リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

SLEにおけるベリムマブの安全性を調査した過去最大のRCT(BASE試験

この度は、SLEにおけるベリムマブの安全性を調査した過去最大のRCT、BASE試験をみていこうと思います。ゆるーく、批判的吟味をしながら。

 

www.thelancet.com

 

Summary

背景
Belimumabは、活動性の全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬として承認されている。臨床試験では、良好なベネフィット・リスクプロファイルが示されたが、死亡率や有害事象(AESI)の発生率に数値的な差異があることが報告されている。そこで、ベリムマブとプラセボに標準治療を加えたSLE患者において、これらの有害事象の発生頻度を検討した。

 

方法
BASE試験は、33カ国で行われた二重盲検無作為化プラセボ対照の第4相試験。成人の活動性SLE患者様を対象に、ベリムマブ(10mg/kg)またはプラセボと標準治療の併用投与を48週間、1対1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は、治療期間中(初回投与から最終投与まで+28日間)の全死亡率およびAESIの発生率とした。安全性の解析は、As-treated集団(実際に受けた治療が50%以上の患者をグループ化)を対象として行われた。本試験はClinicalTrials.govに登録された(NCT01705977)。

 

調査結果
2012/11/27-2017/7/28の間に、4018人の患者を無作為に割り付けた。As-treated集団は、ベリムマブ群2002人に対し、プラセボ群2001人。ベリムマブ群10例(0.50%)に対してプラセボ群8例(0.40%)が死亡(差0.10%、95%CI -0.31~0.51 )。

重篤感染症(2002例中75例[3.75%] vs 2001例中82例[4.10%]、差-0.35%、95%CI -1.55~0.85)、日和見感染症およびその他の注目すべき感染症(36例[1.80%] vs 50例[2.50%], -0.70%, -1.60 to 0.20)の発生はベリムマブとプラセボ群に共通してみられた。

メラノーマ以外の皮膚がん(4 [0.20%] vs 3 [0.15%]; 0.05%, -0.21 to 0.31)、その他の悪性腫瘍(5 [0-25%] vs 5 [0-25%]; 0.00%, -0.31 to 0.31)。

ベリムマブ群はプラセボ群に比べ以下が多かった

・注射時反応・過敏症反応(8例[0.40%] vs 2例[0.10%]:0.30%、-0.01~0.61)

・重症うつ病(7例[0.35%] vs 1例[0.05%]、0.30%、0.02~0.58)

・治療による自殺傾向(1972例中28人[1.42%]対1986例中23人[1.16%]:0.26%、-0.44~0.96)、

・スポンサーが決めた深刻な自殺または自傷(1972例中15人[0-75%]対1986年の5人[0-25%]:post hocの差0.50%、0.06~0.94)

 

解釈
ベリムマブ投与群とプラセボ投与群では、重篤な副作用、重篤うつ病、治療起因性自殺、スポンサーによる重篤な自殺・自傷行為を除き、全死亡率およびAESIの発生率は同等であった(p.25)。

 

資金提供
GSK

 

★Randomizationは?

ランダム化されていて、中央割り付け、一部を除き、隠蔽化されてはいるが、AEs発生時には隠蔽化はくずれたよう。

 

Except for a limited number of safety oversight personnel and the site pharmacist or designee who dispensed the blinded study drugs, all other study site personnel, patients, the sponsor, and the contract research organisation were masked to the treatment assignment. Treatment allocation could be unmasked by the investigator or treating physician in the event of a serious medical emergency or medical condition.

安全性監視担当者と治験薬調剤担当の薬剤師または被指名者を除き、他のすべての治験施設関係者、患者、治験依頼者、委託研究機関は治療割り付けについてマスキングされていた。治療割り付けは、重篤な緊急事態や病状が発生した場合、治験責任医師または担当医師がマスキングを解除することが可能であった。

 

★Baselineは同等か?

Randomizationの際、地域、SELENA-SLEDAI、GC量は層別化されていた。Table 1のようにSELENA-SLEDAIの平均値はBelimumab 7.8 vs placebo7.9と同等、PSN>7.5㎎の割合も49.3% vs 49.5%と同等。

精神疾患の既往は8.3% vs 7.5%、現在の精神疾患は12.04% vs 11.04%も同等(後者はBelimumabで1%↑)

 

★ITT解析か?

効果を検証する際はITTであったよう。Primary endpointは安全性であり、これについてはAs-treated populationで解析されたよう。

 

★脱落は?

Figure 1

Figure1 Trial profile

注釈:適格性を審査した患者数およびこの段階で除外された患者数は収集していないため、不明。AESI=adverse event of special interest(特に関心のある有害事象)。ITT=intention-to-treat。SAE=重篤な有害事象。*4019人の患者が無作為割り付けされたが、無作為化の詳細がデータベースに入力されなかったため、1人の患者は表示されない;その患者は試験薬を受け取らなかった。1名の患者はプラセボ群に割り付けられたが、誤って50%以上の期間でベリムマブを投与されたため、ITT解析ではプラセボ群、as-treated解析ではベリムマブ群(ここでは無作為化)として異なるグループに含まれた。‡site closureによる。§ITT集団には、無作為に割り付けられた治療群に従って、少なくとも1回分の試験薬を投与された患者を含み、実際に投与された薬に関係なく、ITT集団に含まれた。患者が最も多く(50%以上)受けた実際の治療により、as-treated集団に含まれる。

 

Figure 1を見る限り、4018例が登録され、各群2009例ずつ割り付けられた。As-treated populationとしては各8例、7例が治験薬を投与されず除外され、各2001例、2002例が治験薬を開始された。placebo群の1例は誤ってbelimumabが投与されたため、効果を見るITT集団としてはplaceboではあるが、安全性をみるAs-treated集団としてはBelimumab群に入れられたと。

 

Figure 1で脱落としては、belimumab群で258例、placebo群で271例。

患者の希望による脱落が128 vs 128例、

AEによる脱落が49 vs 57例、

lost-to-follow up 37 vs 33例、

プロトコール違反 4 vs 2例、

スポンサー指示による終了 2 vs 3例、

医師の指示による終了 38 vs 48例、

研究のデータが入手できないための脱落 2 vs 2例

 

脱落率を求める上で、AEs以外(患者希望、Lost-to-follow up、プロトコール違反、スポンサー・医師指示、データ不入手)はAEsが発生していたかもしれないが、途中で脱落しているので、脱落率の分子に含めて計算します

脱落率=(128+128+37+33+4+2+2+3+38+48+2+2)/4018=10.6%

結果には十分、影響を与えうるでしょう(死亡とかうつ等の稀なイベントを見ているので)。

 

★症例数は十分か?

結果に有意差はない→サンプルサイズは計算されている。→研究に参加した人数は計算されたサンプルサイズを超えている→症例数は十分

 

※関連する箇所↓を訳してみましたが、理解することができませんでした。

A target population of 5000 patients was originally planned to give ±0·46% precision of the 95% CI for the between-group treatment difference for mortality, assuming a first-year mortality rate of 0·68% in both treatment groups. After the study began and following the completion of two additional randomised controlled trials of belimumab in SLE,3,10 the mortality rate estimate was adjusted to 0·56%, leading to a revised target population of 4000 patients to provide ±0·46% precision for the between-group treatment difference 95% CI for mortality. The request to change the sample size was made in December, 2016, when 304 sites from 33 countries had recruited 3459 participants. The randomised population was defined as all patients who were randomly assigned, with patients grouped according to the treatment that they were allocated to receive, regardless of actual treatment received. Safety analyses were done for the as-treated population (grouped according to the treatment that was received for more than 50% of doses), as the primary endpoints were safety endpoints. 当初、両群の1年目の死亡率を0.68%と仮定し、死亡率の群間差の95%信頼区間の精度を±0.46%とするために、5000名の患者さんを対象として計画されました。しかし、本試験開始後、SLEにおけるベリムマブの2つの無作為化比較試験3,10が終了したため、死亡率の推定値が0.56%に修正され、死亡率の群間差95%信頼区間の精度が±0.46%となるよう、対象患者数が4000名に修正された。サンプルサイズの変更要請は、33カ国304施設が3459人の参加者を募集した2016年12月に行われた。無作為化集団は、無作為に割り付けられたすべての患者と定義され、患者は実際に受けた治療にかかわらず、割り付けられた治療に従ってグループ分けされた。安全性解析は、主要評価項目が安全性エンドポイントであることから、As-treated集団(50%以上の投与で受けた治療法に従ってグループ化)を対象に行われた。

 

★結果の評価

全ての死亡はbelimumab 0.5% vs placebo 0.4% で、その差0.1%: 95%CI, -0.31 to 0.51%と差はなし

 

<リウマトロジストのコメント>

安全性情報を評価するためのRCTなので、ITTよりもAs-treated populationで評価されたことは理解できます。脱落は1割みられ、死亡やうつ病などの結果をくつがえしうる脱落率だなぁ、と思いました。一方で、注射剤のため患者希望による脱落、あるいは大規模RCTが所以のloss-to-follow upはやむを得ない、とも思いました。2000例ずつのRCTで1割の脱落率で、Belimumabは感染症を増やしませんでした。しかし、うつが増えたことはやはり少し注意しておいた方が良いように思いました。