リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

潜在性結核の治療にリファンピシンを使うとき

(2012年3月)
 
 
潜在性結核に対する予防投薬は、リウマトロジストにとって共通の認識になってきております。
 
まずはイスコチン(INH)を使うのですが、肝障害で中止せざるおえないことをしばしば経験します。
 
つぎに、リファンピシン(RFP)を考慮するわけですが。。
 
 
注)オタク度(+++)
 
 
Clinical scenario
70歳女性の速進行性糸球体腎炎、陳旧性肺結核S/o
 
※実際のケースを一部アレンジしております。
 
ステロイド、エンドキサンパルス療法の寛解導入療法を開始して3ヶ月。。CRPANCAは陰性化しCr2<1に低下したものの、尿RBCが持続している。現在、PSL10mg、エンドキサンパルス10mg/kg/3wで治療中である。
 
治療前、陳旧性Tbらしい所見を認めたため、INHの予防投与を行っていた。
 
この度(治療3ヶ月)、はじめて肝障害を認めた;AST 223, ALT 391, LDH213, ALP289LDH, ALPは正常)
 
INHの肝障害を疑い、同剤を中止したところ1週間後、AST 45, ALT 109と改善傾向を認めた。
 
INHの治療期間6-9ヶ月に及ばなかったため、RFPを開始しようと判断した。
 
 
 
<疑問>
リウマトロジストがRFPを使うとき、注意しておくべき点があります。この薬はステロイド代謝を亢進させるため、リウマチ性疾患に対する治療が不十分になってしまう可能性があるのです。
 
結核治療に関するATS/CDC/IDSAガイドライン2003年)によると、
 
TABLE 12. Clinically significant drug–drug interactions involving the rifamycins*
 
Corticosteroids; Monitor clinically; may require two- to threefold increase in corticosteroid dose (58).
 
ステロイドの投与量を2-3倍に増やす必要があるかもしれない」
 
とあります。
 
そんなことをして、本当にいいのでしょうか?
 
 
 
<疑問を解決する>
ガイドラインには、その記載をするに至った根拠が引用されています。
 
58. Br Med J (Clin Res Ed). 1983 Mar 19;286(6369):923-5.
Rifampicin reduces effectiveness and bioavailability of prednisolone.
 
を読んでみましょう。
 
AbstractMethodTableだけで十分です。
 
対象は、PSLのみ投与中、PSLRFP投与中の2つの機会でPSL濃度を測定できた5例、PSLRFPの時のみ測定した2例の計7例です。
 
 
Pharmacokinetics of PSL in 7 patients during treatment with & without RFP
 
Prednisolone alone   AUC 2699 ±1015
 
With Rifampicin;      AUC 1333 ±169
 
 
Area under curve (AUC)とは血中濃度を経時的に測定し、その曲線の下にできる面積のことです。体循環血液中に入った薬物量に比例するため、体内に取り込まれた薬の量を示す指標として用いられます。
 
研究の質はともかく、RFPによってPSLAUCがかなり下がるということは確かなようです。
 
論文の結語はこうでした。
 
今回の結果は恐らく全ての種類のステロイド剤に言えることであろう。Rifampicinは抗結核剤として極めて有用な薬であるため、結核の治療法を変更できないのであれば、ステロイド剤を少なくとも倍量にすることがもうひとつの選択肢になるかもしれない。
 
 
 
Senario caseの経過>
RFP開始とともに、PSL10mg20mgに増量した。
 
心配する患者に、「あなたの体のなかでは、これまで通りですよ」と説明した。 
 
 
 
ps;RFPの予防投薬についてはこちら;3-4ヶ月のレジメンが報告されています