リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

急性ループス肺炎 ①

Clinical scenario
生来健康な60歳女性。発熱、リンパ節炎、尿蛋白を認め、腎生検で間質性腎炎の所見を認めた。

リンパ節炎は自然軽快したため、ウイルス性が疑われたが、抗核抗体80倍、抗dsDNA-IgG抗体31、抗CLβ2GPI抗体11と陽性を認めた。
 
発熱、息切れを主訴にERを受診し、CTにてびまん性のすりガラス状陰影を認めた。
 
(症例は架空です)
 

< 疑問、発生!>
急性ループス肺炎について勉強しよう。
 
 
Uptodate
lupus pneumonitisを検索し、Pulmonary manifestations of systemic lupus erythematosus in adultsを読みます。
 
ACUTE PNEUMONITIS — 急性ループス肺臓炎(ALP)はARDSの一つの型であり、稀なSLEの合併症 (1 to 12%) [14,15]。臨床所見は特発性間質性肺炎の一つである急性間質性肺炎と同様。
 
ALPAIPの組織検査はびまん性肺胞傷害、肺胞の浮腫、硝子膜形成、単核球の浸潤を呈する;免疫グロブリンと補体の沈着が毛細血管壁にあるかもしれない [16-18]。肺胞出血もあっても良いが、血管炎は稀。
 
Clinicalmanifestations — ALPは急性の発熱・咳(時に血痰)、呼吸困難によって特徴付けられる。身体所見は頻呼吸、頻脈、両肺底部のcrackles(吸気の遅く)、低酸素血症 [19]。約半数においてALPSLEの初発時の症状。
 
典型的には血清のANA、抗DNA抗体が上昇する[14]。胸部X線はびまん性または主に下葉における斑な浸潤影。
 
Diagnostic evaluation — ALPの診断は急性の呼吸器症状、発熱、吸気時のcrackles、低酸素血症を呈する患者において疑われるべきである。診断は除外診断によるため、検査は心不全感染症、器質化肺炎、肺塞栓、薬剤性肺炎、びまん性肺胞傷害、悪性腫瘍の除外にフォーカスを置く。既知のSLEがない患者では肺炎に対する経験的な治療に反応しない場合、肺以外のSLEの症状があるときにALPを疑われる (例、頬部紅斑、口腔潰瘍、脱毛、多発性の漿膜炎、尿沈渣異常、腎不全、血球減少、血栓性素因、リンパ節炎、脾腫、関節腫脹) [20]
 
Laboratory CBCと分画がSLEに矛盾しない血球減少と血栓性素因を特定するかもしれない。血漿BNPpro-NT-BNPの値、心エコーが心原性肺水腫を除外するのにしばしば役立つ。微生物検査にはインフルエンザ、非定型肺炎の血清学的検査 (eg, Aspergillus, Coccidioides, Chlamydia, coronavirus)、尿中抗原検査(eg, 肺炎球菌とレジオネラ)が含まれる。病歴と診察に応じて。免疫不全の患者であればPneumocystis肺炎の可能性を誘発喀痰の免疫蛍光法で評価してもよい。
 
Imaging CTは典型的には斑な浸潤影、牽引性気管支拡張、蜂巣肺、または胸水貯留があるかもしれない[19]。肺動脈造影を伴うCT所見は肺塞栓を除外するために要するかもしれない。とくに低酸素血症の場合、既知の抗リン脂質抗体症候群がある場合。
 
Diffusing capacity for carbon monoxide(DLCO) DADALPを区別することは難しい。DLCOの測定に協力できる患者では考慮すべきだ。DLCOの上昇は肺胞出血を示唆するため。
 
Bronchoscopy with bronchoalveolar lavage(BAL) BALSLEを有する免疫不全の患者において感染症と悪性腫瘍を除外する。さらに連続的なBALは肺胞出血を除外する重要な要素になる。
 
Lung biopsy VATSによる肺生検や開胸肺生検がALPの診断と感染症の除外のために必要になることは稀。しかし、ステロイド抵抗性の患者、SLEの明らかな所見を有さない患者では悪性腫瘍のような代替の診断診断を除外するために免疫抑制療法を追加する前に行われることもある。
 
ALPの鑑別疾患はARDSのそれと同様。心不全感染症(免疫抑制療法中の患者ではウイルス、ニューモシスチス等)[21,22]、器質化肺炎、肺梗塞(ひょっとすると抗リン脂質抗体に関連する)、急性好酸球性肺炎、誤嚥、薬剤性肺障害、悪性腫瘍、びまん性肺胞出血。
 
Treatment — ALPの治療を方向付けするような比較試験は存在しない。以下の推奨は著者らの経験、症例報告、AIPの経験に基づくものだ。私たちの経験上、ALPは速やかな介入を要する。伝統的に悪いとされている予後が改善する可能性がある場合。
 
被嚢性の微生物をカバーするような広域抗生剤を培養結果が得られるまでは投与するべきだ。特異的な抗生剤の治療の適応は免疫不全の程度、および患者の病歴と地域による特異的な感染症の可能性による。
 
治療の基本は全身性のステロイド (1-1.5 mg/kg/dayの分割)72時間以内に改善がみられなかったり、患者が呼吸不全のため人工呼吸器管理を要すれば静注のパルスステロイド (例、methylprednisolone~1g/day3日間)を投与する。さらに免疫抑制剤 (eg, シクロフォスファミド, リツキシマブ, IVIG)が適応となる。RCTのデータがないため、免疫抑制剤の追加は合併症(例、心不全)のような個々の患者の特徴、医師の様々な治療に対する経験、薬剤の入手性によってガイドされる。
 
予後のデータは古い研究に基づく。そのため、現代の医療の環境状況を反映していないかもしれない。1975年の12例における研究では報告された死亡率は50%[14]。生存者は永続的に重症の拘束性障害を含む肺機能異常を持ちやすい[14]。急性の肺臓炎は慢性の間質性肺疾患の前駆症状かもしれない [14]
 
Pubmed
Pubmedでもっと勉強してみましょ。
 
lupus pneumonitis[tiab] or lupuspneumonia[tiab]Egnlish+JapaneseLimitsすると、79件。
 
Title checkで、ここ20年間の25件にしぼり、入手できた文献から、さらに除外して(ACR基準を満たさないもの、Rhupusの症例など)、以下を読みました。CT所見を入手できたものをできるだけPickupしました。
 
J Postgrad Med 2015
 
 
イメージ 1

19歳女性、肺炎を伴って発症したSLECT;右上下葉、左下葉の浸潤影、両肺の斑な浸潤影。
 


 

Presse Med 2011・・・Reviewですが、HRCTがありました。
Pleural and pulmonary involvement insystemic lupus erythematosus.
 
イメージ 2

 
若い女性のAcute lupus pneumonitis。呼吸不全のためICU管理を要した。両肺のGGOConsolidationを呈した。
 
Allergy 2005・・・Press Med2011の引用ですが、非常に良いレビューです。

急性ループス肺臓炎

ALP (Fig. 1) SLE1–4%に起きる。診断がついていないSLEにしばしば起きることもあるし [Matthayらの50% (ref5)]、経過中に起きることもある。臨床所見は非特異的であり、急性の感染性肺臓炎と同じように咳、息切れ、発熱を呈する。血痰がしばしばみられる。動脈血液ガス分析は低CO2を伴う低酸素。胸部X線、CTは片側性または両側性の肺胞性の陰影。通常は下葉。しばしば軽度の胸水を伴う。時に人工呼吸器を要するほどの急性呼吸不全になる。まれにLE細胞の出現をみたりhematoxylin–eosin bodiesを検出することがあるが、得られた組織所見は非特異的で、肺胞の傷害と壊死、浮腫、硝子膜、炎症細胞浸潤と肺胞出血である;毛細血管の炎症と血栓も検出されることがある;免疫グロブリンと補体の沈着は様々な程度にみられる (6, 7)X線とCTは正常で急性の可逆性の低酸素血症を伴い、ステロイドで急速な改善を認める症候群がSLEで報告されている (8, 9)。この症候群は肺の毛細血管における白血球の集簇による。得られる組織のデータは非助寿に限られているが、レントゲンに写らない肺胞スペースの炎症を表す(9)。これはこの疾患が特異的な疾患というよりはALPの軽症のタイプであることを示唆する(9)。ループス肺臓炎の臨床・画像的な所見は非特異的であり、肺の感染症、肺塞栓やその他の急性の肺疾患を真似する。呼吸不全と死亡が起きうるため、侵襲のある診断的なワークアップが予定されるべきであり、タイミングが極めて重要。BALで細菌、ウイルス、真菌、寄生虫を検索することが必要であるが、経験的な抗生剤治療も遅れてはならない。肺の感染症SLE患者における最大の原因であるため。CTは適切に病変を特徴付け、肺塞栓の診断の可能性を除外する。診断の除外のため肺生検を勧める専門医もいるが、この検査はそれ自体が合併症と死亡の可能性を生ずる。しかも通常、診断にいたらない。ALPの治療は高用量のステロイド(プレドニゾン、1-2mg/kg/day(10, 11)。ほとんどの患者がこの治療で改善する。古いシリーズでは死亡率が50%と報告されているが (10)。重症の発症であればメチルプレドニゾロンパルス療法 (250– 1000mg/dayを数日)が用いられる。シクロフォスファミドのような免疫抑制剤や細胞障害性の薬剤もステロイドで改善しない患者に用いられる。抗TNF阻害薬のような新しい免疫調整薬は評価されていない。

(fig.1)
イメージ 3




Diuse alveolar hemorrhage.
DAHSLEの稀であるが重症の病態。ほとんどのシリーズが50–90%の死亡率を報告している(10, 13, 14)。より良いアウトカムも報告されているが(15)。この疾患の病因はよく分かっていない。免疫複合体を介した傷害、肺胞毛細血管炎を伴う血管炎、感染に関連した肺胞傷害が恐らく役割がある。DAHの組織所見はALPに似る。毛細血管と細動脈、小さい筋性動脈を含む急性炎症と壊死が報告されている (16)。毛細血管の障害はしばしば肺胞壁の破壊を伴う肺胞隔壁内の壊死性の好中球の集簇で現れる。この毛細血管炎はMyers and Katzenstein (16)によって最初に記載された4例全てにみられた。細動脈と小動脈の障害は3例でみられたが。免疫蛍光法と電子顕微鏡によって免疫複合体が明らかになったのは2例のみ。毛細血管炎は抗リン脂質抗体症候群PMやその他の膠原病Henoch–Schoenlein紫斑病、クリオグロブリン血症、ベーチェット病、ウェゲナー肉芽腫症でもみられるため(17–19)SLEに特異的な変化ではない。抗基底膜病でもみられてよい。Zamora(13)1997年に彼らのDenver大学病院での経験を報告し、文献のレビューを行った。DAHSLE11–20%に合併する。ループス腎炎の患者がDAHになるリスクが高く、DAHの診断時に腎炎がみられるのは60–93%。腎臓と肺の微小血管の障害は病因論的には同じであるようだ(20)。プレゼンテーションは無症候性から劇症。この合併症がみられる患者は若い (平均27)。急性の発症で呼吸苦、咳、発熱と貧血を伴う。発症は通常突然で、2/3の患者で3日以内。血痰が半数未満の症例において最初に出現する。両側性の陰影は限局したGGOであることもあれば濃い浸潤影である事もある。動脈の低酸素血症はよくあり、50%の患者が人工呼吸器管理を要する。DAHの診断は通常BALで容易につく。感染症の検索が可能になるため。細菌、真菌、ウイルスのような肺の感染症の合併が1/3の患者に診られ、予後不良を意味する(13)SLEの診断が抗核抗体の存在より確かめられていれば、肺生検は経気管支鏡的にも外科的にも有用ではない。重症患者では危険ですらあるかもしれない。心エコーは弁・心筋不全を評価するために必要。


SLEに合併したDAHの治療は決まっていない。高用量ステロイド単独はあまり有効らしくない。最近の報告ではDAHはループス腎炎のためすでに高用量で治療中の患者に発生している (14)血漿交換は逸話的に有効(21)ステロイドとシクロフォスファミド、血漿交換のコンビネーションが行われ、良い成績が報告されている (22)血漿交換はステロイドとシクロフォスファミドに耐性の重症DAHの患者にとっておかれるべきである(23)。生存者は肺線維症のリスクがある(24)


 


Best Pract Res Clin Rheumatol 2009・・・有名な欧州のreview journal



Acute lupus pneumonitis

ALPSLEの稀な合併症で0–14%と報告される[6]50%では初発症状。臨床像は突然の発熱、呼吸苦、胸膜痛、低酸素血症 [3]。最も特徴的な画像所見は両側下葉のびまん性の房状に充満される陰影パターン。50%に胸水貯留[3]SLEの良くある症状ではないため、感染症誤嚥性肺炎、肺塞栓などのその他の原因を除外しなければならない。早期の気管支鏡によるBAL検査と生検が原因を調べる主な方法。時に外科的肺生検を要するかもしれない。病理所見は非特異的。びまん性肺胞傷害と細胞浸潤と硝子膜形成を伴う壊死からなる。肺胞出血・毛細血管炎を伴うことも伴わないこともある。免疫組織学的検査はDNADNA抗体とC3の免疫複合体の沈着を示すかもしれない [7]


ALPの予後は急性期に死亡率50%と不良;ALPを克服して生存した患者の50%間質性肺炎と肺機能低下が持続し、慢性間質性肺炎に伸展する[3]


ALPの治療は症例報告と小さなシリーズに基づく。感染症が除外されるまで経験的な広域抗生剤治療を継続すべきだ。人工呼吸器管理と支持的な集中治療を要するかもしれない。薬物治療の基本は高用量ステロイドステロイドに抵抗性のALPにはシクロフォスファミド、免疫グロブリンあるいは血漿交換を要するかもしれない。


 
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