リウマチ膠原病のQ&A

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EULAR/ACRのSLE分類基準2019

SLE分類基準が1997年の改訂から22年ぶりに発表されました。
 
EULAR/ACRのSLE分類基準2019(Figure 2)を訳します。
 


Figure 2SLEの分類基準
 
エントリー基準
過去にANAHEp-2細胞を用いた検査法で80倍以上、またはそれに相当する陽性結果があること
もしないならSLEと分類しない
あれば、追加の基準に適用する
追加の基準;もしSLE以外でよりよく説明できるのであれば基準の項目をかぞえないこと。1回基準を満たすことがあれば基準を満たしたとするに十分。SLEの分類は少なくとも一つの臨床基準を有し、10点以上有すること。基準は同時に満たされなくても良い。合計スコアに向けて、各々のドメインにおいて最も高い基準を数えること
○臨床ドメインと基準
発熱2
血液;白血球減少3、血小板減少4、自己免疫性溶血4
神経性神学的;せん妄2、精神病3、痙攣5
皮膚粘膜;非瘢痕性脱毛2、口腔潰瘍2、亜急性皮膚or円盤状ループス4、急性皮膚ループス6
漿膜炎;胸膜または心嚢水貯留5、急性心膜炎6
筋骨格;関節病変6
尿蛋白>0.5g/24h=4
腎生検で2or5=8
腎生検で3or4=10
 
○免疫学的ドメインと基準
抗リン脂質抗体;抗カルジオリピン、抗β2GPI抗体、またはLA 2
補体低下;C3またはC4の低下=3C3およびC4低下=4
SLEの特異抗体;抗dsDNAまたは抗Sm抗体 6
合計点→
エントリー基準を満たして10ポイント以上であればSLEと分類しなさい

イメージ 1

 
Table 1 Definitions of SLE classificationcriteria
Criteria Definition
Antinuclear antibodies (ANA)
HEp-2細胞における検査法でANA80倍、またはそれに相当する検査結果が少なくとも1回あること。HEp-2細胞、または同等の検査特性を有する固相法によるANAスクリーニング免疫法で検査することが強く推奨される
 
Fever
体温>38.3°C
 
Leucopenia
白血球<4000/µL
 
Thrombocytopenia
血小板<10/µL
 
Autoimmune haemolysis
網状赤血球上昇、低ハプトグロビン、非直接ビリルビン上昇、LDH上昇AND直接クームス試験陽性のような溶血の証拠
 
Delirium せん妄
以下で特徴づけられるdelirium(1)意識状態の変化または集中力を欠いた覚醒レベルの変化、(2) 発症が数時間から2日未満、(3)一日の中でも症状が変動すること、(4)以下のいずれか(4a)急性・亜急性の意識変化(例、記憶障害や意識障害)、(4b)行動、気分、感情の変化(例、落ち着きのなさ、傾眠と覚醒サイクルの逆転)
 
Psychosis 精神病
以下のいずれかで特徴づけられる精神病。(1)洞察を伴わない幻想and/or幻覚、(2)せん妄がないこと
 
Seizure 痙攣
原発性全般性痙攣or部分・限局性痙攣
 
Non-scarring alopecia
医師によって確認された非瘢痕性の脱毛*
 
Oral ulcers
医師によって観察された口腔潰瘍*
 
Subacute cutaneous or discoid lupus亜急性皮膚ループス、円盤状ループス
Subacute cutaneous lupus erythematosusobserved by a clinician*: Annular or papulosquamous (psoriasiform) cutaneouseruption, usually photodistributed 医師によって確認された亜急性皮膚ループス:通常日光露光部にみられる環状または丘疹落屑性(乾癬様)の皮疹
Discoid lupus erythematosus observed by aclinician*: Erythematous-violaceous cutaneous lesions with secondary changes ofatrophic scarring, dyspigmentation, often follicularhyperkeratosis/haematological(scalp), leading to scarring alopecia on the scalp医師によって観察された円盤状ループス:紅斑で紫色の病変で、二次性の萎縮性瘢痕を伴い、しばしば小胞性で過角化性/血液学的?(頭皮)である。結果として頭皮の瘢痕性脱毛に至る
 
If skin biopsy is performed, typicalchanges must be present. Subacute cutaneous lupus: interface vacuolardermatitis consisting of a perivascular lymphohistiocytic infiltrate, oftenwith dermal mucin noted. Discoid lupus: interface vacuolar dermatitisconsisting of a perivascular and/or periappendageal lymphohistiocyticinfiltrate. In the scalp, follicular keratin plugs may be seen. In longstandinglesions, mucin deposition and basement membrane thickening may be noted
皮膚生検がなされれば典型的な変化があるはずである。亜急性皮膚ループス:血管周囲のリンパ球・組織球浸潤からなる接合部空包性皮疹。しばしば皮膚のムチンとともに。円盤状ループス:血管周囲and/orその周囲のリンパ球・組織球浸潤からなる接合部空包性皮疹。頭皮では空包性ケラチン栓が見られるかもしれない。長期経過した病変ではムチン沈着と基底膜肥厚が見られるかもしれない
 
Acute cutaneous lupus 急性皮膚ループス
Malar rash or generalised maculopapular rashobserved by a clinician
If skin biopsy is performed, typicalchanges must be present: interface vacuolar dermatitis consisting of aperivascular lymphohistiocytic infiltrate, often with dermal mucin noted.Perivascular neutrophilic infiltrate may be present early in the course
医師によって確認された頬部紅斑や全般性の斑丘疹性の皮疹
もし皮膚生検がなされていれば典型的な所見があるはずである:血管周囲のリンパ球組織球浸潤からなる接合部空包性皮疹。しばしば皮膚のムチンが認められる。血管周囲の好中球性浸潤が病気の早期に見られるかもしれない
 
Pleural or pericardial effusion 胸膜または胸水液貯留
USX線、CTMRIのような画像検査で胸膜または心嚢水貯留、または両方があること。
 
Acute pericarditis 急性心膜炎
以下のうち2つがあること、(1) 心膜痛(典型的には鋭い痛みで、吸気で悪化、前かがみの姿勢で改善する)、(2)心膜摩擦音、(3) EKGで広範囲なST上昇またはPR低下があること、(4)画像上新規の、あるいは悪化する心嚢水の増加(US, XR, CT, MRIにおいて)
 
Joint involvement 関節痛
以下のいずれか (1)2関節以上の腫脹または液貯留、または(2)2ヶ所以上の圧痛と30分以上の朝のこわばりがあること
 
Proteinuria >0.5 g/24 hours 尿蛋白>0.5g/24h
畜尿で尿蛋白>0.5g/24h、またはそれに相当する随時尿のUPCR
 
Class II or V lupus nephritis on renal biopsyaccording to ISN/RPS 2003 classification 
ISN/RPS 2003分類でClass2 or 5LNがあること
 
Class II: メサンギウム増殖性LN:光学顕微鏡検査で純粋にメサンギウム領域の細胞増多(程度は任意)あるいはメサンギウムマトリックスの拡大があること。いずれもメサンギウム領域の免疫物質の沈着があること。少数の孤立した上皮下または内皮下の沈着が免疫蛍光法や電子顕微鏡で見られるかもしれない(光学顕微鏡ではなく)。
 
Class V:膜性LNglobalまたはsegmentalな上皮下免疫沈着、あるいはそれらの形態学的な痕跡が光学顕微鏡と免疫蛍光法or電子顕微鏡で確認できること。メサンギウム領域の変化はあってもなくてもよい
 
 
Class III or IV lupus nephritis on renalbiopsy according to International Society of Nephrology/ Renal Pathology Society(ISN/RPS) 2003 
ISN/RPS 2003分類でClass3 or 4LNがあること
 
 
 
Class III: focal lupus nephritis限局型LN: 糸球体の<50%を侵す、活動性または非活動性のfocalな糸球体腎炎で、segmental or globalな毛細血管内皮・外の病変、典型的には上皮下の免疫沈着を伴う。メサンギウム領域の変化はあってもなくてもよい。
 
 
 
Class IV: びまん性LN:糸球体の≥50%を侵す、活動性または非活動性のびまん性の糸球体腎炎で、segmental orglobalな血管内皮・外の病変、典型的にはびまん性の上皮下免疫沈着を有する。典型的には上皮下の免疫沈着を伴う。このクラスにはびまん性のwire loop depositsを伴うが、糸球体増殖性病変がほとんどないか、ないこともあるケースが含まれる。
 
 
 
Positive antiphospholipid antibodies抗リン脂質抗体陽性
 
Anticardiolipin antibodies (IgA, IgG, orIgM) at medium or high titre (>40 A phospholipids (APL), GPL or MPL units,or >the 99th percentile) or positive anti-β2GP1 antibodies (IgA, IgG, orIgM) or positive lupus anticoagulant
 
CL抗体(IgA, IgG,IgM)>40APLGPLまたはMPL単位、または>99th %。あるいは抗β2GPI抗体(IgA, IgG, IgM)陽性、ループスアンチコアグラント陽性。
 
 
 
Low C3 OR low C4 
C3↓またはC4
 
C3またはC4が正常下限よりも低いこと
 
 
 
Low C3 AND low C4 
C3↓かつC4
 
C3C4がともに正常下限よりも低い
 
 
 
dsDNA抗体または抗Sm抗体
 
SLEの関連する疾患controlに対する特異性が90%
 
 
 

 

ps

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