抗リン脂質抗体症候群の臨床所見、その3は皮膚の症状からです。
Livedo racemosa、知っていますか?
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Clinical manifestations of the antiphospholipid syndrome
(つづき)
Cutaneous — aPLは様々な皮膚病変に関連し、線状出血、網状皮斑、皮膚壊死と梗塞、血栓性静脈炎、指の壊死、皮膚潰瘍、血管炎様の変化 ( “pseudovasculitic” nodules, macules偽血管炎性結節・皮斑)、リベドイド血管症(白色萎縮)。
Anetodermaとして知られる正常な弾性組織の損失はしわの入った、あるいは弛緩性の限局性の領域として発症し、SLEとAPSの合併例でも見られる。
脳卒中に網状皮斑が起きる事はSneddon’s syndromeとして知られる。約半数において、Sneddon’s syndromeはaPLが検出される。
網状皮斑 – 26 %
指趾の壊死 – 8 %
線状出血 – 5 %
表在静脈血栓症 – 5 %
静脈炎後の皮膚潰瘍– 5 %
限局性皮膚壊死 – 4 %
血小板減少性紫斑 – 4 %
Pseudovasculitis – 3 %
広範な皮膚壊死 – 2 %
斑状皮膚萎縮 – 2 %
Livedo reticularis — 網状皮斑はAPSにおける動脈の病変と多発性の血栓症に関連する。200例のレビューにおいて、網状皮斑は脳・眼の虚血性イベントに関連した(オッズ比 10.8)。逆に網状皮斑は静脈血栓症飲みを呈する患者では頻度が低かった(オッズ比0.2)。
“livedo reticularis” と “livedo racemosa”という用語に関する文献にはかなりの曖昧さがある。Livedo racemosaは不整and/or円が完全でない皮膚の紫色の網状パターンで特徴づけられる;livedo reticularisの円は完全である。Livedo racemosaは1907年Ehrmannによって名づけられ、より印象的な皮膚病変である。さらに、livedo reticularisは疾患によりもむしろ生理学的な上強においてしばしば起きる。
livedo racemosa と livedo reticularisを臨床的に区別することの重要性は111例のlivedo racemosa、32例のlivedo reticularisの研究に示される。前者は生検で証明された血管炎を有しやすく、若い男性で見られやすかった。また関節痛、より高いCRP値、フォスファチジルセリン・プロトロンビン複合体に対する抗体を有する傾向があった。
Renal disease — 血栓性の腎疾患はAPS患者では少数。糸球体とその他の腎血管、全てのサイズの動脈と静脈が障害されてよい。疾患は潜在性であってもいいし、蛋白尿を伴う急性または慢性腎不全を呈してもよい。詳細は他に示す。
Gastrointestinal disease — aPLを有する患者は食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、大腸の虚血を起こしてもよい。その結果として消化管出血、腹痛、急性腹症、食道壊死・穿孔、あるいは巨大胃潰瘍、非典型的な十二指腸潰瘍を来たしてもよい。脾または膵臓の梗塞も起きて良い。さらに肝臓も侵されることもある;肝静脈・門脈血栓症はBudd-Chiari症候群、間静脈閉塞性疾患、肝梗塞、門脈圧亢進症、肝硬変の原因になる。
Ocular manifestations — 一過性黒内障、網膜静脈・網膜動脈閉塞、そして前部虚血性視神経症がaPLの患者に起きている。aPLの存在は眼の血管閉塞性の病気の危険因子であるかもしれない。この関係は眼の血管閉塞性の病気の68例と対照の94例(炎症性の眼の病気45例、49例の健常人)からなる症例対照研究で示された。抗カルジオリピン抗体やLA活性は眼の血管閉塞性疾患の24%で見られたのに対し、炎症性の眼の病気
では9%、健常人では8%だった。
Adrenal disease — 副腎不全の結果として腹痛と筋力低下が出現するかもしれない。副腎機能の損失は副腎出血によるものであることが最も多い。より頻度は低いが、両側性の副腎不全が原因であることもある。腫大した副腎や隣接する腫瘤がCTで見られるかもしれない。しかし、MRIが副腎出血の年齢とを見分けるのにより有効かもしれない。また副腎腫大のその他の原因を出血から鑑別するために有効かもしれない。
Osteonecrosis — 原発性APS患者において無症候性の大腿骨頭の変化がMRIで見られる。これらの所見は骨壊死を示唆すると解釈される。しかし、ある報告の対象となった30例のうち、単純X線上変化は認められた者はおらず、続いて行ったMRIでも進行性の変化が見られた者はいなかった。このように骨壊死とaPLの存在との関連性の自然史は不明。
Catastrophic APS — APSのごく一部は劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)と言われる多臓器不全に至る広範な血栓症を呈する。分類のために提案された暫定的な基準が過去に報告され、妥当なものとされた。付加的な診断アルゴリズムがCAPSの早期診断のために提案された。提案されたアルゴリズムにおける最も重要なステップには以下が含まれる:
APSの既往and/or aPLが陽性であったこと
1週間以内に3臓器以上の新たな血栓症
微小血栓の組織学的な証明
CAPSの患者はDICでより典型的に見られるFDP上昇、フィブリノゲン低値、Dダイマー高値のようなラボデータを有する。
CAPSはしばしば致命的であり、報告された死亡率は抗凝固療法と免疫抑制療法にもかかわらず、50%に達する。治療は別に示す。
Primary APS versus APS with SLE — いくつかのデータは原発性APSとSLEに合併するAPSの臨床所見は似通っていることを示唆する。これとは反対に追加的な122例の研究は動脈血栓症、静脈血栓症、胎児損失の頻度は原発性APSよりもSLE-APSの患者で多いと報告した。
5年で0 %
6.5年で4 %
9年で13 %
MORTALITY — aPLの存在はSLE患者において独立した早い死亡の危険因子であると分かった。これはSLE患者667例の観察研究で示された。そのうち49例が死亡している。aPL、血小板減少、動脈閉塞を有する患者は早い死亡のリスクが上昇していた。早い死亡に関連するその他の因子は抗凝固療法の強さ、腎障害、胸膜炎、疾患活動性であった。
早期死亡のリスクのいくつかは血栓塞栓症の起こしやすさによるものであるが、いくつかの状況においてaPLの存在自体が死亡率上昇のマーカーであるかもしれない。たとえば、最初の脳梗塞を呈した連続した300例の研究においてaPL(IgG aCL >20 units)高値の脳卒中はaCL低値や陰性の患者と比べ約2年間のフォローにおける死亡率が高かった (33% vs 18%, 相対危険度1.94, 95% CI 1.05-3.67)。しかし、死亡率の増加は脳卒中の再発によるものではなく、aPLを有する患者のその他の特徴に関連した。これには悪性腫瘍の率が高いこと、冠動脈疾患のよく知られた危険因子が多かったことが含まれた。
INFORMATION FOR PATIENTS — 略
SUMMARY
APSは二つの要素から定義される。
少なくともひとつの臨床所見:血管イベントまたは妊娠合併症。
少なくともひとつの抗リン脂質抗体として知られる自己抗体が12週以上離れた2回において検出されること。
加えて、APSの分類基準の一部にはなっていないが、網状皮斑、血小板減少症、心臓の弁疾患、aPL腎症のようなaPLに関連した臨床所見がある。
aPLは陰性荷電のリン脂質に結合する血清タンパクに直接対応する抗体である。
Lupus anticoagulant tests
Anticardiolipin antibody ELISA
Anti-beta-2 glycoprotein-I ELISA
血栓症はAPSの最もコモンな臨床所見。静脈血栓症において最もコモンな場所は腓腹部の静脈のDVT;腎静脈;肝静脈、腋窩、鎖骨下、網膜静脈;脳静脈洞;大静脈。肺塞栓症もこれらの血栓症の結果として起きてよい。
血栓症はAPSの最もコモンな臨床所見。静脈血栓症において最もコモンな場所は腓腹部の静脈のDVT;腎静脈;肝静脈、腋窩、鎖骨下、網膜静脈;脳静脈洞;大静脈。肺塞栓症もこれらの血栓症の結果として起きてよい。
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