リウマチ膠原病のQ&A

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発熱、全身性リンパ節腫脹にて紹介された20歳女性

<Clinical senario>
20歳の女性が5週間前からの発熱、咽頭痛、全身性リンパ節腫脹、血球減少(WBC3000前後、Plt10-15万)のため紹介された。発熱は40℃までが5週間前から続き、リンパ節は両側頸部、腋窩、縦隔、腹腔内におよんだ。AST, ALT, LDHの上昇あり、Ferritin600台。
リンパ節は両側頸部、腋窩、腹腔内におよび、リンパ腫除外のためにリンパ節生検が行われ、結果まち。手指の関節痛、圧痛あり。脾腫を認める。
鑑別として、悪性リンパ腫伝染性単核球症(EBV、CMV)、HIV急性感染、SLE、成人スティル病、菊池病、サルコイドーシスを挙げた。
 
ANA80倍、Sm抗体陰性、ds-DNA抗体陰性、抗リン脂質抗体陰性
EBV, CMVは既往感染を示唆
 
伝染性単核球症にしては発熱の期間が長く、血清学的にもその可能性を示唆しなかった。成人スティル病の基準を5項目を満たしたが、除外診断が重要なので、その他の検査の結果を待った。SLEの基準は満たしていなかった。
リンパ腫除外のためにリンパ節生検が行われ、結果まち。
 
※実際の症例とは内容の一部を変更しております。
 
 
<まずは、Uptodate>
 
UptodateでKikuchi's diseaseを検索して、臨床症状、所見、病理にフォーカスを当て、訳した。
 
Pathogenesis
不明であるが、臨床症状、経過、病理所見からは乾癬性物質に対するT細胞と組織球の免疫反応が疑われる。
 
Clinical features
・発熱は30-50%の患者において初発症状。典型的にはLow grade feverで約1週間続く。まれであるが、1ヶ月以上。
244例のレビューによると、発熱35%、倦怠感7%、関節痛7%
リンパ節腫脹100%、皮疹10%、関節炎7%、肝脾腫3%、白血球減少43%ESR上昇40%、貧血23%。全身症状として、寝汗、吐気・嘔吐、体重減少(約10%)、下痢がある。
・皮疹;風疹や薬剤性に似た一過性の皮疹がsickな患者には見られるかも。頬部のBatterfly rashSLEの可能性を示唆する。皮疹は40%までに見られるとする報告もある。顔面紅斑、紅斑性丘疹、、、。
・リンパ節;リンパ節炎は通常頸部で限局する。中国からの79例の報告によると全例が頸部だった。USからの108例では83例(77%)が頸部で片側性で、3例のみが両側性の頸部リンパ節炎だった。そのほかに腋窩、滑車上、縦隔、そけい部、耳下部、腸骨、大腿後部、腹腔動脈周囲、膵臓周囲にも。
その他;Aseptic meningitis,,,
 
Laboratory study
ほとんどのKDCBC正常。白血球減少は20-32%。異型リンパ球が25%までに。その他コモンな所見として血小板減少、汎血球減少。重症例では慢性炎症性貧血。ESRは正常になりえるが、7割の患者で60以上。Nonspecificなものとして軽度の肝障害、
LDH上昇。
Bone marrow;マクロファージが異型細胞を伴わずに増加することが典型的。2例の患者でHemophagocytic histiocytesがみられ、Virus associated hemophagocyticc syndromeと診断された。
SerologicalANARFSLEの抗体は通常陰性。KDと始めに診断された患者が後にSLEと診断されることもある。ANAKDの患者では測定すべし。
EBVCMVHIVtoxoplasmosis、エルシニア、Cat scratch diseaseについて発熱とリンパ節腫脹の鑑別としてしばしば調べられる。
 
Diagnosis
KDの診断はリンパ節生検でなされる。self-limitedな疾患とは言え、リンパ腫のようなよりaggressiveな治療を要する疾患を除外するためにも生検はするべし。臨床医と病理医がKDに慣れていなければ、リンパ腫と誤診して、化学療法を受けてしまう事もある。KDと紛らわしい病気として、結核性リンパ節炎、Lymphogranuloma venereum川崎病がある。
 
Pathology
Lymph node - KDのリンパ節生検は発熱とリンパ節腫脹の鑑別に挙がるほとんどの疾患とは容易に区別される。しかし、SLEの数名に見られる所見と区別することはそうではない。黄色い壊死巣はリンパ節の断面ではめったにみられない。顕微鏡的では傍皮質に壊死と組織球浸潤が診られる。これらの病巣は単発or多発。被膜も侵されるかもしれず、リンパ節周囲の炎症もコモン。
壊死の過程はしばしば、核の断片が不正に分布する好酸性フィブリノイド物質の周囲に限局される。凝固による壊死は必要ではない。
組織の所見は疾患の経過とともに変化する。
“増殖期”の早期の生検は濾胞過形成と多数のアポトーシスを背景としリンパ球、T and B cell blasts、形質細胞様の単球、組織球による傍皮質への拡散がみられる。
“増殖期”では無数のblast cellsがみられ、リンパ腫、EBV感染症、単純ヘルペス感染症が鑑別に挙がってくる。リンパ節の構造が保たれていること、ポリクローナルな浸潤であること、ウイルスの免疫組織学検査が陰性であることがこれらの疾患を除外する。
“壊死期”における後期の生検では好中球浸潤を伴わない壊死が、主に組織球の優位な増殖を伴う。組織球はしばしば半月状の核を有し、貪食されたデブリ巣を含む。免疫組織学的検査ではCD68+の形質細胞様の単球と組織球を認め、おもにCD8+T lymphocytesを伴う。壊死期に好中球がないことはSLEと薬剤性リンパ節炎を鑑別するのに役立つ。
Xanthomatous appearanceは異なる組織学的なvariantであるようだ。
組織学的な鑑別にはSLE、単純ヘルペスリンパ節炎、リンパ腫(NHD, HD)。SLEではヘマトキシリン体と形質細胞も見られる。単純ヘルペス性リンパ節炎周囲を取り囲む単球が少なく、通常好中球がある。HDに伴う壊死巣には好中球を含み、KDと異なり、大きな異型細胞(Reed-sternberg cell variant)がCD15+, CD30+, CD45+である。反応性リンパ節炎、T or B cellリンパ腫とくらべ、KDのリンパ節には形質細胞様樹枝状細胞がよく浸潤している。これはKDの病巣の年齢に関わらない。このようにこれらの所見はKDの細胞学的診断の有用な目安となる。
 
Skin – highly variable and nonspecific
 
Treatment
KDに有効な治療法は確立されていない。症状と所見は通常1-4ヶ月以内におさまる。
重症で持続性の症状がステロイドや、高用量ステロイド+免疫グロブリンで治療され、明らかな利益があった。再発性のKDにたいし、ヒドロキシクロロキンが有効であった報告がひとつある。患者は数年フォローされるべきだ。何年もたってSLEになったり、KDが時に再発するからだ。たとえば、ある患者は18年以上にわたり4回のリンパ節炎を繰り返し、もうひとりの患者は6年間をあけて2回のエピソードを示した。韓国からの102例の患者において、3例がSLE8例が早期に再燃、13例が後期に再燃した。再発例は始めの症例よりも症状が長かった。ANA陽性は再発のリスクであった。
 

 
<Senario caseの経過>
リンパ節生検にて壊死性リンパ節炎とされ、菊池病が疑われた。
HIV-RNA陰性。ウイルスの血清学的検査は既往感染を示唆するのみであり、病理学的に悪性リンパ腫、サルコイドーシスは否定的であった。
BT max4038-39度に下がって来ており、菊池病疑いとして、対症療法の方針とした。改善がなければ、ステロイドの使用も考慮することとした。改善したとしても、SLEの発症が懸念され、経過観察が必要と考えた。
 
<Clinical pearl>
 
菊池病は頸部の片側性リンパ節炎で発症することが多いが、その感度は8割程度であり、両側性or全身性となるケースもある。