リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Felty syndrome、フェルティ症候群

 Clinicalscenario >
急性多関節炎の50歳女性。
 
WBC2000Neu1150,Ly580)。数年前から白血球減少があると言う。
 
RFと抗CCP抗体は高値陽性で分類基準上、7点。
 
PB19, Rubella-IgM(-)。ANA<40。
 
RA、白血球減少と言えば・・・
 
 
< 疑問、発生!>
Felty症候群の勉強をしよう。
 
 
 
Uptodate
 
Clinicalmanifestations and diagnosis of Felty's syndrome
 
INTRODUCTIONFeltyssyndrome (FS)は稀ながら重症のSeropositiveRAに好中球減少症と脾腫を合併した疾患。
 
EPIDEMIOLOGY—最初にRAと診断された患者において生涯にFSを発症するリスクは約1%と見積もられている。しかし、大規模な復員軍人援護局データベースを用いた後の研究によると、2006年までの20年間で有病率は確実に減少している。有病率の減少の理由は分かっていない。提案されるひとつの説明はFSのいくつかのケースがLGLと再分類されたため、LGLの診断法が確立した1985年以降にFSと診断される患者数が減ったというものだ。しかし、これだけでは全体的な減少を説明できないだろう。その他の要素は特定されていないが、RAに対するMTX使用の普及と生物学的製剤の導入が一役買っているかもしれない。
 
CLINICALMANIFESTATIONS —上述の通り、FSRA、好中球減少、脾腫の三兆を呈する疾患。しかし、脾腫はRA患者において高度の好中球減少があっても検出されてないこともある。脾臓のサイズは好中球減少の程度、臨床経過に関連しない。一方、脾腫のない患者が三兆を満たす患者を真似することもある。このように多くの専門医が脾腫はほとんどのケースに認められるが、絶対的な診断項目ではないことに同調する。
 
Rheumatoidarthritis FS患者のRAはほとんどいつも最初に出現し、典型的には好中球減少が認識されるまでに少なくとも10年かかる。しかし、稀ながら好中球減少と脾腫が関節炎の発症より前、あるいは同時に出現することもある。
FSは典型的には重症のびらん性関節炎と変形に関連する。しかし、ある研究によると、骨びらんの進行はFSの患者、同程度の病歴を有するRA患者と同じであった。FSの約1/3の患者が非活動性、あるいは燃え尽きた状態の滑膜炎を有する。しかし、これらの患者はほとんどいつも著名なESR上昇を呈し、ある大規模なシリーズでは平均値85mm/h
FSRAのコントロールの臨床所見は同様。女性が60-80%を占め関節炎の発症は30代の終わりから40代の始め。FSの患者はRAの家族歴をより融資安く、組織適合性複合体Class II DR4 alleleが約95%に存在する。これはRAのコントロールよりも有意に高い頻度であった。
FSの患者はRA患者よりも高頻度に重症の関節外症状を呈しやすかった。これには多発性単士敬遠や皮膚の壊死病変に至る血管炎を含む;胸膜・心膜炎;皮下や内臓のリウマチ結節;リンパ節腫脹;上強膜炎。
これらの関節外所見は重症の罹患率、死亡率に関連する。その他のSeropositiveRAの患者のように関節外の症状は関節炎発症時にはめったに明らかでなく、FS診断に寄与しない。
 
NeutropeniaFSにおける好中球減少(絶対数<2000/mcL)はFS患者に起きやすい感染症に至らない限り症状の原因になることはない。結果として、抗リウマチ剤の毒性を調べるための検査のような他の理由で血液検査をされるまで長期間検出されないかもしれない。しかし、FSの診断は感染症の患者でもマスクされるかもしれない。なぜなら細菌感染は白血球数を正常から軽度上昇のレベルまで上昇させるからだ;好中球減少は典型的には感染症の治療がうまくいった後の短期間の間再度出現する。
 
PathophysiologyFSの好中球減少の根本の原因は顆粒球の産生と循環プールからの顆粒球の除去とのインバランスによる。脾臓によるsequestration(腐骨化)に加え、以下の複数が好中球減少の発生に寄与しうる。
●顆粒球をコーティングする免疫複合体。その結果として、顆粒球のsequestraion、生存期間の短縮が起きる。
●顆粒球の表面抗原に対する抗顆粒球抗体
●白血球分葉の増加
●骨髄異常。顆粒球セルラインの成熟停止、低形成、稀にリンパ球浸潤を含む。全体的に細胞密度は正常で骨髄球の過形成を認める。
●骨髄中の細胞毒性リンパ球による骨髄造血の阻害
●抗体によるG-CSF結合
 
Bacterialinfection FSの好中球減少は再発性細菌感染症を起こしやすくする。通常原因となる細菌による呼吸器、皮膚の感染が最も多い。危険因子には好中球<1000/mcL、皮膚潰瘍、ステロイド療法、全体的な重症度の増加、機能障害の増加、可溶性Fcγ受容体IIIの低値、G-CSF高値がある。しかし可溶性Fcγ受容体IIIG-CSFのレベルは臨床状況で測定されることはめったにない。
FSにおいて感染症がないのに発熱が出る事は稀。これは成人RAと同様。血管炎や劇症型の多関節炎を呈する患者を除いて。
 
Splenomegaly—脾腫は慎重に腹部を触診すればFS90%以上で検出することができる。超音波や放射性核種のスキャンでも脾臓の腫大を確認することができる。FSにおける平均の脾臓の大きさは正常の約4倍であるが、巨大な脾腫も起こりえる。脾臓のサイズは関節炎の重症度や好中球減少の程度に関連しない。脾腫は好中球減少のないRA患者においても起こりうる;これらの患者はFSとは考えてはならない。脾腫がなければFSの診断はその他の顆粒球減少が除外された場合にのみ適切であろう。
Laboratorydata FSにおいて唯一の診断的な検査は血液検査、すなわち白血球数と骨髄穿刺・生検、およびRF、抗CCP抗体の血清学的検査。FSの患者は典型的にはRFも抗CCP抗体も有し、通常両方とも高値となる。
 
 
Neutrophilcount FSの診断には好中球絶対数<2000/mcLが必要。好中球減少は持続性でその他の併存疾患や薬物で説明がつかないものでなくてはならない。FSにおける好中球数の減少は個々の患者において様々。ゆえに、軽度の好中球減少を有する患者は一過性に正常範囲になるかもしれない。感染症がなくても。しかし、自然寛解によって持続的に好中球数が正常であることは稀
 
Bloodsmear LGL症候群を検出するために血液スメアをレビューしなければならない。
 
Bonemarrow —骨髄は通常、相対的に成熟度が足らない骨髄球の過形成。これは成熟停止と記載されるが、早計な顆粒球の循環への放出も同じ像となる。よりコモンでない所見として骨髄球の活動性の低下を示唆する骨髄の低形成、LGL症候群を疑わせる骨髄リンパ球の増加がある。
 
Signsof immune dysfunction —自己抗体の値はFSは典型的にはRAよりも顕著。
●抗核抗体、抗ヒストン抗体、ANCA、ほとんどはラクトフェリンに反応するものが各々65-83%に見られる。(略)
●抗dsDNA抗体が上昇していることもある。
●抗Glucose-6-phosphateイソメラーゼ抗体の値がFS92%で上昇している。
●免疫複合体の上昇はRAよりもFSで多い。
加えてRAに比べ免疫グロブリン値は高く、補体レベルは低い。しかし、ほとんどの値は低下するものの正常範囲内。
 
DIAGNOSISFSRA、脾腫、好中球減少の患者において疑われる臨床的な診断である。特異的な診断的検査があるわけではない。好中球減少のその他の原因を考慮し、除外をしてFSと判断する。診断的な精査はLGL白血病を除外するために骨髄検査・生検はもちろんのこと、末梢血のスメアのレビューを含むべきだ。
 
DIFFERENTIALDIAGNOSIS —鑑別診断は多関節炎と好中球減少を来たす患者においてRAの代賛となる疾患である。
 
Systemiclupus erythematosus SLEとその亜型は最初に除外しなければならない。SLEの好中球減少は典型的にはリンパ球減少が顕著であり、これらの患者が正常な白血球分画であることは珍しくはない。しかし、好中球減少は起きて良い。RASLEとの区別は通常、臨床的、血清学的な基準を用いて行われる。両方ともFSRAに合併する時には有用でない。なぜならk炉えらの患者はSLE患者で見られるのと同様な関節外の症状をしばしば呈するからだ。上述の通り広範囲なスペクトラムの自己抗体をも有する。
●腎炎、中枢神経障害、典型的な日光過敏症性皮疹、and/ordsDNA抗体はSLEの診断を指し示す。
●びらん性関節炎and/or典型的なリウマチ結節は通常RAを示唆する。
 
Largegranular lymphocyte (LGL) syndrome LGL症候群は脾腫の有無に関わらない好中球減少を合併する。この診断はスメア、骨髄穿刺・生検にてLGL細胞の割合の増加で疑われる。FSLGL症候群特別することは難しいかもしれない。とくに関節炎と脾腫がLGL症候群に合併するとき。LGL症候群を分子上区別することはLGL症候群に特徴的な拡大した(通常クローなるな)リンパ球の集団を証明すること。LGLの免疫表現型はCD2, 3, 8, 16, and 57のようなホゆ面マーカーのセットを表現する細胞毒性のTリンパ球の集団を示唆する。これらはFSでは稀。細胞遺伝学的異常やTCR遺伝子のクローナルな増加を証明することはLGL症候群の診断の負荷的な確認を提供する。
 
Othercauses of neutropenia and splenomegaly —その他のRAに合併する別な疾患が脾腫and/or好中球減少の原因となるので、これらも合理的な確かさをもって除外しなければならない。薬剤反応・毒性、アミロイドーシス、骨髄増殖性疾患、リンパ腫、HIV感染、サルコイドーシス、結核、肝硬変。
 
肝硬変に関しては門脈圧亢進がFSに直接関連するかもしれないこと、静脈瘤の出血を起こしうることを理解しておくべきだ。門脈圧亢進は肝硬変によらず、むしろ特発性、非肝硬変性の門脈圧亢進(結節性再発性過形成を含む概念)の結果である。これがなぜ起きるのかはよく分かっていないが、門脈の血管の上皮細胞に対する免疫異常に基づく傷害が一役買っているかもしれない。
 
FSの患者は一般人口、およびその他のRA患者よりも非ホジキン型リンパ腫になるリスクがより高い。また、その他のRA患者と同様、FSは肺癌やその他の悪性腫瘍を発生するリスクが高い。
 
 
<Scenario caseの経過>
FSはほとんどの場合、長期罹患のRA患者に発生するようだ。可能性は低いかもしれない。
 
腹部エコーにて脾腫のチェックをしておくことにした。
 
不慣れなLGL症候群が心配であったため、血液内科にコンサルト;異常なし。
 
MTXは白血球減少に禁忌とはされていないが、骨髄抑制の副作用で1500未満がロイコボリン開始の基準とされている。
 
一応、MTXを勧めたが、WBCのことが心配ならブシラミン出始めてもよいと説明した。