リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Teriparatide vs AlendrnateのRCT(批判的吟味)

Clinical scenario
あなたはリウマチ科で研修中の後期レジデント。慣れない外来で困った状況に出くわした。
 
SLEで治療中の47歳女性。
2年前よりSLEによる多関節炎にたいしPSL10㎎、HCQ200㎎を開始し改善。もちろんアレンドロネート酸の予防投薬も開始した。2ヶ月前(PSL3mgを投与中)、腰椎L1圧迫骨折を発症。同じころより尿蛋白の増加を認めており、腎生検でループス腎炎2型と診断された。外来で結果説明のうえPSL0.5mg/kgに増量した。
患者さんにTeriparatideも同時に開始することを提案したが、患者は毎日の注射が嫌だ、という。上司に相談したところ、1本のRCTを渡された。
 
Teriparatide vs AlendrnateRCT
12mos(18mos)
N Engl J Med. 2007 Nov 15;357(20):2028-39.

Teriparatide or alendronate inglucocorticoid-induced osteoporosis.

Saag KG, et al.
 
SPELLのはじめてトライアルシートに沿って読んでいきます。
 
1. PECO

P: 21歳以上、平均PSN 5mg(または同等量)3ヶ月以上、T score2.0以下or1.0以下+脆弱性骨折、Laboの異常、GIOP以外の骨の病気、5年以内の悪性腫瘍、骨肉腫のハイリスク、GI disorder、腎障害、甲状腺機能正常(治療中も含めて)、6ヶ月以内に>2wksBis使用または3年以内に2年以上の使用、その他のOP治療の使用歴

I: テリパラチド20μg/day
C: アレンドロネート10mg/day
O: Δ腰椎BMD12ヶ月後)
 
2. Randomizatin;性、施設、過去のBis治療歴で層別化された1:1のブロック法
 
3. Baselineは差がある(Alendronateで閉経後女性が82.7%Teriparatide77.9%よりも多い)
結果に影響を与えうる因子は全て検討されているか→検討されている
 
4. すべての患者の転機がアウトカムに反映されているか?
4-1. ITT解析か→ITT解析ではない(per protocol解析でn=428であるが、ITT population429)。結果はくつがえさない。
 
4-2. 結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?→ある
追跡率は?
Primary outcomeについては追跡率=(148+156)/429=70.9%
Figure 2-Aより18ヶ月後のNo. at riskをみてAlendronate 148, Teriparatide 156
 
腰椎で確認できる骨折(Secondary outcome)については、Table 2をみて、(165+171)/429=78.3%
 
Figure 1に戻って、脱落理由を確認
Alendronate
AEs 25、患者の希望16、死亡7lost to followup 3プロトコール違反3、登録基準を満たしていなかった1、スポンサーの判断で脱落3、その他1、重大なLabo所見2、医師の判断で脱落3
Teriparatide
AEs13、患者の希望30、死亡12lost to followup 8プロトコール違反3、登録基準を満たさしていなかった2、スポンサーの判断1、その他1
 

※スポンサーの判断で脱落した4例はstudydrugを半分以上投与していなかったことが2回あったか、あるいは腰椎or大腿骨頸部で8%以上の低下があったとのこと。

 
5.マスキング(盲検化)されているか→患者、介入実施者
※データ解析者として、全ての著者がStudy dataへのアクセスができた。解析はSponsor
 
6.症例数は十分か
結果に有意差がある→計算されていない(少なくともセカンダリアウトカムについては)
 
7.結果の評価

プライマリアウトカム(骨密度の増加%)はTeriparatide 7.2±0.7%vs. Alendronate 3.4±0.7% (P<0.001)

セカンダリアウトカム(X線で確認できる椎体骨折)はTeriparatideOutcome +/-=1/171, -Alendronate10/165であり、介入郡の発生率0.58%は対照群の発生率6.06%よりも有意に低かった。RRR=90.4%, ARR=5.5%, NNT=18.3と計算され、NNT=19 (18ヶ月)

 
<リウマトロジストのコメント>
追跡率は<80%でありましたが、GIOPというハイリスクな集団であり、3割の脱落もやむなしか....とも思いましたが、脱落理由を確認する限り、スポンサーや医師の判断で後から分母から何例かぬかれているよう。それらは良くないアウトカム(骨折やBMD↓↓など)であった可能性も考えられる。セカンダリアウトカムのX線で評価できる椎体骨折の発生率の差(1vs10人)は信頼できないように思われました。
 

36ヶ月の結果でも椎体骨折は1.7%vs 7.7%と差があったようですが、これについても....

 

Arthritis Rheum. 2009 Nov;60(11):3346-55.doi: 10.1002/art.24879.

Effects of teriparatide versus alendronatefor treating glucocorticoid-induced osteoporosis: thirty-six-month results of arandomized, double-blind, controlled trial.

Saag KG, et al.
 
Scenario caseの経過>
ビスフォスフォネート剤よりもBMDを上げる効果はあるとは思います、と説明し、嫌がる患者さんに強くは勧められず。その他の治療法についても検討することとした。

 

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