リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

TNF阻害薬による非感染性肺病変

1)間質性肺疾患(ILD
 
2)リウマチ結節
一般に肺のリウマチ結節は0.5-7cmの境界明瞭な結節・腫瘤状陰影とされている。通常、胸膜に隣接する肺野末梢に位置し、多発性であることが多い1)。結節・腫瘤状陰影は結核や真菌を含む感染症、悪性腫瘍の可能性もあるため、気管支鏡検査やvideo-assisted thoracic surgery (VATS)の適応も一考すべきである。
TNF阻害薬投与中に起きる結節・腫瘤状陰影は感染性のものを除くと、リウマチ結節と後述する肉芽腫性病変(サルコイド様反応)に分かれる。TNF阻害薬投与中に発生したリウマチ結節9例の報告によると、TNF阻害薬の内訳は、エタナセプト(ETN)6例、インフリキシマブ(IFX)2例、アダリムマブ(ADA)1例であった2)9例中6例においてTNF阻害薬を中止、2例において継続されたが、いずれも改善したか、陰影の悪化を認めなかった。症状は咳、呼吸困難などであるが、半数は無症状であった。なお、リウマチ結節は既述の通りRA自体で起きる肺病変のひとつであるとともにMTXの副作用としても知られており、これらの可能性も考慮すべきである3)
 
3)肉芽腫性病変(サルコイド様反応)、およびサルコイドーシス
リウマチ結節はRA患者にしか起きないが、肉芽腫性病変(サルコイド様反応)はRAに限らない。TNF阻害薬投与中にサルコイド様肉芽腫を来した10例の報告によると、疾患の内訳はRA 4例、血清反応陰性脊椎関節症6例(AS 4例、乾癬性関節炎1例、SAPHO 1例)であった。投与されていたTNF阻害薬の内訳はETN5例、IFX3例、ADA2例とETNで多く1)RA患者に限った報告によると14例中全例がETNであった2)。非感染性の肉芽腫性病変がETNに多いことは、肉芽腫に対する作用が抗TNFα抗体製剤と異なるためと考えられ興味深い2)。この合併症の頻度はフランスでは0.04%と推測されているが、同国のサルコイドーシスの発生率よりも200倍以上高く、TNF阻害薬の寄与は明らかである4)。前述のサルコイド様肉芽腫10例の報告において1)ACE高値を6/10に、肺陰影を7/10、縦隔または肺門リンパ節腫大を7/10に認め、薬剤によらないサルコイドーシスと区別がつかない。治療に関しては、10例のうち9例がTNF阻害薬を中止され、1例がETNを継続された。2例にステロイド投与を要したが、全例において改善するか、陰影の悪化を認めなかった4)
TNF阻害薬投与中のサルコイド様反応は結節状陰影のほかに、縦隔リンパ節腫脹やスリガラス状陰影を含む間質性陰影を呈することがあるため、注意を要する2)4)5)
 
4)その他の非感染性呼吸器障害
TNF阻害薬投与中にループス様症候群、血管炎といった自己免疫性疾患が発症することがあり、これらは肺病変を来しうる。TNF阻害療法中に発症したSLEまたはループス様症候群92例のレビューによると、漿膜炎が12%に認められた6)TNF阻害薬投与中に漿膜炎と肺病変を認めたループス様症候群、血管炎による肺胞出血が報告されている7)8)
 
 
ref
1) Müller NS, Fraser RS, Lee KS, et al. CONNECTIVE TISSUE DISEASES, DISEASES of the LUNG, Lippincott Williams & Wilkins: pp136-155, 2003