CADMの間質性肺炎(IP)の治療について触れておきます。Uptodateには記載がないですからね。
まずは定義をちゃんとしておきましょう。
CADMの定義は皮膚科医からのもので、典型的な皮膚症状が出現しても半年以上筋症状を認めないもの(あるいは検査異常のみ)とされました。
IP合併のPM/DMにおいて、1 year survivalがCK上昇群89% vs CK正常群31%と。
その後、同様の症例報告が相次ぎ、この薬が効いたなど、あの薬の方がよいなど・・・
2008年、DMのAcute/subacute IPに対し、早期からシクロスポリン(CyA)を導入し、C2(2時間後の血中濃度)を1000に維持することで、IP-survivor が3/7 → 8/9 に改善したと報告されました。5例が呼吸不全(PaO2 < 60)の状態でしたが、4例がIPをsurviveし、PaO2 > 60の4例は全例助かりました。
治療の効果とはRCTをしない限り分かりませんので、この報告は「質の低い比較試験」としか言えません。しかし、Available bestでやっていくしかないのです。リウマトロジストはこの方法に従って早期からCyAを開始していますが、呼吸不全がない限り上手くいっています(n=5くらい)。
最近、同じ施設より、朝食前に1回投与するとC2を保てると報告され、この方法も普及しつつあると思われます。
10年前のリウマチ学会総会のPM/DMの部屋をのぞくと、シクロスポリン派とシクロフォスファミド派がよく口論していたものです。
シクロフォスファミドは施設の経験が大切なのかなと思います。もちろん、症例報告とシリーズ報告はシクロスポリン同様たくさんあります。しかし、症例報告 < 観察研究(nを増やしたもの;シリーズ) < なんらかの比較をした試験 < RCTなのです。
あるPM/DMのIPの研究において、シクロフォスファミドを投与した17例のうち、全例がsurviveしたというものがあります。しかし、Methodをみますと、4週間毎に6回投与した症例に限っており、薬が効いて半年間surviveした可能性は否定しませんが、NSIP※がかなり含まれていたと考える方が自然かと思います。
※NSIP(非特異的肝質性肺炎)とは多くは月~年単位の緩やかな進行を認めます。長期的な予後は今一なのですが、短期的な予後は今回のテーマであるRapidly progressive IPよりも、ずっと良いです。組織学的な証明のあるPM/DMのIPのうち、8割がNSIPであったという報告もあります。
CADMであっても、NSIPと思われる陰影は予後が良いことが前回触れた報告で述べられています(13例全例がsurvive)。
このように、PM/DMの予後不良のIPを勉強するとき、研究対象となった集団が自分の患者にマッチするのかを見極めなければなりません。つまり、「予後不良IPと思われる集団」を対象とした研究の結果がほしいのです。組織診断は難しいでしょうから、せめてAcute or subacute IPを対象としてほしいところです。
なので、リウマトロジストのシクロフォスファミドに対する考えは第2選択です。経験的には一例、CyAの効果不十分例にIVCYをかぶせ、切りぬけたことがありますけどね。
タクロリムス(Tac)についても、まだデータ不足です(症例報告やnの少ないシリーズのみ)。
抗ARS抗体症候群のIPにTacを投与した13例において、全例にFVCの改善を認めたという報告がありますが、抗ARS抗体症候群はCADMとは異なること、抗ARS抗体はCADM-140抗体とは共存しないこと(その筋のExpert's opinion)から、CADMの治療方針には影響しません。惑われませんように。
最近、京都大学のグループより、初期より十分量のステロイド、シクロスポリン、エンドキサンを併用し治療開始することで予後がずいぶん改善したという話を聞きました。まだ、Expert's opinionなので自分の治療方針に影響はしていませんが、今後の論文化が楽しみです。
以上、まとめますと、
シクロスポリン・・・「質の低い比較試験」にて、良い成績
シクロフォスファミド・・・「観察研究」において、良い成績
タクロリムス・・・「観察研究」において、良い成績
併用・・・「観察研究」において、予後50%
長文、おつかれさまでした。