Randomised controlled trial of long-termmaintenance corticosteroid therapy in patients with autoimmune pancreatitis.
Masamune A, Nishimori I, et al; ResearchCommittee of Intractable Pancreas Diseases in Japan.
Gut. 2016 Aug 19
ABSTRACT
Objective
Design
三次医療センターのセッティングにおける多施設のRCTを行った。初期傾向PSLによる寛解導入後、PSL 5-7.5mg/dayの維持療法を3年間継続するか、26週間で中止した。Primary endpointは3年間の再発なし生存、Secondary endpointは重症のステロイド関連合併症。全ての解析はintention-to-treatに基づく。
Results 2009.4月から2012.3月の間、AIPの49例がランダムに維持療法群(n=30)、または中止群(n=19)に割り付けられた。ベースラインの特徴は両群で差はなかった。3年以内の再発は中止群で11/19 (57.9%)、維持療法群で7/30 (23.3%)。3年間の再発率は中止群よりも維持療法群において有意に低かった (p=0.011)。再発なし生存は中止群と比べ維持療法群で有意に長かった (p=0.007)。PSLの中止を要する重症のステロイド関連合併症は見られなかった。
Conclusions
この度も、SPELLのはじめてトライアルシートを参考に、批判的吟味をしてみました。
I; 初期療法としてPSL 0.6 mg/kgで開始し、12週間までに5-7.5 mg(高疾患活動性or高体重は10mgを許可)に減量された後、PSL 5-7.5 mgの維持療法を3年間継続すること。
C;中止群(同じ初期療法後、26週後に中止をする)
・ランダム化は中央割り付け
・ランダム割り付けの隠蔽化;されている。
→著者のひとり(IT)が施設・性年齢で層別化したグループ、4例分のブロックをあてがいました。その4例はA維持療法、B中止群とすると、AABB=1, ABAB=2, ABBA=3, BBAA=4, BABA=5 and BAAB=6の6パターンからなり、ITも次の患者がAなのかBなのか分からなかったのではないかと思います。
・Baselineは同等か?;Table 1にて有意差がある項目はなかったようです。
・ITT解析か?;ITT解析
・結果に及ぼすほどの脱落があるか?;Figure 2でランダム割り付けされたのは維持療法30例、中止群19例。有害事象のため1例ずつ脱落がありましたが、ITT解析なので、それらも含めて解析されております。追跡率=49/49=1。
・結果に有意差があり、サンプルサイズも計算されています。α of 0.05、power at 80%となるサンプルサイズは各群に66例ずつ必要という算出でした。しかし、適格なAIP患者131例のうち、82例が除外されて、結局ランダム割り付けまで残ったのは49例でした。すなわち、ランダム割り付けの時点で66例ずつ必要であったのに、30 vs 19というかなり少ない数で解析を行っています。
・結果の評価
追跡期間=( 3年 )
介入群の発生率=a/(a+b)=( 7/30 → 23.3% )=EER
対照群の発生率=c/(c+d)=( 11/19 → 57.9% )=CER
RR=EER/CER=( 0.403 )
RRR=1-RR=( 0.596 )
ARR=CER-EER=( 0.346 )
NNT=1/ARR=( 2.89 )→NNT=3
Figure 1 研究デザイン;治療群ではPSLを0.6mg/kg/dayで投与し、12週間かけて5–7.5 mg/ dayに減量し、26週まで継続した(short-term maintenance therapy)。それから維持療法群に割り付けられた患者は5–7.5 mg/dayの維持療法を3年まで続けた(long-term maintenance therapy)。ステロイド療法は中止群においては26週時に中止された。患者はステロイド治療の開始より3年までフォローされた。PSL, prednisolone; Tx, therapy.
Figure 2 CONSORT2010 Flow Diagram. JPS2006で診断されたAIP131例が適格性について評価された。82人が除外され、49例が登録された。30人が維持療法、19例が中止群に割り付けられた。2例(維持1例、中止1例)が有害事象のため脱落した。42例がITT解析で解析された。PSL, prednisolone.
Figure 3 維持療法群と中止群における再発なし生存のKaplan-Meier推定。累積の再発なし生存をKaplan-Meier法で計算し、log-rank testで比較した。脱落した症例はKaplan-Meier曲線でtick marksで示した。下のチャートは各時点の分配における患者数を示す。
(本文Discussionより意訳)
・この研究にはいくつかのLimitationがある。
・第二に、グループ間のバランスがとれていないため、selection biasが存在するかもしれない。参加者は割り付けのために施設、青年例で送別化された。割り付けのため31個のブロックが作られたが、4例分全てを使い切ったのは3つだけであった。残りの28ブロックでは4例分を使い切っていないため、バランスの悪い割り付けになってしまった。より少ない層別化の因子で小さいサイズのブロックにしていれば割り付けのバランスは良かったかもしれない。ただし、二群間でのベースラインの特徴に有意差はなかったことは大切なことである。
・第三にAIPはJPS2006に基づいて診断された。研究開始時に最近用いられるICDC、JPS2011のような診断基準が提唱されていなかったため。
・最後に、研究デザインとして割り付けは患者と医師にマスクされていなかった。
<リウマトロジストのコメント>
設定したサンプルサイズに到達できなかったという問題はありますが、Rarediseaseである AIPにおける最初のRCTと思われます。その結果、PSL 5-7.5mg(高疾患活動性・高体重では10mgまで許容)の維持療法は再発率を57.9%→23.3%(NNT=3;3年)に下げました。
ps;前のテーマ、「IgG4RDのPSLは0.6mg/kg??」の続きですが、ランダム割り付けは寛解導入療法の開始時になされており、49例全例が維持療法に移行しているので全例が寛解導入されたものと思われます。すなわち、このRCTは小さいサイズではありますが、全例をPSL 0.6mg/kgで開始し、全例(49/49)が寛解導入されたという最初の結果でもありました。