潰瘍性大腸炎を有する50代男性が関節痛のため紹介され、診断・治療について勉強しています。
Diagnosis
IBDによる関節炎の疑いを確認するための所見はなく、大きく除外診断にかかっている。
Differential diagnosis – IBDの患者における関節痛の鑑別診断は広い。関節痛をおこす疾患で、この臨床状況で頻度が高いものは以下のものがあるが、これに限らない。
・Hypertrophic osteoarthropathyはばち指を伴い、IBDの患者にさまざまな頻度で起きる。CDにおいて最もコモン。
・Osteonecrosis (無血管性子津江氏)は股、膝、肩に多い。典型的にはステロイド治療を受けており、受動的な可動域を超えた運動で誘発される。
・Erythema nodosumが関節周囲に位置する場合は鑑別が難しいかもしれない。腫脹疼痛のある関節から関節液を採取することができないことも手掛かりとなる。
上述の疾患に加え、そのほかの疾患や状況が消化管症状を伴い、関節炎をおこす。Reactive arthritis, Whipple's disease, Behcet's syndrome, intestinal bypass, gluten sensitive enteropathy, and parasitic infections.
Treatment
‐ Peripheral arthritis –
Sulfasalazine, azathioprine, 6-mercaptopurine, methotrexate, glucocorticoids, and TNF inhibitorsが長官と関節の炎症に有用。NSAIDsも症状を和らげるが、IBDには良くないかもしれない。IBDの関節炎において治療の決定をガイドするようなRCTの情報は限られており、ほとんどは小規模のケースシリーズ。我々の推奨は得られるエビデンス、脊椎関節症や反応性関節炎のようなその他の関節炎の研究、および我々の経験に基づく。
NSAIDs – 疼痛と炎症を抑えるが、消化管への影響のため注意して用いるべきだ。NSAIDとIBD発症の関連を調査した疫学研究はないが、NSAIDsはIBDの発症のリスクを上げること、IBDを悪化させるかもしれないことを示唆する報告がたくさんある。しかしながら、IBDの患者にはNSAIDsに耐用できている者もいるようだ。
NSAIDsで治療中の患者において、IBDの新たな症状や元々あったIBDの悪化はchallengingな問題だ。IBDの治療に有効な薬はNSAIDsによる消化管症状を改善するかもしれない。同様に、画像所見や内視鏡所見、政権組織はこれらの原因を特定できないかもしれない。このように、NSAIDs中止後の症状と粘膜所見の改善がNSIADsを原因と判断する最善の支持を提供するかもしれない。
セレコキシブのようなCOX-2 selective inhibitorsの経験はIBD患者では限られている。COX2の活動性は上皮増殖、創傷治癒を促すので、COX2 inhibitorは論理的にはIBD患者に有害であるかもしれない。一報でCOX2 inhibitorは実験上の大腸炎の重症度を改善させる。IBD患者における腸炎への影響を評価した、唯一のPlacebo-controlled trialはセレコキシブを用い、IBDの再燃率は2週間以降には有意差がなかった。
大きな試験によると、もう入手できないが、ロフェコキシブで3日-3か月間治療されたIBDの関節痛患者45例において、関節痛は71%でかいぜんしたと報告された(完全な改善18%、部分的な改善53%)。しかし、9例(20%)が消化管症状のため投薬を中止され、そののちに改善を示した。これは30例のコントロール群(3%)よりも高い中止率であった。中止を要する患者の割合はCDとUCで同等。
Sulfasalazine(SSZ) – SSZは小腸では吸収されず、大腸で細菌に分解される。5-amino成分が大腸のPGEを低下させ、消化管の細菌叢を変化させる。この薬は抗リウマチ作用があるようだ。
Immunomodulatory agents – そのほかの免疫修正的な治療はAzathioprine, 6-MPがあり、関節炎に有益なようだ。しかし、Aminosalicylates (eg, mesalamine)は腸炎には有効であるが、滑膜における直接的な抗炎症作用はないようだ。
Anticytokine therapies – 抗サイトカイン治療、とくにTNFアルファ阻害薬はCDに使用される。これらはRAやReAにも有効だ。IBDの末梢性関節炎においてTNF阻害薬の有効性を調べたのは、逸話的な報告や小規模なUncontrolled seriesに限られる。IBDの関節炎の治療におけるサイトカイン阻害療法の有効性と安全性を評価するためには、さらなる臨床経験が必要だ。
Recommendations – IBDの末梢性関節炎は通常非破壊性であり、初期の治療は症状の緩和に向けられる。
・NSAIDsやCOX2 inhibitorが無効なら、SSZの追加を勧める。初期量は500mgを2回、2週間で1000mgずつ増量し、関節炎が改善するまで、または1500mg3回に達するまで増量する。効果判定までに12週間まで最高量を維持することを勧める。
・Sulfasalazineが無効ならMTXを勧める。しかし、肝障害の可能性があるため、AZP or 6MPがより良い選択肢になるかも。活動性IBDでも経口MTXは十分に吸収される。MTXの皮下注射は門脈の濃度を減らすかもしれないが、それによって肝障害のリスクが減ることは示されていない。もし消化器の副作用で投与量が制限される場合、非経口投与を勧める。皮下注射の量は経口と同じ。典型的には7.5mg/dayで開始し、関節炎がコントロールされるまで、または25mg/wに到達するまで約1か月で2.5-5mgずつ増量する。葉酸の併用1mg/day、またはweeklyのラセミ酸ロイコボリン2.5-5mg or L-ロイコボリン1-2mg/wをMTX投与から24時間後に併用することは口内炎のような不愉快な副作用を避けるために勧められる。補助的に葉酸やロイコボリンの服用することは骨髄抑制を減らす。
・それでも多関節炎が続く場合、TNFα阻害薬の使用、Infliximab or adalimumab or etanerceptを勧める。RAに準じたレジメンがよい。TNF阻害薬は結核の再活性化をおこしうるため、潜在性結核のための皮内反応が必要。活動性感染症は禁忌。潜在性結核の証拠がある患者は抗結核剤をTNF阻害薬に先行して始めるべし。
– Spondylitis and sacroiliitis –
IBDに合併する軸関節症は脊椎関節症と同様に治療される。脊椎炎と仙腸関節炎に対する治療は末梢性関節炎と同様、対症的である。しかし、腰痛とこわばりがコントロールできていても、レントゲン上骨の強直性変化への信仰は起きるかもしれない。NSAIDsとCox2阻害薬が脊椎の痛みとこわばりに用いられる。末梢性関節炎で述べたのと同じ懸念が脊椎炎・仙腸関節炎の使用においてもいえる。
前述の通り、インフリキシマブの経験は小規模のシリーズに限定されており、末梢性関節炎と同様、脊椎炎の症状を改善させる。TNF阻害療法が長期的に脊椎炎への進行に効果があるかどうかは、これから決められる問題である。
入手できるTNF阻害薬の選択について言えることは、エタナセプトは安全に使用でき、CDの関節炎と脊椎炎に対し有効であることが報告されているが、腸炎には利益をもたらさない。これはCDの肛門ろう孔のような合併症においてしばしば用いられるインフリキシマブとは異なる。。
Recommendations — 非薬物的、薬物的な治療が脊椎病変を有する患者には補助的な治療となる。
・著者は腰の体操を教育できる理学療法士に紹介すること勧める;それは首や背部の変形を予防する目的である。
・これらに体制の患者ではMTXが末梢性関節炎で述べた用量で勧められる。代わりとなるのはSSZである。
・データに限りはあるが、ASで用いられるようにTNF阻害薬にも反応することが期待される。
<Senario caseの経過>
診断
・数か月前より手掌に水泡性の皮疹があり、皮膚科で掌蹠膿疱症と診断された。
治療
・Cox2阻害薬とMTXを開始した。