French vasculitis study group (FVSG)のお仕事ですが、高齢化社会の日本においてもその試験の意義は大きいものになるでしょう。
この度も、SPELLのはじめてトライアルシートを参考に、批判的吟味をしてみました。
<批判的吟味>
1.論文のPICO
Patients
Intervention
シクロフォスファミドパルス(IVCY)500mg/bodyを1/2wkで3回;1/3wkで1~3回。プレドニゾン(PSN)1mg/kg (mPSLパルス1~3dは許可)後、速やかに減量し、9ヶ月で中止。
Comparison
IVCY500mg/m2を1/2wkで3回;1/3wkで3回。PSN1mg/kg(mPSLパルス1~3dは許可)後、緩徐に減量し、26ヶ月で中止。但し、PANとEGPAはFive factor scoreを少なくとも1ヶ有する場合。FFS=0ならIVCYを行わず、ステロイドのみとする。
Outcome
Primary outcomeは、3年の研究期間において1回以上の重症有害事象SAEsの発生。SAEsとは、①生命に関わる可能性のある副作用であり、②入院または入院の延長を要する、OR 有意な身体障害を起こす、OR 死亡に至る、と定義。
2.ランダム割り付け
中央割り付けで、ランダム割り付けは封筒を用いて隠蔽化されていた。
3.ベースラインは同等か?
Table 1をみます。難治性が予測されるGPAの頻度がexperimental39.6% vs conventional 20.4%と10%の差がありましたが、experimentalに多かったようです。結果に影響を与える可能性のある因子は検討されています(虚血性心疾患、喫煙、高血圧など)。悪性腫瘍は除外基準にはなかったようです。
① ITT解析か?; ITT解析とは割り付け時の2群で比較するという方法ですが、modified ITT解析という割り付け後に脱落を除いた群の間で比較をするという方法です。
(本文より)全ての解析は不適切に登録された患者(早期のプロトコール違反;例として誤診例)や1週間以内に同意を取り消した患者を除外するというmodified ITT解析で行った。
②結果を及ぼすほどの脱落は?
Figure 1より当初の108例のうち4例が脱落し、残り104例がexperimental53 vs. conventional 51に割り付けられました。治療開始後は脱落例はなく、全例が解析対象となったので、結果的にはITT解析と同じ結果になると思われます。
※追跡率=(51+53)/(51+53)=1
5.マスキング(盲検化)されているか?
Non-blindedmannerとあり、盲検化されていない医師がSAEsなどのアウトカムの判定を行っております。SAEに関しては、統計の専門家は盲検化されていたようですが、医療者にSAEの変更を迫ることは現実的ではないと思われ、この盲検化の意義はほぼないと言って良いでしょう。
6.症例数は十分か?
結果に有意差があります。サンプルサイズは過去の後ろ向き研究のデータを元に30%のSAEsのリスク減少を見込んで算出しています。症例数は十分と考えられます。
7.結果の評価
追跡率=3年
ExperimentalのSAEsの発生率= 32/53 (60.377%)= EER
ConventionalのSAEsの発生率= 40/51 (78.431%) = CER
RR=EER/CER=( 0.7698;約77% )
RRR=1-RR=( 約23% )
ARR=CER-EER=( 18.054;約18% )
NNT=1/ARR=( 5.5→NNH=6;3年 )
②再発は各20/45 (44%) vs 12/41 (29%)と有意差なし(但しp=0.15とnが増えれば差が出たかも)
③再発なし生存は各47% (95%CI 32.5 – 60.6) vs 60% (44.4 – 72.3)。
<リウマトロジストの疑問>
つぎに、このRCTを読んで、リウマトロジストが疑問に思ったことに取り組んでみました。
1.ステロイド減量の仕方の詳細は?
Study design and treatmentの第2パラグラフにSupplementaryTable 1とあり、そこでダウンロードできます。
→ Supporting information
→ SupplementaryTable 1
Experimental Arm
Days No. of weeks/days Dose(mg/day) Cumulativedose/period (mg)
1–21 3 weeks 60 1260
22–28 1 week 55 385
28–34 1 week 50 350
35–41 1 week 45 315
42–48 1 week 40 280
49–55 1 week 35 245
56–76 3 week 30 630
77–81 5 days 27.5 137.5
82–86 5 days 25 125
87–91 5 days 22.5 112.5
92–96 5 days 20 100
97–101 5 days 17.5 87.5
102–106 5 days 15 75
107–116 10 days 14 140
117–126 10 days 13 130
127–136 10 days 12 120
137–146 10 days 11 110
147–156 10 days 10 100
157–166 10 days 9 90
167–176 10 days 8 80
177–186 10 days 7 70
187–196 10 days 6 60
197–206 10 days 5 50
207–216 10 days 4 40
217–226 10 days 3 30
227–236 10 days 2 20
237–246 10 days 1 10
Total duration: 247 days, 8.8months (35 weeks). Total cumulative dose: 5152.5 mg.
本文には1mg/kgで3週間とありますので、この表は体重60kgを想定したもののようです。
(つづき)その2へ
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