リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ビタミンD3は死亡を減らす

ビタミンDに関して、LancetCochraneからメタ解析が出ました。
 
骨折の予防だけではなく、さまざまな病気or死亡に対して予防できるかを検証しています。
 
Cochraneによると、ビタミンD3を150人を5年以上治療すると、ひとつの死亡を予防するそうです。
 
ビタミンDはD2(エルゴ・カルシフェロール)とD3(コレ・カルシフェロール)に分かれます。
 
D3とは動物性のビタミンDのことのようでして、おそらくサプリとして売っているのだと思います。
 
一方、活性型ビタミンD3製剤である、αカルシドールとカルシトリオールはともに高カルシウム血症を増やしました。よく処方される割に、カルシウムをチェックされていることは稀です。気をつけましょうね。
 
 
1)ビタミンD骨格・非骨格系の病気を一般人口において15%減らさない。
 
The effect of vitamin D supplementation on skeletal, vascular, or cancer outcomes: a trial sequential meta-analysis
Mark J Bolland, Andrew Grey, Greg D Gamble, Ian R Reid
Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 Apr;2(4):307-20.
骨格系、血管系、悪性疾患の結果においてビタミンD補充は効果があるか?;試験的連続的メタ解析
 
Summary
Background
ビタミンD欠乏は多くの疾患に関連する。結果としてその補充が幅広く提唱されている。ビタミンDの疾患における効果を検証する上で、臨床研究がまだ足らないと提案する研究者もいる。
 
Methods
私たちは今後の臨床試験に少しでも影響する可能性があるか調査するため、現存するビタミンD補充におけるRCTの試験的連続的メタ解析を行った。カルシウムの併用は問わなかった。私たちはビタミンD補充が心筋梗塞や虚血性心疾患、脳卒中や脳血管疾患、癌、全ての骨折、股関節の骨折、死亡に対して効果があるか評価した。死亡に対しては5%以上、その他のエンドポイントについては15%以上のリスクの減少があるかを連続的に解析した。
 
Findings
・カルシウム併用を問わず、ビタミンD補充があるかを以下の疾患で評価したが、いずれも有益とは言えない境界線のなかに留まった。すなわち、ビタミンD補充はこれらのエンドポイントの相対リスクを15%以上変化させない。
 心筋梗塞or虚血性心疾患(nine trials, 48 647 patients
 脳卒中or脳血管疾患(eight trials 46 431 patients
 癌(seven trials, 48 167 patients
 全ての骨折(22 trials, 76 497 patients
・ビタミンD補充だけでは股関節骨折を15%以上減らさなかった(12 trials, 27 834 patients)。
カルシウムを併用してビタミンDを補充すれば病院受診者においては股関節骨折を15%以上減らしたが(two trials, 3853 patients)、一般人口においては15%以上減らさなかった(seven trials, 46 237 patients)。
・カルシウム併用を併用してもしなくても死亡のリスクを減らすことはなかった(38 trials, 81 173)。
 
Interpretation
この度の結果から、ビタミンD補充はカルシウム併用をとわず、骨格・非骨格系の病気を一般人口において15%減らさないことが示唆された。今後の同様のデザインの試験はこの度の結論をかえそうにない。
 
 
2)ビタミンD3は一般人口or施設入所中の高齢者の死亡を減らすようだ。
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jan 10;1:CD007470. [Epub ahead of print]
Vitamin D supplementation for prevention of mortality in adults.
Bjelakovic G, Gluud LL, Nikolova D, Whitfield K, Wetterslev J, Simonetti RG, Bjelakovic M, Gluud C.
 
Abstract
BACKGROUND:
ビタミンDの死亡に対する効果に関して、入手可能なエビデンスは結論的ではない。最近のシステマティックレビューにおいて、私たちはビタミンD3がほとんどが高齢女性の集団において死亡を減少させるかもしれないことを見つけた。このシステマティックレビューによってビタミンD補充の一次予防、二次予防としての効果と害をアップデートし、再評価する。
 
OBJECTIVES:
健康な成人や疾患の安定期にある成人の死亡に対して、ビタミンD補充が利益や害があるかを評価すること。
 
SEARCH METHODS:
私たちはコクランライブラリー、MEDLINE, EMBASE, LILACS, the Science Citation Index-Expanded and Conference Proceedings Citation Index-Science (全て、20122月まで)を調べた。そこに含まれる試験の参考文献、および特定されない関連する試験の製薬会社をチェックした。
 
SELECTION CRITERIA:
成人において任意のタイプのビタミンDを任意の投与量・期間、投与された群とプラセボまたは非介入群を比較したRCTであること。参加者は一般人口でも安定期にある疾患を有する患者とした。ビタミンDvitamin D3 (cholecalciferol) or vitamin D2 (ergocalciferol)) or 活性型vitamin D (1α-hydroxyvitamin D (alfacalcidol) or 1,25-dihydroxyvitamin D (calcitriol))のいずれも良いこととした。
 
DATA COLLECTION AND ANALYSIS:
レビューの著者6名が独立してデータを抽出した。Random-effects and fixed-effect meta-analyses were conducted.二つのアウトカムのために、リスク比risk ratios (RRs)を計算した。ゼロイベントの試験を説明するため、リスク差(risk differences, RDs)と経験に基づいた連続修正を用いた二つのデータのメタ解析を行った。私たちは出版されたデータと試験の著者にコンタクトをとり入手したデータを用いた。システマチックエラーのリスクを最小限にするため、私たちは含んだ臨床試験のバイアスのリスクを評価した。予備的な連続的解析によって、メタ解析の積算によって生じうるランダムエラーをコントロールした。
 
MAIN RESULTS:
・私たちは159RCTを見つけた。94の試験は死亡がゼロであった。9の試験は死亡の報告をしていたが、どちらのグループで死亡が起きたのかを記載していなかった。したがって、56RCT95286の参加者より死亡に関して使用できるデータが提供された。
・参加者の年齢は18-107歳。ほとんどの試験が70歳より高齢の女性を対象としていた。女性の割合は平均77%48の試験が09901の健常人を含んだ。このうち、4つの試験が健常人のボランティアを対象とし、9の研究が閉経後女性、35の試験が町に住む一般の高齢者や病院の受診者を対象とした。残りの8の試験は神経疾患、心血管疾患、呼吸器疾患またはリウマチ性疾患を有する参加者795例をランダムに割りつけた。
Vitamin Dは加重平均4.4年の間投与された。試験の半分以上がバイアスのリスクが低かった。全ての試験が高所得の国で行われた。45の試験(80%)が血清25-hydroxyvitamin Dの値によって、ベースラインのビタミンDの状態を報告した。19の試験における参加者はビタミンDが十分にあった(20ng/mL以上)。残りの26の試験の参加者はビタミンDが足りなかった(<20ng/mL)。
・ビタミンDは一緒に解析された56の試験全てにおいて死亡を減らした (5,920/47,472 (12.5%) vs 6,077/47,814 (12.7%); RR 0.97 (95%CI 0.94 to 0.99); P = 0.02; I2 = 0%). >8%の参加者が脱落した。'Worst-best case' and 'best-worst case' scenario の解析によると、vitamin Dは死亡の劇的な増加と減少に関連したかもしれない。
ビタミンD3のみが死亡を減らした (4,153/37,817 (11.0%) vs 4,340/38,110 (11.4%); RR 0.94 (95% CI 0.91 to 0.98); P = 0.002; I2 = 0%; 75,927 participants; 38 trials)。異なるタイプのビタミンDが別々に解析されたが。
 ビタミンD2αカルシドール、カルシトリオールは死亡に影響しなかった。バイアスのリスクが高い試験のサブグループ解析ではビタミンD2は死亡を増加させさえするかもしれないことを示唆した。しかし、これはランダムエラーによるものかもしれなかった。
・予備的な連続的解析はビタミンD3に関する私たちの結果を支持するものであった。すなわち、利益の境界の予備的連続的なモニターを壊す積算的Z-scoreは、150人を5年以上治療すればひとつの死亡を予防するというものであった。
・私たちは以下のいかなるサブグループ解析においてビタミンDの死亡における効果の違いに関して統計学的に有意な違いを見つけることはできなかった;バイアスのリスクが低い試験と高い試験を比較した場合、プラセボ群の試験をコントロール群として無介入の群を用いた試験と比べた場合、産業のバイアスがない試験を産業のバイアスがある試験と比較した場合、一次予防を評価した試験を二次予防を評価した試験と比較した場合、VitaminD<20ng/mLの対象者を含んだ試験を20以上の対象者を含んだ試験と比較した場合、歩行可能な対象者を含んだ試験を施設入所の患者を含んだ試験と比較した場合、カルシウム補充を併用した試験をしなかった試験と比較した場合、<800IU/日の投与量を>800IU/日と比較した場合、女性のみ含んだ試験を男女とも、または男性のみ含んだ試験と比較した場合。
・ビタミンD3は癌の死亡を有意に減らした (RR 0.88 (95% CI 0.78 to 0.98); P = 0.02; I2 = 0%; 44,492 participants; 4 trials)
・カルシウム併用のビタミンD3は腎結石を増やした (RR 1.17 (95% CI 1.02 to 1.34); P = 0.02; I2 = 0%; 42,876 participants; 4 trials)。
αカルシドールとカルシトリオールは高カルシウム血症を増やした (RR 3.18 (95% CI 1.17 to 8.68); P = 0.02; I2 = 17%; 710 participants; 3 trials)
 
AUTHORS' CONCLUSIONS:
ビタミンD3は一般人口or施設入所中の高齢者の死亡を減らすようである。ビタミンD2αカルシドールとカルシトリオールは死亡に有意に良い影響を与えなかった。カルシウム併用のビタミンD3は腎結石を増やした。αカルシドールとカルシトリオールはともに高カルシウム血症を増やした。参加者のかなりの脱落があることに起因するattrition biasのリスク、および死亡に関して報告していない試験が多いことによるoutcome reporting biasのリスクがあり、また私たちのエビデンスにはその他多くの欠点があるため、さらなるプラセボ比較の無作為化試験が必要であると思われる。