リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

LoVASの批判的吟味(20231013)

日本で行われたOpen-label RCT、LoVASを読んでみます。

標準的な1.0mg/kgにたいし、Investigationの0.5mg/kgが寛解導入率において同等か否かを調査した研究です。先に行われたPEXIVASは国際的な研究であったため、日本人で適切な投与量を提供してくれる可能性があると思います。

 

6ヶ月

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34061144/

 

Importance

抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に対する現在の標準的導入療法は、高用量のグルココルチコイドとシクロホスファミドまたはリツキシマブの併用である。これらのレジメンは寛解率が高いが、おそらく高用量のグルココルチコイドに起因すると思われるかなりの有害事象を伴う。

Objective

ANCA関連血管炎の寛解導入において、減量グルココルチコイド+リツキシマブレジメンと標準的な高用量グルココルチコイド+リツキシマブレジメンの有効性と有害事象を比較すること。

Design, setting, and participants

本試験は第4相多施設共同非盲検無作為化非劣性試験であった。2014年11月から2019年6月にかけて、重症糸球体腎炎や肺胞出血を伴わない新規診断のANCA関連血管炎患者計140例が日本の21病院で登録された。追跡調査は2019年12月に終了した。

Intervention:患者を、減量プレドニゾロン(0.5mg/kg/日)+リツキシマブ(375mg/m2/週、4回投与)(n=70)または高用量プレドニゾロン(1mg/kg/日)+リツキシマブ(n=70)の投与群に無作為に割り付けた。

Main outcomes and measurements

主要エンドポイントは6ヵ月後の寛解率とし、事前に規定した非劣性マージンは-20%ポイントとした。8つの副次的有効性outcomeと6つの副次的安全性outcome重篤な有害事象と感染症を含む)があった。

Results

無作為化された140例の患者(年齢中央値73歳;女性81例[57.8%])のうち、134例(95.7%)が試験を完了した。6ヵ月時点で、減量群では69例中49例(71.0%)、大量投与群では65例中45例(69.2%)がプロトコール通りの治療で寛解を達成した。両群間の治療差1.8%ポイント(1-sided 97.5% CI、-13.7~∞)は、非劣性基準を満たした(非劣性のP = 0.003)。重篤な有害事象は、減量群の13人(18.8%)に21件発生したのに対し、高用量群の24人(36.9%)に41件発生した(差、-18.1%[95%CI、-33.0%~-3.2%];P = 0.02)。重篤感染症は、減量群では5例(7.2%)に7件発生したが、高用量群では13例(20.0%)に20件発生した(差、-12.8%[95%CI、-24.2%~-1.3%];P = 0.04)。

Conclusion and relevance

新たにANCA関連血管炎と診断された患者で、重症糸球体腎炎または肺胞出血を伴わない場合、グルココルチコイドとリツキシマブの減量レジメンは、6ヵ月時点の疾患寛解導入に関して、グルココルチコイドとリツキシマブの高用量レジメンよりも劣っていなかった。

 

 

論文のPICO

P20歳以上の新規診断のAAVで、MPO-orPR3-ANCAが陽性重症腎炎(eGFR <15 ml/min)、肺胞出血(酸素2L以上)を含まない事。                                                        

I:Reduced PSL regimen                                                    

C:Standard PSL regimen                                                   

O:Primary, 6ヶ月後の寛解% (差の97.5%CIの下限値が-20%より上); 寛解はPSL10㎎以下でBVAS0(但し全項目が残っている場合?は≦1)。Secondary; death%; relapse%; ESKD%; time-to-event for death; relapse; ESKDなど

 

ランダム割り付けされていて、minimisation method of randomisationを用いられています。wikiでは、Minimisation (clinical trials)で登録されていて、randomisationの際、層別化を効率よくする手法のようです

Minimisation (clinical trials) - Wikipedia

 

Open-labelなので盲検化も隠蔽化もなし

 

baselineで腎炎が69.1% vs 53.1%とReducedで多かったようであるが、結果に影響を与える因子とは言えないか....

 

ITT解析ではありませんが、治療を1回でも受けた患者全てを登録するという、full analysis set(いわゆるmITT)を対象としているので良し、です。

 

reduced 70 vs standard 70ですが、sample sizeの計算の際、10%の脱落を見込んで計算されていますので、63vs63でも十分であったところ、結果的に69 vs 65と脱落6例で追跡率は95.7%と良し、です。

 

その結果、49/69 (71.0%) vs 45/65 (69.2%)とその差1.8%で1-sided 97.5%信頼区間は-13.7~∞とnoninferiority margin=20%負ける、という帰無仮説は棄却されました(noninferiority p=0.02)。

 

リウマトロジスト的に重要なポイントである、感染症の頻度は11/69 (15.9%) vs 29/65 (44.6%)と絶対リスク差 28.7%もあり(自己計算でp=0.0003)、NNT=3.5→4と計算されました。

 

24ヶ月

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37734880/

 

Abstract

計134例の患者を分析した。プロトコールに従った治療で寛解を得た患者のうち、減量群では89.7%、高用量群では15.5%の患者がプレドニゾロンを中止した(中止までの期間の中央値はそれぞれ150日と375日)。24ヵ月の試験期間中に、減量群では2例(2.8%)が死亡し、高用量群では5例(7.6%)が死亡した(p=0.225)。再発は減量群で9例(13.0%)(主要2例、軽微7例)、高用量群で5例(7.6%)(主要2例、軽微3例)に認められた(p=0.311)。重篤な有害事象(SAE)は、高用量群(30例54事象、46.2%)よりも減量群(19例36事象、27.5%)の方が頻度が低かった(p=0.025)。

 

24ヶ月の解析においても感染症は 21/69 (30.4%) vs 40/65 (61.5%%) と31.1%の差があり、NNT=3.2→4と計算されました。

 

<リウマトロジストのコメント>

本研究ではPEXIVASと違って肺胞出血や重症腎障害が除外されていますが、中等症までのANCA関連血管炎の日本人患者ではLoVASの方が参考になるでしょう。とくに感染症を有意に減らした事は臨床上、意味があることなので、今後は軽症~中等症ではLoVAS、重症例ではPEXIVASのreduced or standardで行こうと思いました。