(2012.5月)
よく議論になります。
くりかえし訪れるこのシチュエーションに、自分なりの見解をもっておきたいものです。
<Clinical senario>
不明熱で入院した60歳女性。
※実際のケースを一部アレンジしております。
SLEの一般的な説明、ステロイドの副作用の説明をした後、患者さんから質問された。
「中枢神経障害がとくに心配です。頻度はどのくらいですか?」
ここで不安がよぎった。
Treatment of the antiphospholipid syndrome
‐SLE with aPL
を読んでみよう。
「抗リン脂質抗体(aPL)陽性のSLE」
aPLが陽性のSLE患者は血栓塞栓症and/or習慣性流産のリスクが高い。予防的な治療はそのリスクを下げるかもしれない。aPL+SLEの二つのシリーズにおいて、10-20年のフォローで患者の約20-50%がAPSの基準を満たした(流産or血栓症を起こして満たしたということ)。
また、私たちは第13回抗リン脂質抗体国際会議における、aPL(+)SLEのためのタスクフォースの推奨を支持する。
・定期的なaPLの測定。タスクフォースは定期的な測定を定義しなかったが、私たちはaCL-IgM、IgG抗体、抗β2GPI抗体、ループスアンチコアグラント(LAC)を最初の評価の時かSLE診断時に測定する(過去に測定されていなかったら)。フォロー中、APSの疑いがある患者では測定を繰り返す。
・LACまたは単独の持続的な中等度ー高い値のaCL抗体を有するSLE患者において、ヒドロクロロキン(HCQ)と低用量アスピリンを初期の予防法とする。HCQはいくつかの研究とシステマティックレビューによって支持されている。しかし、HCQとアスピリンの併用療法をプラセボ、あるいは各々の単剤と比較したRCTはない。
・低用量アスピリンの予防投与における利益の可能性は、aPL(+)のSLE患者144例を中央値104ヶ月フォローした観察研究において証明された。その試験で、aPL(+)のSLE患者がaPL(-)のSLE患者144例と比較された。aPL(+)の87例がアスピリンを内服した;予防投与したaPL(+)の患者とアスピリンを長期に内服した患者は血栓症を起こしにくかった。
<Uptodateの孫引き>
(Methodより)
aPL(+)のSLE患者144例を中央値104ヶ月フォローした。コントロール群は性年齢をマッチさせたaPL(-)のSLE患者 144例とし、112ヶ月フォローした。両群の特徴はTable 1のとおり。
aPL陽性とは以下の少なくともひとつが12週以上あけて2回以上陽性であることと定義した:
1) LAC, 2) aCL of IgG and/or IgM isotype in medium or high titer (i.e., >40 IgG or IgM phospholipid units, or >99th percentile), and 3) anti-β2GPI of IgG and/or IgM isotype in titer >99th percentile.(※)
(Resultより)
両群の背景に喫煙歴、アスピリン使用以外に差はなし(26%vs7%、60%vs8%; p<0.001)(Table 1)。これらを含め性年齢補正した後のaPL(+)の患者はaPL(-)にくらべ3.88倍も血栓症になりやすかった。
交絡因子があるかもしれないため、多変量解析をおこなった(Table 2)。
aPL(+)の患者では血栓症に独立して関係していたのは男性、LAC陽性、aCLの持続的陽性であった。さらに、アスピリンは1ヶ月あたりの血栓症発生のリスクを2%低下させた(HR per 1 month = 0.98、p=0.05)。同様にHCQは1ヶ月あたりの血栓症のリスクを1%低下させた(HR per 1 month = 0.99、p=0.05)。
<Senario caseの経過>
Uptodateの著者の推奨にある「心血管系の危険因子や家族歴」はなかったが。
リウマトロジストは、RCTがちゃんと行われていないセッティングに出くわすことが多い。しかし、その状況で悩みながら選択をしていくのが、また楽しい。