重減少のB症状(55-85%)、神経学的(27%)、皮膚(15%)など。
・病変は骨髄(75%)脾臓(67%)、肝臓(55%)。組織球とTリンパ球の増加によって血球貪食症候群もある。
皮膚に限局するILCLcutaneous variant;このタイプは西欧(24%)Asia (3%)。ほとんどが若い女性でPSよい。通常結節やプラーク、丘疹で色調は赤~青黒い。下腿35%、大腿41%体幹31%。毛細血管拡張、浮腫、疼痛もよく合併するため、血栓性静脈炎や結節性紅斑のような炎症性皮膚疾患との区別が難しい。
 
Laboratory studies
LDH+β2MG(80-90%)
貧血(65%)
Plt(76%)
ESR(43%)
Alb(84%)
M蛋白(14%)
 
Pathology
病理学的に毛細血管・後毛細血管の小静脈に入っている腫瘍性リンパ系細胞を認める。悪性細胞は髄液や末梢血に認められることは稀;骨髄病変は地図状で様々。そのほかの大細胞リンパ腫と同様、形態学も様々;大型細胞であることがほとんどで、水泡性の核と目立った核小体を有する。細胞分裂がよく見られる。Ki-67は増殖の活性が高いことを意味する。免疫表現型は通常成熟B細胞(ILBL)と同等;そのようなケースはDLBCLintravascular variantとも考えられる。ILCLの稀なタイプはT cell or NK cell由来。血球貪食に関連する亜型はEBV感染に陽性である。皮膚では血管内のリンパ腫細胞は小リンパ球・形質細胞の反応性増殖を合併している。血管内のリンパ腫細胞はごくわずかであり、皮膚・皮下組織のいかなるレベルでも見られうる。
 
Diagnosis
診断は小~中等度の大きさの血管内において大型のリンパ腫細胞を証明することによる。この病気を疑ったら、病変のある皮膚の生検or正常な皮膚の部位におけるランダム皮膚生検を行う。ILCLが存在する血管は皮下脂肪にあるため、生検時には皮下組織を含めることが重要。皮膚生検で診断がつかない時、病変が疑われるその他の部位を生検をしてもよい。たとえば、肝(原因不明の肝障害)、肺(原因不明の呼吸器症状)、脳(原因不明の認知障害)の生検が診断的であったという症例報告がある。intravascular large B-cell lymphoma (ILBL)T- or NK-cell系の稀なタイプと区別するために、血管内のリンパ腫細胞の免疫表現型を同定することが必要となる。
その他のリンパ腫の型においてコモンであるが、骨髄、リンパ節、末梢血、髄液はILCLでは侵されないことが多い。これらの部位に及ぶ病変は非常にわずかであり、CD20のようなリンパ系マーカーによる染色は形態学的には見逃すような、小血管内のわずかな腫瘍細胞の存在を明らかにするかもしれない。上述のとおり、ILCLのいわゆるAsian variantでは骨髄病変はコモンである。
 
Differential diagnosis
時に活性化したリンパ球の群れが炎症や免疫反応で障害された組織の後毛細血管の小静脈のなかに見られるかもしれない。とくにリンパ節がそう。形態学的な検索だけではILCLの局所の浸潤と区別することは難しい。しかし、ほとんどのILCL患者において全身症状、検査異常、臓器不全の所見を認め、典型的には全ての患者が節外の器官における広範な血管内病変に関連しているため、臨床・病理学的に診断がつく。関節リウマチに合併する、リンパ管内の組織球増加がILCLと同様の病変を呈することがあり、大細胞の血管内での増殖を伴ってもよい。しかし、血管内増殖がCD68陽性であることから区別される。病変が及ぶ血管はリンパ管であり、podoplaninで染まる。
 
Pretreatment evaluation
治療前の評価は疾患の範囲を決め、治療選択に影響を与えやすい患者の併存疾患に関する情報を与える。一般に治療前の評価はDLBCLと同じ。Intravascular large B-cell lymphomaは効率に中枢神経病変を伴う。それに対して私たちは中枢神経の評価として腰椎穿刺と脳MRIを行う。