<Clinical Scenario>
75歳女性
筋炎症状の治療のため、ステロイドを増量する必要がありそうです。
しかし、これ以上椎体骨折を繰り返すと、寝たきりになってしまうかもしれません。
(症例は架空です)
< 疑問、発生!>
テリパラチド? それとも、デノスマブ?
<Uptodate>
Prevention and treatment of glucocorticoid-induced osteoporosisの
Parathyroid hormoneを読みます。
PARATHYROID HORMONE — 副甲状腺のPTHは通常GIOPの治療・予防の第一選択薬としては用いない。その理由はコスト、皮下注射であること、代賛の薬剤があること。しかし、以下の男性と閉経後女性におけるGIOPの治療として副甲状腺ホルモン(テリパラチド)を提案する。
テリパラチドはEpiphysesが完全に閉じている限り、閉経前女性にとっても選択肢になる。PSL7.5mgを3ヶ月以上内服中に脆弱性骨折か加速する骨損失(1年で4%以上)を有する場合、あるいは月経機能が正常であるためエストロゲン補充を要さない場合。
テリパラチドはcarcinogenicityのリスクの可能性があるため、2年より長く使うことは勧められない。PTHの後のビスフォスフォネートのような吸収抑制剤によってPTH治療で得られた骨密度の増加は保たれる。そのため、テリパラチドを第一選択薬として用いる患者、中止後に骨折のリスクが残る患者ではPTHを中止した後にビスフォスフォネートを開始すべきだ。
副甲状腺ホルモン (PTH) は骨吸収だけでなく骨形成も促進する。間欠的な投与は吸収より形成を促進する。最初の研究によると骨粗鬆症の患者において利益がある事を示された。骨格に対するステロイド剤の主な効果は骨形成を抑制することであり、そしてビスフォスフォネート剤(抗吸収剤)が骨損失のメカニズムに向けられたものではないため、副甲状腺ホルモンによる治療は理論的にはより魅力的なアプローチだ。
無作為化試験においてステロイド治療を受ける患者において骨密度を改善する上で有効。たとえば、アレンドロネート (10 mg orally daily) vs PTH 1-34 (テリパラチド20 mcg皮下注射)とのRCTにおいてステロイド(PSL5mg以上)を3ヶ月以上内服する428例の男女を対象にどちらの治療も有意に骨密度を増加させた。しかし、テリパラチドは腰椎(8.2 vs 3.9 %), 股全体 (3.8 vs 2.4 %), 大腿骨頸部 (4.4 vs 2.8 %)の骨密度上昇に関連した。
二次アウトカムの非椎体性骨折の発生率に差はなかったが (5.6 vs 3.7 %)、テリパラチドに割りつけられた患者はアレンドロネートよりも新規椎体骨折は少なかった (1 vs 10) 。両群とも30%が研究期間が終わるまでに脱落した。吐き気とinsomniaはテリパラチドで多かった。アレンドロネートでは皮疹が多かった。
性別と閉経前後で分けた二次的な解析において、腰椎の骨密度の上昇は閉経前(7.0 vs 0.7 %)、閉経後(7.8 vs 3.7 %)の女性においてテリパラチド群で有意に高かった。閉経前の女性では骨折は両群とも稀だった。
Denosumab — デノスマブは破骨細胞を文化する因子に対するモノクローナル抗体。破骨細胞の形成を阻害し、骨の吸収を抑制し、骨密度を増加させ、骨折リスクを減少させる。閉経後女性と前立腺がんの治療でアンドロゲン除去療法を行う弾性において用いられる。
ステロイド誘発性骨粗鬆症のマウスモデルにおいて、デノスマブはプラセボと比較し、骨損失を予防した。関節リウマチ患者(なかにはステロイドを投与されているものもいた)におけるデノスマブとプラセボのRCTの事後解析によると、デノスマブは腰椎骨密度と股の骨密度の平均値を有意に増加させた。さらなるデータが得られるまで、私たちはステロイド誘発性骨粗鬆症の予防と治療のためにデノスマブを推奨しない。
Uptodateに勧めないとありますので、テリパラチド(フォルテオ)でよさそうです。
でも、もうちょっと調べてみましょう。
自己注射をかたく拒否されても大丈夫なように。
Teriparatide denosumabを検索し、Randomized controlled trialでlimitsします。
2件・・・同じ研究の1年後と2年後の報告のようです。
Abstractのみ訳します。
1. J Clin Endocrinol Metab. 2014 May;99(5):1694-700.
Two years of Denosumab and teriparatide administration in postmenopausal women with osteoporosis (The DATA Extension Study): a randomized controlled trial.
Abstract
CONTEXT:
現在の骨粗鬆症の治療薬は骨密度を少し増加させ、骨折のリスクを完全に排除できないものの低下させる。ビスフォスフォネートと同化作用を有する薬剤の併用療法は成功していない。逆にデノスマブとテリパラチドの12ヶ月の併用療法は骨密度を単剤よりも増加させる。
OBJECTIVE:
この研究の目的はデノスマブとテリパラチドの24ヶ月の併用療法が股と脊椎の骨密度を各々の単剤よりも増加させるかどうかを決めることである。
DESIGN:
閉経後骨粗鬆症女性がteriparatide (20 μg/日), denosumab (60 mg、6ヶ月毎)、および両者の併用を受けたthe Denosumab and Teriparatide Administration (DATA) RCTにおいて、予め計画されていた継続試験
PARTICIPANTS:
OUTCOME MEASURES:
腰椎骨密度、大腿骨頸部、股全体、橈骨遠位部の骨密度、および骨代謝の血清マーカーを測定した。
24ヶ月後、腰椎骨密度は併用群(12.9 ± 5.0%)においてteriparatide群 (9.5 ± 5.9%, P = .01)、denosumab群 (8.3 ± 3.4%, P = .008)よりも増加した。大腿骨頸部の骨密度も併用群 (6.8 ± 3.6%)において、teriparatide群 (2.8 ± 3.9%, P = .003)や denosumab群 (4.1 ± 3.8%, P = .008)よりも増加した。同様に股全体の骨密度も併用群 (6.3 ± 2.6%)において、teriparatide 群(2.0 ± 3.0%) や denosumab群 (3.2 ± 2.5%)よりも増加した(P < .001 for both)。全ての群において脊椎と股の骨密度は2年目も増加し続けたが、これらの2年目の増加は3群間で差はなかった。血清Type 1プロコラーゲンのC-telopeptideと N-terminal propeptideはデノスマブ群と併用群で同等に抑制された。一方でオステオカルシンは併用群よりもデノスマブ群においてより減少した。この差は2年目に減少しこそはしたが持続した。
CONCLUSIONS:
テリパラチドとデノスマブ治療の2年間の併用療法は骨密度を各々の単剤よりも増加させ、現在のいかなる治療法で報告されているよりも多く増加させた。これらの薬剤の併用は骨折のリスクが高い患者において重要な治療オプションであることが判明するかもしれない。
※2がフリーで落とせそうだったので読んでみたら、1の24ヶ月後の結果でした。Figureのみ解説します。
Figure 2.
teriparatide (TPTD), denosumab (DMAB), 併用群 (Combo)においてベースラインから24カ月の時点までの骨密度の平均変化Mean percent change (SEM)を示す;腰椎(A), 橈骨遠位1/3 (B), 大腿骨頸部 (C), 股全体 (D)。
*とは他の群と比べP < .05で有意差あり。
※デノスマブは橈骨で有意に骨密度を増加させ、大腿骨・股においてもテリパラチドよりグラフが上です。デノスマブはLong boneに強いと覚えましょう。
Figure 3.
teriparatide (TPTD), denosumab (DMAB), 併用群(Combo)における0-12ヶ月(灰色)と12-24ヶ月(黄色)の骨密度の平均変化Mean percent change (SEM) (g/cm2)
*とは0-24ヶ月の差が全体として他の群と比べP < .05の差があることを示す。12-24ヶ月の変化は3群間で差はなかった。
Figure 4
マーカー。teriparatide (TPTD, A–C)、denosumab (DMAB、D–F)、combination (Combo)群 (D–F)におけるベースラインから24か月時の骨代謝マーカーの平均%変化
aとはデノスマブ、併用群に対し全ての時点でP < .0001
bとはデノスマブに対し全ての時点でP < .005
テリパラチド群とその他の群のためのデータは分かりやすい図にするために分けてグラフ化した。シンボルに隠れてエラーバーが見えない個所あり。
※解説
オステオカルシン、P1NPは造骨系のマーカー、CTXは破骨系のマーカーです。
テリパラチドは造骨を促進するため高回転になり、反応性に破骨も増強します。デノスマブは破骨を抑制するために低回転になり、反応性に造骨も抑制されています。併用すると、造骨↑の薬+破骨↓の薬=低回転(破骨↓→造骨↓)になるのですね。
2. Teriparatide and denosumab, alone or combined, in women with postmenopausal osteoporosis: the DATA study randomised trial.
Lancet. 2013;382(9886):50-6
Abstract
BACKGROUND:
骨粗鬆症の治療は骨密度を増加させ、骨折のリスクを完全に排除できるわけではないが低くする。ビスフォスフォネートと同化作用を有する薬剤の併用は効果を改善させるものではない。私たちはテリパラチドとデノスマブの併用を各々の単剤と比較した。
METHODS:
2009.9月~2011.1月の間、私たちは骨粗鬆症を有する閉経後女性をRCTに登録した。患者は1:1:1の比率で、teriparatide 20 μg/日, denosumab 60 mg/6ヶ月、または両者の併用に割りつけられた。骨密度は0, 3, 6, and 12ヶ月後に測定された。ベースラインの後に1回でも研究のための受診をした女性は修正されたITT解析にて評価された。この試験はClinicalTrials.govにて登録され、number NCT00926380。
FINDINGS:
登録された100例の女性のうち94例(94%)がベースラインの後、研究のために少なくとも1回受診をした。12ヶ月の時点で腰椎のPA写真の骨密度は併用群でより上昇した(9·1%, [SD 3·9])。テリパラチド(6·2% [4·6], p=0·0139)、denosumab (5·5% [3·3], p=0·0005)群と比べて。大腿骨頸部の骨密度も併用群でより増加した(4·2% [3·0])。Teriparatide群 (0·8% [4·1], p=0·0007)、denosumab (2·1% [3·8], p=0·0238)群と比べ。股全体の骨密度でも同様 (併用群 4·9% [2·9]; teriparatide, 0·7% [2·7], p<0·0001; denosumab 2·5% [2·6], p=0·0011).
INTERPRETATION:
テリパラチドとデノスマブは骨密度を各々の単剤よりも増加させた。承認された治療における報告と比べ、より増加させた。したがって、併用療法は骨折の最もリスクが高い患者を治療するために有用かもしれない。
FUNDING:
Amgen, Eli Lilly, National Center for Research Resources.
< まとめ >
・GIOPにおいてテリパラチドはアレンドロネートよりも椎体骨折を減らす。
・デノスマブのGIOPに対する有効性は検証されていない。
・閉経後骨粗鬆症に対するテリパラチドvsデノスマブのRCTにおいて、脊椎・大腿骨の骨密度の増加に有意な差はない。しかし、2年間の骨密度の変化をグラフで見る限り、テリパラチドは椎体、デノスマブは長管骨で強いかもしれない。
<Scenario caseの経過>
GIOPによる腰椎骨密度の改善のため(ひいては脆弱性骨折のリスクを減らせるかもしれないため)、テリパラチドをお勧めした。
ps; Uptodateの引用であるテリパラチド>アレンドロネートのRCTは既読でした。