リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

CASPERではなく、CASPAR

< 乾癬性関節炎 >
 
乾癬性関節炎の診断は、2006年に報告されたCASPARの分類基準を参考にしましょう(特異度98.7%、感度91.4%)。
 
CASPAR基準を満たすためには以下の5カテゴリーのうち、3ポイントを満たす炎症性関節性病変(関節、脊椎、or付着部炎)を有する必要があります。
 
1. 現在の乾癬のエビデンス†、個人的の乾癬の既往、or乾癬の家族歴。現在の乾癬とはリウマトロジストや皮膚科医で判定された現存する乾癬性皮疹or頭皮疾患。個人の既往歴とは患者、家庭医、皮膚科医、リウマトロジスト、その他のヘルスケアプロバイダーによって得られた既往歴と定義される。家族歴とは患者の報告による一親等か二親等の乾癬の病歴と定義される。
 
2.現在の身体所見における爪甲離床症、pitting、過角化を含む典型的な乾癬性爪不全
 
3.ラテックス法以外のRFELISAnephelometry(比濁法)が好ましいが、RFがローカルの参照値に応じ陰性であること。
 
4.指全体の腫脹で定義される現在の指炎、あるいはリウマトロジストによって記録された指炎の既往
 
5.レントゲンにおける関節周囲の新たな骨形成のエビデンス。手指や足趾のX線においてぼんやりした骨形成(ただし、骨棘形成は除外する)
 
Current psoriasis is assigned a score of 2; all other features are assigned a score of 1.
 
(→今も昔も家族の爪はデラックスと覚える)
 
 
この基準では乾癬の存在が診断に大きく寄与しますので、乾癬がない人は満たしにくいです。
 
 
では、どういう時に疑って、どういう病歴や身体所見を注意すればよいでしょうか?
 
 
Uptodate19.2 “psoriatic arthritis” - Relation between arthritis and skin lesionsよりfeedbackしておきます。
 
定義上、乾癬性関節炎の患者は乾癬のevidenceを有さなければならない。多くの患者で関節炎は皮膚症状の出現に遅れ、診断に迷うことはない。しかし、関節炎が乾癬に先行することが約13-17%あり、皮膚症状があっても診断がついていないケースがさらに15%ある。
 
この状況下では、特定の臨床像から“乾癬のない乾癬性関節炎(psoriatic arthritis sine psoriasis)”の存在を疑う。
 
•末梢関節の障害
•非対称性の分布
•可能性のある爪病変(爪甲離床症)や隠れた乾癬プラーク
 
以下の所見も“乾癬のない乾癬性関節炎”の患者を特定するのに有効であると示唆される。
 
Dactylitis(指炎)
•乾癬の家族歴
HLA-Cw6の存在
 
爪変化は関節炎に至るリスクが高い乾癬の患者を特定するのに役立つかもしれない。これらは乾癬性関節炎の80-90%の患者に出現するが、関節炎のない乾癬の患者には46%にしか認めない。
 
乾癬性関節炎が重症の乾癬の患者においてよりコモンであるとする研究がいくつかある。しかし、乾癬の活動性と関節炎の症状との関連に気付いているのはごく一部である。たとえば、重症の乾癬性関節炎の患者の多くが皮膚病変がわずかであったり、逆に重症の皮膚病変をもちながら、関節炎がないか、ごくわずかである患者もいる。
 
 
また、乾癬性関節炎は血清反応陰性脊椎関節症の仲間なので、以下を念頭にH&Pを追加しておきたいところです。
 
Psoriatic arthritis(乾癬をさがす;頭髪部、外耳孔、臀部などの擦れるところ)
Ankylosing spondyloarthritis(脊椎の症状、仙腸関節炎などの軸関節の症状、身体所見)
Reactive Arthritis (下痢、尿道炎の既往)
SAPHO(にきび、掌蹠膿疱症、骨炎の既往)
Undifferentiated
(→PARISUと覚える)
 
ps;CASPAR基準です。オバケのCASPERと間違えないように!