リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

SLEの合併症、血球貪食症候群

<Clinical scenario>

51歳女性。関節炎にて前医で治療中。発熱が持続し、ERより入院した。頬部に紅斑を認め、二血球減少(WBC2900, plt15万)、肝障害(AST476, ALT204, LDH781)を認め、フェリチン4189であった。血清学的検査を追加したところ、ANA640倍(homogeneous)、抗dsDNA抗体17↑、ループスアンチコアグラント陽性、低補体血症を認めた。

ACR分類基準を満たし、SLEと診断。血球貪食症候群の合併を疑い、骨髄検査をしたところ、マクロファージによる血球貪食像を認めた。

 

(症例は架空です )

 

 

< 疑問、発生!>

SLEの重大合併症のひとつ、血球貪食症候群を久しぶりに経験しました。最近の治療指針を確認したかったので、pubmedで検索式、

(lupus[title]) AND (hemophagocyt*[title])

でreview論文を探したところ、以下の論文が見つかりました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24343456/

 

では、いただきまーす!

 

 

血球貪食症候群の症例報告と文献レビュー>

Refractory hemophagocytic syndrome in systemic lupus erythematosus successfully treated with intermittent intravenous cyclophosphamide: three case reports and literature review.

Ueda Y, Yamashita H, Takahashi Y, Kaneko H, Kano T, Mimori A.

Clin Rheumatol. 2014 Feb;33(2):281-6

https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10067-013-2451-8

 

Patients and methods

2006.1月~2013.8月の間、免疫抑制療法のために当院に入院したSLE129例を対象とした。全例ACR1997基準を満たした。3例が骨髄検査・生検で診断された難治性Acute lupus hemophagocytic syndrome (ALHS)。

Medline databaseを用いて、文献レビューを行った。検索語は 

“Hemophagocytic syndrome,”

“Hemophagocytosis,” 
“Macrophage activating syndrome”

“lupus”
期間は2006 ~2013年。

>18歳の成人で英語か日本語で詳細に記載されているものに限定した。感染症によるHPSは除外した。

報告例と自験の3例において、年齢、性、罹患期間(SLE発症時か否か)、可能性のあるtrigger(感染症ではない)、臨床所見のような臨床背景を評価した。HPSの治療、アウトカムも調べた。

各免疫抑制療法について文献に基づいて効果の判定をした。薬剤が記載されていて、その他の治療法に変更されていた場合、最初の薬剤は無効と判断した。倫理委員会は本研究を承認した。

 

#Case reportsは略します

 

Literature review and assessment of our cases

 

Table 1. Clinical and biological manifestations at the onset of ALHS

 

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2006-2013年、54例が検出された(Table 1)。ALHS発症時の平均年齢は33.2歳±13.3.

  • 23/54(44.2%)がSLE発症時にHPSを合併。
  • 死亡は2例のみ。
  • 自験の3例を含めた57例のうち、ALHS発症時のSLEの臨床所見は様々。難治性糸球体腎炎や神経精神SLEのような主要な臓器の重大なダメージは稀ではなかった。
  • 発熱はほぼ必発。ALHS発症時に無熱であったのは3例のみ(5%)。
  • Laboratory dataでは55/57(96.5%)が二血球or汎血球減少。肝障害はコモンだったが、4/36(11.1%)で肝酵素3つとも正常範囲。
  • 高フェリチン血症48/52(92.3%)、CRP高値33/47(70.2%)、低補体28/36(77.8%)
  • 全例高用量ステロイド療法。16/57(28.1%)で単独。
  • 使用された免疫抑制剤はIVCY 16例、CyA16例、IVIG 12例。

 

Table 2. Characteristics of 16 patients with ALHS treated with IVCY

 

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  • Table 2はIVCYを使用された16例。HCQ、AZA、CyA、RTX、IVIG、PEなどを併用された。
  • IVCYの効果は92.9%(13/14)。ただし併用療法の3例は除外して。
  • CyAとIVIGの有効性は各7/15(46.7%), 5/11(45.5%)。

 

 

<Scenario caseの経過>

ステロイドパルス療法、エンドキサンパルス療法についてICのうえ、開始した。無効な場合、CyAなどへの変更の可能性も説明した。

 

 

ps

↓SLEの緊急病態

 

 

 

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