リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

血管炎の定義-CHCC2 Definition-

(2012.4/8)
 
 
3月、AP-VASという血管炎の国際学会が日本で開かれました。
 
2011年のChapel hill国際会議(CHCC2)で、ウェゲナー、チャーグ・ストラウスの名前がなくなったことを以前、お知らせしました。1994年のChapel hill会議のNomenclature(用語体系)が17年ぶりに改訂されたのです。
 
この度、CHCC2 Definitionのについて詳細が分かったので、お知らせします。
 
あくまで、draft(草案)であって、2012年のArthritis Rheumに投稿の準備中であるとのことです。
 
RAの分類基準の改定と同様、歴史の変わる瞬間です。
 
正確には、血管炎の場合、この度の定義を決めるのとは別に、診断基準・分類基準を作るための臨床研究が進行中です。
 
 
リウマトロジスト@花よりANCA
 
  
 
CHCC2 Definitions (preliminary draft not for publication or citation)
 
CHCC2 Names
 
Large vessel Vasculitis (LVV)
 
Takayasu Arteritis
 
Giant Cell Arteritis
 
 
Medium Vessel Vasculitis (MVV)
 
Polyarteritis Nodosa
 
Kawasaki Disease
 
 
Small Vessel Vasculitis
 
ANCA Associated Vasculitis (AAV)
 
Microscopic Polyangiitis
 
Granulomatosis with Polyangiitis (Wegener’s)
 
Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis (Churg Strauss)
 
Immune Complex Vasculitis
 
Anti-GBM Disease
 
Cryoglobulinemic Vasculitis
 
IgA Vasculitis (Henoch-Schonlein)
 
Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis (Anti-C1q Vasculitis)
 
 
Variable Vessel Vasculitis (VVV)
 
Behcet’s disease
 
Cogan’s disease
 
 
Single Organ Vasculitis (SOV)
 
 
Vasculitis Associated with Systemic Disease
 
 
Vasculitis Associated with Probable Etiology
 
 
 
大血管炎(LVV
大きな動脈を他のサイズの血管より高頻度に侵す血管炎。大血管とは大動脈とその主な分枝。いかなるサイズの動脈も侵されて良い。
 
高安大動脈炎;動脈炎がしばしば肉芽腫形成を伴い、おもに大動脈and/orその一次分枝をおかす。通常発症は50歳未満。
 
巨細胞性血管炎;動脈炎がしばしば肉芽腫形成を伴い、通常、大動脈and/orその一次分枝をおかす。頚動脈と椎骨動脈の分枝を好んで侵す。しばしば側頭動脈を侵す。発症は通常50歳よりも高く、しばしばリウマチ性多発筋痛症を合併する。
 
 
中等度のサイズの血管炎(MVV
臓器の主な動脈とそれらの分枝と定義される、中等度のサイズの動脈をおもに侵す血管炎。いかなるサイズの動脈もおかされてよい。炎症性動脈瘤とと狭窄がよく起きる。
 
結節性多発動脈炎;中等度のサイズ、または小動脈の壊死性動脈炎。糸球体腎炎を伴わず、細動脈、毛細血管や細静脈の血管炎を伴わない。ANCAとは関係しない。
 
川崎病;粘膜皮膚リンパ節症候群と関連する動脈炎であり、おもに中等度のサイズの動脈と小動脈を侵す。冠動脈がしばしば侵される。大動脈と大きな動脈が侵されるかもしれない。通常、幼児と若い子供に起きる。
 
 
小血管炎(SVV
実質内の小さい動脈、細動脈、毛細血管、細静脈と定義される小さい血管をおもに侵す血管炎。中等度のサイズの動脈と静脈が侵されてもよい。
 
ANCA関連血管炎(AAV
免疫物質の沈着が全くないかほとんどみられない壊死性血管炎で、おもに小さいサイズの血管(例えば、毛細血管、細静脈や細動脈)を侵す。MPO-ANCAPR3-ANCAと関連する。全ての患者がANCAを有するわけではない。前にANCAの反応性を示すこと。たとえば、PR3-ANCA, MPO-ANCA, ANCA-negativeと言う具合に。
 
顕微鏡的多発血管炎(MPA);免疫物質の沈着が全くないかほとんどみられない壊死性血管炎で、おもに小さいサイズの血管(例えば、毛細血管、細静脈や細動脈)を侵す。小さい動脈と中等度のサイズの血管を侵す壊死性動脈炎があってもよい。壊死性糸球体腎炎が非常によくある。肺の毛細血管炎もしばしば起きる。肉芽腫性炎症はない。
 
多発血管炎性肉芽腫症(Wegeners)(GPA);通常上気道と下気道におきる壊死性肉芽腫性炎症と小~中等度のサイズの血管(毛細血管、細静脈、細動脈、動脈、静脈など)をおかす壊死性血管炎。壊死性糸球体腎炎はよくある。
 
好酸球性肉芽腫性多発血管炎;しばしば気道を侵す、好酸球に富んだ壊死性肉芽腫性炎症、および小~中等度のサイズの血管をおもに壊死性血管炎。喘息と好酸球上昇と関連する。ANCAは糸球体腎炎があれば頻度が高くなる。
 
免疫複合体性血管炎
免疫グロブリンand/or補体成分が中等度から明らかに血管壁に沈着した血管炎で、おもに小血管を侵す(毛細血管炎細静脈、細動脈、小動脈)。糸球体腎炎はよくある。
 
抗糸球体基底膜病;糸球体の毛細血管、肺の毛細血管、あるいは両方侵す血管炎。基底膜に抗基底膜抗体の沈着を伴う。肺病変は肺胞出血を呈し、腎病変は壊死と半月体形成を伴う糸球体腎炎を呈する
 
クリオグロブリン血症性血管炎;クリオグロブリンの免疫沈着を伴う血管炎で、小さい血管を侵す(毛細血管、細静脈や細動脈)。血清にクリオグロブリンが存在する。皮膚、糸球体、末梢神経がしばしば侵される。
 
IgA血管炎(Henoch-Schonlein);IgA1優位の免疫沈着を有する血管炎が小さい血管(おもに毛細血管、細静脈や細動脈)を侵す。しばしば皮膚と消化管を侵し、しばしば関節炎を起こす。IgA腎症と見分けのつかない糸球体腎炎が起きてもよい。
 
低補体血症性蕁麻疹性血管炎(抗C1q血管炎);蕁麻疹と低補体血症を合併し、小血管(毛細血管、細静脈や細動脈)を侵す血管炎。抗C1q抗体に関連する。糸球体腎炎、関節炎、閉塞性肺疾患、眼の炎症がよくある。
 
 
多彩な血管の血管炎(VVV
主に侵される血管とくにない血管炎で、いかなるサイズの血管(小、中、大血管)、タイプ(細動脈、細静脈、毛細血管)も侵しうる。
 
Behcet病;ベーチェット病の患者におきる血管炎で、動脈や静脈を侵しうる。ベーチェット病は口腔・外陰部の再発性アフタ性潰瘍で特徴づけられ、皮膚、目、関節、消化管and/or中枢神経に炎症を起こす。小血管炎、血栓性血管炎、血栓症、動脈炎と動脈性動脈瘤が起きてもよい。
 
Cogan症候群;コーガン症候群の患者に起きる血管炎。コーガン症候群は間質性角膜炎、ぶどう膜炎、上強膜炎を含む目の炎症性病変と感音性難聴と前提機能不全を含む内耳病変に特徴づけられる。血管炎の症状には小動脈、中等度の動脈、大きな動脈を侵す動脈炎、大動脈炎、大動脈瘤、大動脈弁と僧帽弁の弁膜炎がある。
 
 
単一臓器の血管炎(SOV
単一臓器の様々な動静脈の血管炎で、全身性血管炎の限局した表現であることを示唆する所見がないもの。侵される臓器と血管のタイプは名前に含まれるべきである(たとえば、皮膚小血管炎、精巣動脈炎、中枢神経血管炎)。血管炎の分布はその臓器のなかで単巣性でも多巣性(びまん性)でもよい。はじめにSOVと診断された患者のなかには、全身性血管炎のひとつであることを再度決定づけるような症状が加わるものもいるだろう(皮膚動脈炎が後に全身性の結節性多発動脈炎になるなど)。
 
 
全身性疾患に合併する血管炎
全身性疾患に関連する、あるいはそれによって二次的に引き起こされる血管炎。血管炎の名前(診断名)にはその全身性疾患を示す接頭語を含めなければならない(たとえば、リウマチ性血管炎、ループス血管炎)。
 
 
可能性のある原因と関連した血管炎
血管炎の原因としてありそうな特異的な原因と関連した血管炎。血管炎の名前(診断名)は関連を特定する接頭語を含むべきである(ヒドララジン関連の顕微鏡的多発血管炎、B型肝炎ウイルス関連血管炎、C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症性血管炎など)。
 
 

 

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