リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ACR/EULARのSSc分類基準(2013)

強皮症の分類基準が新しくなりましたね。
 
Abstractと分類基準を説明したTableのみを訳しました。
 
Objective
1980年のACRの強皮症(SSc)の分類基準は早期のSScと限局皮膚型SScに対して感度が低い。ACREULARの合同委員会によるこの仕事はSScの新しい分類基準を開発することを目的に行われた。
Methods
Consensus methodsを用い、症例をSScと分類するための閾値を有する、multicriteria additive pointsystem(多項目の付加的ポイントシステム)を用い、候補となる23のアイテムを配列した。分類基準のシステムはアイテムを集計し、単純に重みづけをすることで減らした(アイテムの数を整理した)。システムは以下の方法で検証された。
1)SScSSc関連疾患のコントロール群において、感度と特異度を決める。
2)SScのケースやそうでないケースにおいて専門医のグループの複合的な視点に対してバリデーションされた。
Results
MCP関節よりも近位に及ぶ皮膚硬化はSScと分類するに十分であると決定された;それがない場合、さまざまな重みづけを有する付加的な7項目が適応される:手指の皮膚硬化、指尖の皮膚病変、毛細血管拡張、爪周囲(爪郭)の毛細血管異常、間質性肺炎または肺動脈性肺高血圧症、レイノー現象、そしてSSc関連の自己抗体である。Validationのための集団における感度と特異度は新しい分類基準で0.910.921980ACRの基準で0.750.72であった。選ばれたすべてのケースは専門医の意見に基づくコンセンサスに応じて分類された。1980ACR基準でSScと分類されたケースはすべて新しい基準でもSScと分類され、さらにいくつかのケースが(新しい基準では)SScと考えられた。
Conclusion
ACR/EULARSSc分類基準は1980ACR基準よりも検査特性がよかった。この基準はより多くの患者を正確にSScと分類することを可能にするはずだ。
 
 
Table1
ACR/EULAR criteria for the classification of SSc*
 
Item
 Subitem おもみ/スコア
 
MCP関節より近位に及ぶ、両手指の皮膚肥厚(十分条件となる基準)9
手指の皮膚肥厚(高いスコアのみをカウントする)
Puffy fingers 2
手指の皮膚硬化(MCPより遠位でもPIPより近位)4
指尖の皮膚病変(高いスコアのみをカウントする)
指尖の潰瘍 2
 指尖の圧痕性瘢痕 3
毛細血管拡張 2
爪郭の毛細血管異常 2
肺動脈性肺高血圧症 and/or 間質性肺疾患(最大のスコアは2点)
肺動脈性肺高血圧症 2
 間質性肺疾患 2
レイノー現象 3
SSc関連自己抗体 3
セントロメア抗体 
抗トポイソメラーゼⅠ抗体 
RNAポリメラーゼⅢ抗体 
 
*この基準はSScの研究の登録に考慮されるすべての患者に適応される。この基準は手指を欠く皮膚肥厚のある患者や臨床所見をよりよく説明する強皮症関連疾患を有する患者には適応されない(例;腎性全身性線維症、全身性のモルフィア、好酸球性筋膜炎、糖尿病性浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、肢端紅痛症、ポルフィリア、硬化性苔癬、GVHD、糖尿病性手関節症)。
 
スコアの合計は各々のカテゴリーで最大のスコアを加えることで決定される。合計9点以上の患者はdefinite SScを有すると分類する。
 
 
Table 2
ACR/EULAR criteria for the classification of SScitem/subitemの定義
 
皮膚肥厚
外傷によらない皮膚肥厚または硬化
 
Puffy fingers
手指の腫脹―正常な関節包の範囲を超える手指軟部組織の増大。びまん性で、通常非圧痕。正常な手指は骨と関節構造の輪郭を追いながら、遠位に行くほど細くなる。手指が腫脹すると、この正常な輪郭ではなくなる。炎症性の指炎のようなその他の原因によらないこと。
 
指尖の潰瘍や圧痕性瘢痕
外傷によらないと考えられるPIP以遠の潰瘍や瘢痕。手指の圧痕性瘢痕とは、指尖における虚血によって陥凹した領域のことであり、外傷や外因性の要因によらないもの。
 
毛細血管拡張
毛細血管拡張は斑状に見える表在性の血管拡張。抑えると消退し、離すとゆっくり血流が戻る。強皮症における毛細血管拡張は手・口唇・口の中に見られ、丸く辺縁がはっきりしていてるもの、and/or 大きなマット状の毛細血管拡張。離すと急速に血流が戻る、中心性の動脈を有するクモ状血管腫とは異なる。また、拡張した表在性の血管とも異なる。
 
SScに矛盾しない爪郭の毛細血管異常
爪郭における毛細血管の拡張 and/or 毛細血管の消失で、毛細血管周囲の出血を伴ったり伴わなかったりする。爪上皮に見られてもよい。
 
肺動脈性肺高血圧症
右心カテにより、標準的な定義で肺動脈性肺高血圧症と診断された肺動脈性肺高血圧症
 
間質性肺疾患
HRCTや胸部X線でみられる肺の線維化。ほとんどの場合、肺底部に顕著。あるいは、聴診上、うっ血性心不全のようなその他の原因によらないベルクロラ音が出現すること。
 
患者の訴えによる、あるいは医師によって確認された、少なくとも二相性の手指の色調の変化。しばしば足趾にも見られる。色調の変化とは、寒冷暴露や感情によってもたらされ、蒼白、チアノーゼ、and/or充血からなる;通常ひとつの相は蒼白である。
 
SScに関連した自己抗体
セントロメア抗体、あるいは抗核抗体の検査でセントロメア型。抗トポイソメラーゼⅠ抗体(Scl-70抗体としても知られる)、あるいは抗RNAポリメラーゼⅢ抗体。そのラボラトリーでの標準値に対して陽性であればよい。
 

 

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