リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

DSO vs CRMO vs CNO vs SAPHO

Clinical Senario
下顎骨の慢性骨髄炎、Diffuse sclerosing osteomyelitis(びまん性硬化性骨髄炎)の15歳女性が紹介された。
 
勉強しなければ・・
 
※実際の症例とは異なります。
 
Pubmedで検索>
DSO+mandibleで検索、CRMO + Bisphosphonate[mesh]CNOで検索し、文献を読みまくった。(※略語は↓を参照ください)
 
・歯科領域では、Diffuse sclerosing osteomyelitisDSO)として知られている。病態は非化膿性の慢性骨髄炎であり、多発すると、Chronic recurrent multifocal osteomyelitisCRMO、慢性再発性多発性骨髄炎)となる。歯科領域におけるDSO、小児科で多用されるCRMOが同一の疾患であろうことが報告されたのは1995年のことである。
 
・小児科領域ではCRMOが多用されるが、鎖骨に多い慢性の骨髄炎であること、ときに掌蹠膿疱症やニキビの合併が見られることから、SAPHO症候群の小児版と考えられている。
 
CRMOは多発しないかぎり、この病名にならないが、SAPHOCRMODSOを包括する病名として、Chronic nonbacterial osteomyelitisCNO、慢性非細菌性骨髄炎)が提唱されている。
 
・小児リウマチ科@ドイツからの30例のCNOの報告では、下顎骨2%、鎖骨24%、脊椎2%、大腿骨17%、股9%、脛骨9%、足関節33%、踵骨19%等とするものがある。別な小児リウマチ科@ドイツからの報告で脊椎の病変が26%とするものもあり、脊柱後弯症、側弯症の原因となることもある
 
CRMOは遺伝子異常が知られ、自己炎症性疾患であると考えられている。CRMOに赤血球異型性貧血を合併したものをMajeed syndromeという。
 
・画像検査はX線よりも骨シンチ、骨シンチよりもMRIが感度が高い。骨シンチやMRIは症状がでていないうちから病変を検出しうる。
 
CRMO/CNOの治療は確立されておらず、NSAIDsDMARDsが経験的に使用される。最近は、ビスフォスフォネート剤の使用が普及してきており、そのほとんどはパミドロネートである。パミドロネートにより48時間以内に疼痛の改善がみられ、画像上の寛解も報告されている。有効率は8割が改善と高い。投与方法は骨形成不全症で用いられる方法(1日目0.5mg/kg、2-3日目1.0mg/kg)に準ずる。
 
・パミドロネート中止後の再発はよくある。9例中4例とするもの、7例中5例とするもの。9例中4例の再発例は1回の追加投与で再度寛解した。
 
・副作用は1回目の投与後にflu-like illnessが多い。重篤なものはない。成長障害や下顎骨壊死は起きていない。
 
・将来の妊娠の懸念については記載された論文がひとつだけ。「計画的な妊娠より前、少なくとも1年は使用を控える」とのExpert’s opinion
 
TNF阻害薬を使用したケースが過去に20例あまり。有効性は65%、無効が35%
 
 
 
 <Senario caseの経過>
パミドロネートは骨形成不全症ではガイドラインでも勧められている。
 
パミドロネートの保険適応は悪性腫瘍による高カルシウム血症、乳癌の溶骨性転移のみであり、骨形成不全もDSO/CRMOも保険外診療となる。
 
使用経験が豊富な施設に紹介する方針とした。
 
 
<UptodateでもCRMOを調べましたが、治療内容の記載が不十分でした・・>
Chronic nonbacterial osteomyelitis(慢性非細菌性骨髄炎)— CNO (CRMOがもっともコモン) は自己免疫性炎症性疾患であると考えられている。初期症状は骨髄炎と同様である。たくさんの症例報告があるが真の発生率は不明。
臨床症状は以下の通り
・子どもと思春期に起き、女児に多い。70例のシリーズによると発症年齢は9.6歳(3-17歳)、67%が女性。
・発症時の症状は骨の痛み、限局した腫脹、発熱。手掌、足底の膿疱性皮疹が慢性や再発性の症例に起きるかもしれない。
・実際はすべての患者に炎症反応上昇を認める(ESR and/or CRP
・管状の骨の骨幹端部がよく侵される。単発の病変も約20%に起き、下顎骨が最も侵されやすい。多発性の場合、パターンは1/4で対称性。
CRMOは単独で発症することがほとんどであるが、症候群の一部分症として起きることもある。Majeed症候群は上染色体劣性の生涯にわたる疾患であり、CRMOと先天性赤血球異型性貧血と一過性の炎症性の皮疹からなる。CRMOはまれなIL1受容体の欠乏症の患者で起きるかもしれない。
画像検査は骨病変を限局するかもしれないし、膿瘍や洞管のような慢性骨髄炎でない所見を示唆するかもしれない。しかし、政権組織が無菌であることを繰り返すことによって通常は診断に至る。
ステロイドNSAIDsによる治療は一時的な症状の改善をもたらすかもしれないが、再発はコモンである。スルファサラジン、メトトレキサート、ガンマインターフェロンTNF阻害薬、およびビスフォスフォネート剤の有効性が報告されている。
臨床経過は予測できない。70例のシリーズにおいて、43%が中央値22カ月の間、寛解を維持した。合併症には病的骨折、側碗症、椎体骨折がある。