<Clinical Scenario>
リウマチ科後期レジの生活も板についてきた頃の10月。顕微鏡的多発血管炎疑いの80代男性が紹介入院となった。上級医からの指示は「腎生検をして早めに治療を開始するように」とだけ....
Cr正常ながら腎生検で半月体形成性腎炎を認めた。腎生検直後よりステロイドを開始し、CORTAGEに沿ってIVCYを開始していたあなたは、治療開始1週間後よりバクタ半錠を開始したのであるが、、、、
上級医から、「バクタ半錠を使うんだったら、今回のようなハイリスクの患者におけるエビデンスを調べてからにしてよ!」と叱られてしまった。
Optimal regimens ofsulfamethoxazole-trimethoprim for chemoprophylaxis of Pneumocystis pneumonia inpatients with systemic rheumatic diseases: results from a non-blinded,randomized controlled trial.
Utsunomiya M, et al.
Abstract
BACKGROUND:
ST合剤は免疫不全のリウマチ性疾患の患者においてPJP予防の標準的な薬剤である。しかし有害事象(AEs)のため時々中止となってしまう。この52wkの非盲検ランダム非劣勢試験は薬剤の中止率が低く有効な化学療法のレジメンを探求するために行われた。24週の結果が報告された。
METHODS:
全身性リウマチ性疾患の成人でPSL≥0.6 mg/kg/日を開始する患者が3つの用量のグループにランダムに割り付けされた:a single-strengthgroup (SS, SMX/TMP of 400/80 mg daily), half-strength group (HS, 200/40 mgdaily), and escalation group (ES, started with 40/8 mg daily, increasingincrementally to 200/40 mg daily)。プライマリアウトカムは24週時におけるPJPの非発生率。
RESULTS:
183例が1:1:1 の比で3群に割り付けられた; SS 58, HS 59, ES 55。172例が解析に含まれ、24週時にPJPは報告されなかった。post-hoc analysisでSMX/TMP 200/40 mg/日を内服した患者における推定非発生率はこの量で開始された者も、漸増された者も96.8-100% (the exact confidence interval))。全体の中止率はSSにくらべHSで低かった (p = 0.007)。副作用中止はSSにくらべHS (p = 0.006)、ES (p = 0.004)で低かった。ST合剤の減量を要する副作用の発生率 (p = 0.009)、興味のある特定の副作用の発生率(p = 0.003)は3群間で異なり、HS, ESに比べSSで高かった。
CONCLUSIONS:
PJPは発生しなかったが、HSとESを合わせた群、各群におけるPJPの推定発生率は優れており、安全面ではSSに勝っていた。実現可能性の観点から見れば、また薬剤の中止率から考えても、全身性リウマチ性疾患におけるPJPの予防において半錠の投与量が理想的であることが示唆された。
<批判的吟味>
批判的吟味はSPELLのはじめてシートを用いて、読み始めた。
1.論文のPICO
P; 20歳以上の全身性リウマチ性疾患で、ICがとれた患者。PSL0.6mg/kg以上を投与され、ST合剤・ペンタミジン・ダプソンの投与歴がないこととした。Cr正常であること。
I; Escalation dosage (ES)※
C; Single-strength (SS)
O; 24wks時のPneumocystispneumonia(PJP)の非発生率
※ES, SS, Half-strength (HS)の3群に分けられましたが、プライマリアウトカムはESとSSとの差を見たいわけなので、IとCは↑のようになります。
2.ランダム割付けされているか?
■ランダム■中央割り付け(PCを用いて登録し、その際に割り付けられる)
■隠蔽化なし(Non-blinded RCT)
3.Baselineは同等か?
■差がある
SS 58, HS 59, ES55例の3群間の比較です。有意差検定はされていないもののSSで血管炎多く(SS 44.8% vs ES 20.9%)、IgGが低い(1676 mg/dL vs 2006 mg/dL)。一方、ESでは間質性肺炎が多く(SS 38% vs ES 43.6%)、Lyが低い(1766/µL vs 1656/µL)。どちらが不利かはわかりませんが、PJPを起こしやすい血管炎はSSに多く振り分けられたようです(44.8% vs 20.9%;人数にすると26人vs 17人;HSは15人)。
治療内容をみますと、PSLは0.97vs 0.94 mg/kgといずれも同じくらいでしたが、免疫抑制剤使用の割合は70.6% vs 81.8%と少し差がありました。残念ながらCYの割合がほしかったところですが、記載はございませんでした。
その結果、SS群、ES群とも1例のPJPも発生しませんでした。発生率はいずれも0%であったため、非劣性を示すことはできませんでした。
セカンダリアウトカムである、バクタ中止率はKM曲線で検討し、有意にESで少なかった。
■結果に影響を与える可能性のある因子は検討されているか?→検討されている。
4.すべての患者の転機がOutcomeに反映されているか?
4-1.ITT解析か?→■ITT解析
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?
■ない→追跡率=172/183=93.1%
5.マスキング(盲検化)されているか?→されていない
6.症例数は十分か?
■結果に有意差がない(非劣性は証明されず)→症例数は十分
→サンプルサイズは計算されている
→参加人数はサンプルサイズを超えていない
症例数(各群:58、合計174)、イベント発生率93% vs 98%、効果 %、α0.05、power 80%
<Scenario caseの経過>
上級医からは、「血管炎26人vs 32人の比較でHalf doseを一般的に推奨することは時期尚早です」、と言われてしまった。
しぶしぶ、バクタを1錠に戻すことにした。
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