リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

リウマチ性疾患におけるCMV肺炎(1)

SLE加療中にサイトメガロウイルスCMV)肺炎を合併した症例を経験した。ステロイドパルス療法→高用量ステロイドに加え、シクロスポリンにて治療をし始めて、2ヶ月後の発症であった。びまん性のすりガラス状陰影を呈し、BALにて封入体を証明してから、バラガンシクロビルにて治療し改善した。
 
CMV肺炎はHIV領域、移植領域では研究がなされているが、リウマチ性疾患において診断、治療について述べられたレビューはない(知らない)。
 
この度、HIV領域、移植領域におけるCMV肺炎の診断についてのレビューをまとめた。
 
 
CMV infection as a cause of pulmonary disease in HIV-infected patients (Uptodate)
 
Introduction
CMVは臓器移植後の患者では重大な合併症、死亡をもたらす可能性があるが、HIV感染患者における肺病変の原因としての重要性はわかっていない。
 
Autopsy study
剖検の研究では75例中44例においてCMV感染の組織学的な証明が得られたが、その半分以上でCMVは呼吸不全の原因とは考えにくかった。ただし、44例中21例ではいくらかの役割があったと考えられた。6例では単一で検出された病因微生物であった。
 
Clinical study
重要な疑問は、CMVが剖検研究のケースよりも進行していないHIV感染症においても肺炎を起こすか否かである。ある研究はHIV関連CMV肺炎とHIV関連のニューモシスティス肺炎(PCP)を比較し、CMV肺炎はより低いCD4値(< 12 cells/mcl)を有する傾向があり、やはりCMV肺炎は進行したHIV感染症と重症の免疫不全患者にプライマリーに発症することが示唆された。
 
臨床では、CMVによる肺感染症の可能性は以下の一つ以上があれば上がる。
BALCMV-PCRまたは培養が陽性
BALにおけるCMV抗原の証明、または細胞診で見られる細胞変性変化(封入体のこと)
TBLBまたは外科的肺生検による肺炎とCMV感染に一致する細胞変性変化(封入体のこと)
 
BAL培養
BALの培養は剖検で診断されたCMV肺炎にたいし感度が低い(50%61%)。
 
特異度も低く、無症候性HIV感染患者のBAL培養は19例中9例(47%)で陽性であった。
 
BAL培養やPCRHIV感染患者のPCPのほとんどで陽性となるかもしれない。しかし、臨床上の後遺症がCMVによってもたらされるのかどうかは不明。たとえば、111例のAIDSの最初のPCP患者において、48%CMVBALより培養された。CMV培養陽性の患者と陰性の患者において、症状、長期予後、院内死亡、入院日数に差はなかった。
 
もう一つの研究では、BALCMV培養陽性であったPCP患者において短期の生命予後がよく、早期の酸素化の悪化の頻度が低かった。
 
Other specimens
BALの細胞診で封入体変化が見られることは培養やPCRよりも特異的であろう。しかし、封入体の証明がBALの培養と比べ、HIV感染やその他の疾患におけるCMV肺炎により良く相関することは証明されていない。
 
TBLBCMV肺炎により特異的なようではあるが、病変は斑に存在するため、感度は高くない。
 
Prognostic implications of pulmonary CMV
ことを暗示する。ある研究では、BALCMVが証明された74例の死亡率を、BALCMVが証明されなかった40例と比較した。CMV+の患者は3ヶ月後、6カ月後ともに死亡率が高かった(各々25% vs 10%50% vs 15%)。二つのグループにおける死亡率の違いはCD4低値やニューモシスティス感染症の有無では説明できなかった。
 
 
Effect of Treatment
HIV感染患者の肺炎でCMVが検出されたときに重大な疑問となるのが、抗CMV療法が予後を改善するかという問題である。HIV感染患者の肺炎でBALからCMVが検出される場合、抗CMV療法を行っても行わなくても変わらないという報告が優勢である。たとえば、98例のPCP患者における研究において、そのうち26例がCMVも陽性であった。26例中13例はPCPの治療に加え、抗ウイルス療法も受けたが、短期死亡率の改善は抗CMV療法からは得られなかった。
 
その一方、確立された効果とは言えないが、CMV肺炎と仮定される患者において治療の利益があるとするいくつかの報告がある。たとえば、ある研究は精査にてCMV以外の病原が検出されなかった、CMV肺炎の8例の経過を報告した。治療されなかった3例は呼吸不全で死亡し、剖検でCMV肺炎が確認された。治療された5例は改善を示し、3ヶ月後には全例が無症状になった。5例中2例は治療開始から6カ月以内に他の日和見感染症で死亡した。
 
もう一つの報告によると、生検でCMV肺炎と診断され、治療を受けた17例のうち10(59%)が生存して退院した。
 
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リウマトロジストのコメント
 
HIV患者におけるCMV肺感染症に対し、BALのCMV培養の感度は低く、特異度も低いようだ。
 
BAL細胞診で封入体が見られることは培養やPCRよりも特異的であろうと記載されている。その一方、CMV感染の組織学的な証明が得られた剖検症例の半分以上でCMVが呼吸不全の原因とは考えにくかったという報告もある。
 
HIV領域ではPCPに併存するCMVに臨床的な意義はなさそうだ。純粋なCMV肺炎についてはデータが少なく、治療介入の妥当性すら分かっていないようだ。
 
→ HIV領域よりも移植領域の方がCMVの研究がさかんなようだ。(2)へ飛んでみよう。