EULAR recommendation; 2016 updateについて勉強をしています。
2013年のEULARrecommendationのアルゴリズムでは、ステロイドの使用が(±)でしたが、2016年では(+)に取って代わられました。では、ステロイドをどういう条件で推奨するのか、詳しくみていきましょう。
ステロイドの推奨文であるrecommendation 6を訳します。
※2013 EULARの低用量ステロイドの推奨
後半は、そのステロイドの推奨に対するletterをご紹介します。
<EULAR 2016 本文よりRecommendation 6>
csDMARDsを開始・変更する際に短期のGCをさまざまな投与方法考慮すべきである。しかし、臨床的に可能であればできるだけ急速に減量すべきである。csDMARDsと併用されるGCの追加された効果は確立されている。実際にこれまでにGC+csDMARDをbDMARD+csDMARDと比較した全てのtrialは同等の効果を示した(146Best, 147Idea)。
146. the IDEA study
147. the BeSt study
2013年、GCはrecommendation 7で扱われたが、言い回しを変えた: 低用量GCは初期の治療戦略の一部として6ヶ月までは考慮されるべきである(ひとつ以上のcsDMARDsとの併用で)。しかし、臨床的に可能な限りできるだけ急速に減量すべきである。
現在の表現はTask forceの議論の間に挙がった懸念と提案のほとんどをまとめるための妥協案を構成する。low-doseは批判的にdiscussionされた。Task forceのメンバー全てが高用量は長期に使用すべきでないことに同意をしたが、low-dose(7.5mg/day以下を意味する)のラベルはTask forceの数人には好まれたが、現在のGC適応のいくつかの投与法を包括しないことは明らかであった。
実際に最近のtrialsは短期GCではあるが、>7.5mg/day、すなわち初期量30mgの効果を示した。mPSL120mg筋注、mPSL250mg静注。そのためlow-doseは削除され、short-termで代用された。そうすることでdose regimens and routes ofadministrationの選択肢を個々のリウマトロジストと患者に残した。実際に筋注や静注はoralの低用量よりもずっと少ない積算量となることが議論された。しかしこの見解は全てのTask forceメンバーにシェアされなかった。
もうひとつの変化はinitial strategyの代わりに、csDMARDsを開始または変更するときに、と変更したことである。この変化はTask forceの意図を明らかにしたものである;GCは全てのcsDMARDsを開始するときに考慮されるべきである;診断して最初に開始する時または最初の治療が失敗した時のいずれも。最終的にcsDMARDsが既述されたのはGCは典型的にはbDMARDsまたはtsDMARDsを使用されるときのbridgeとして記載されないといけないわけではないことを意味する。これらは急速な行動の発生を通常有し感染リスクが高められるかもしれないため。このようにTaskforceがGCの使用をcsDMARDsとの併用で推奨すること、csDMARDsの効果が最大に達するまでのbridging therapyとして初期に推奨することを繰り返し述べることが大切だ。そして、ステロイドの使用は上述のevidenceがある投与法・減量方法のうち一つを用いることでなされるべきだ。Task Forceのpositionを反映するためFigure 1のアルゴリズムは過去の±よりも+を示すよう修正された。
臨床的に可能な限り速やかに減量すると述べることでTaskforceはGCを徐々に減量し通常3ヶ月以内に、例外的に6ヶ月までに中止するべきであることを強調する。長期のGC使用、とくに5mg/dayを肥える使用は避けるべきだ。なぜなら多くのリスクがSLRで示されているからだ。これらのリスクとの関連のいくつかは高活動性の患者に適応されるという交絡によるものかもしれないが、全体的死亡と心血管系死亡が7.5mg/dayの閾値、または積算40gを超える投与量の閾値において示されている。とくにcsDMARDsに効果不十分の患者にGCを単剤で使用することは良い効果につながらず、副作用に関連する。さらにもしGCが上述の期間以内に中止されなければDMARD治療は失敗と考えられるべきかもしれない。最終的にGCの関節注射は炎症が残った関節や再活発化の関節のような特定の状況で考慮されるべきかもしれない。
Taskforceのメンバーの数人はGCの選択を少数の患者の可能性として推奨した;しかし、この提言は大多数によって承認されなかった。GCに関する箇条書きは過去数年でほとんど十分に議論されてきたが、最終的な表現は98%の投票を獲得した。しかし、LoAは過去のversionと一致してずっと低かった(8.7)。この比較的低いLoAは、多くのTaskforceのメンバーがこの件は自由すぎてGCの使用をより厳しくすべきであると感じていることを表したものだ。一部は厳しすぎるという意見であったが。
<ステロイド推奨に対するCorrespondence letter>
↓は(±)が(+)になったことを受け、日本人RA患者における低用量ステロイドに関する懸念を述べたCorrespondence letterです。Recommendationは、関節注射や静注も含んでよいことになっていますが、low-doseの経口ステロイドを開始したとしても「ステロイドは3ヶ月以内、例外的に6ヶ月まで」とクギが刺されていますので、ステロイドを処方する際は心得ておきたい点です。
日本の多施設コホート研究で、生物製剤を開始された患者が前向きに登録されました。入院を要した感染症のHRはPSL ≥7.5 mg/日で3.56 (2.15–5.88)、≥5 <7.5 mg/日で1.88 (1.10–3.22)でした。
TCZの全例調査ではPSL>5mgの使用はPSL 0mgと比べ重症感染症のOR 2.791 (1.581-4.921)でした。
IORRAにおいてPSLの使用は死亡リスクを高めました。1–5 mg/日でHR 1.7, 6–10 mg/日で2.4、>10 mg/日では4.2でした。
<まとめ>
2013年のEULARrecommendationのアルゴリズムでは、ステロイドの使用が(±)でしたが、2016年では(+)に取って代わられました。これは「使わなければならない」という意味ではなく、あくまで「短期に限って」「様々な投与方法」で「考慮すべき」であるという意味です。Low-doseに限らず関注、静注・筋注も含めて推奨されています。
日本では、Low-dose GCが感染症を増やすというコホート研究の結果が多くあります。重大なアウトカムである死亡に関しても、PSL 1-5mg/日でリスクが上昇するとも報告されています。このPSL 1-5mgという閾値は欧米における閾値(※)よりも低く、日本のRA患者では5mgは大丈夫とは言えないのです。日本のEstablished RAの比較的低体重(平均で50kg台前半)が関連しているのではないかと思っています。
・UKのGeneral physicianの大規模コホート(n=16762)において、PSL 5.0–7.4 mg/日で死亡のadjusted HR 1.44 (1.26–1.64)に上昇
ps;Smolen先生からのお返事です。ステロイドの使用にあたっては‘short-term’と‘different routes of administration’を再度述べられ、国によっては多少のrecommendationの変更をしながらベストな治療を。と述べられました。