リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ベリムマブのループス腎炎におけるRCT、BLISS-LN ① (Intro ~ Methods);SLE

;SLE2020/9/17、ついにBLISS-LNが出版されました!

 

標準的な免疫抑制療法に初めてbiologicsが加わるというLNの歴史上、最大級のインパクトです。

 

 

Two-Year, Randomized, Controlled Trial of Belimumab in Lupus Nephritis.

Furie R, Rovin BH, Houssiau F, et al.

N Engl J Med. 2020 Sep 17;383(12):1117-1128.

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2001180?fbclid=IwAR1ha3UCc2izDi-EOojZP1QJ3jVhiocCP4rYM2fzkjt4uGfk6Pt0nzjQlXc

 

 

※論文のPICO

Patient

UPCR≥1gを有するIII, IV, V型のLN (active or active/chronic)。Randomization前60日以内の導入療法は許容するが以下を除外:1年以内の透析、eGFR<30、過去のCY・MMFの失敗、trial前の3ヶ月以内のCY投与、randomizationの1年以内のB-cell targeted therapy。

 

Intervention

belimumab (10 mg/kg)をday1, 15, 29, 以降28日毎に投与

 

Comparison

matching placebo

 

Outcome

(primary end point)

①week 104のprimary efficacy renal response (UPCR<0.7かつeGFRの悪化>20%がないか≥60ml/min/1.73m2、かつ治療失敗に対するレスキューがないこと)。

(major secondary end points) 

②-1. week 104のcomplete renal response(UPCR<0.5かつeGFRの悪化>10%がないか>90ml/min/1.73m2、かつレスキューがない事)

②-2. week52のprimary efficacy renal response (上述のとおり)

 

 

では、ほぼ全訳していきます。

 

 

 

Introduction

SLEは免疫寛容の損失で特徴づけられる慢性自己免疫疾患であり、多系統の炎症と臓器障害を引き起こす。LNはSLEの25-60%に発生する最もコモンで重症な臨床像だ。病的状況と死亡の主な原因となる。積極的治療でも改善しない腎炎患者の割合はLNの10-30%と低いとは言えず、ESKDに進展してしまう。B-cell activating factor を阻害するrecombinant IgG-1λ monoclonal antibody、Belimumabは5歳以上の自己抗体陽性SLE患者に承認されている。SLE患者におけるbelimumab静注を評価した2つのpivotalなphase 3 trials (BLISS-52, BLISS-76) が報告され、FDAが承認した。しかしながら、急性で重症LNの患者はこれらのtrialsから除外されていたため活動性LNの患者におけるbelimumabの有効性と安全性は分かっていない。BLISS-52、BLISS-72のpost-hoc解析でbaselineで蛋白尿のあった患者ではbelimumab投与で尿蛋白が減少し腎再発が低下することが示された。これらの観察結果を受け、活動性LN患者におけるbelimumab+標準療法 (MMF or CY-AZP) の効果と安全性を評価するために、このBLISS-LN(Belimumab International Study in Lupus Nephritis)を行うことになった。

 

Methods

Trial Design and Oversight

この104週のphase 3, 国際的多施設DBRCTはHelsinki宣言に基づいて行われた。21か国107の施設で行われ、全ての施設でIRBの承認を得、全ての患者から書面のICを得た。この研究はConsolidated Standards of Reporting Trials guidelinesに沿って報告された。

 

The sponsor (GlaxoSmithKline)はこの研究のデザイン、データ収集、解析、解釈、出版のための投稿の決定に貢献した。sponsorの雇用者を含む全ての著者が投稿論文の内容に承認した。全著者がデータの正確性と完全性、副作用報告、プロトコールの忠実性を保証した;NEJMのfulltextで入手できる

 

Entry Criteria

登録患者は18歳以上でSLEの自己抗体(ANA80倍以上、抗dsDNA抗体、または両方)を有し、1982年のACR基準1997改訂版を満たした。患者はスクリーニング時にUPCR1以上を有し、生検で証明されたInternational Society of Nephrology and Renal Pathology Society class III (focal lupus nephritis) or IV (diffuse lupus nephritis) (V型合併の有無を問わない)、またはpure class V LNをスクリーニングの前6ヶ月以内またはスクリーニング期間に有した。a またはa/cのみを対象とした。導入療法はrandomizationの60日以内に開始された。除外基準は1年以内の透析、eGFR<30ml/1.73m2 BSA、過去のCY・MMF療法の失敗、trial前の3ヶ月以内のCYの投与、randomizationの1年以内のB-cell targeted therapy (belimumabを含む)。

 

Trial Procedures

患者は相互性のWeb-response systemを用いてday 1にbelimumab (at a dose of 10 mg/kg*体重) or placeboに1:1でランダム割り付けされた。randomizationは導入療法 (CY or MMF)、人種 (Black or non-Black) で層別化された。患者とスタッフはtrialグループの分配は知らなかった。ただし独立したモニター者はこれらの分配を知っていた。

 

標準治療に加え患者はday1 (baseline) に静注belimumabまたはplaceboを投与され、day15、29、以降28日毎に投与された。標準治療(IVCY 500mg/2wkを6回;3日以内の投与のずれは許容、あるいはtarget dose 3g/dayのMMF)は調査者によって選択され、day1の前60日以内に開始された。CY-AZPを投与された患者では維持療法(AZP, target dose 2mg/kg/day, ≤200 mg/day)をCYの最後の投与から2wk後に開始されtrialの最終日まで継続された。MMFの導入療法の場合、維持療法は1-3g/dayをtrialの最終日まで継続することとした;但し投与量は6ヶ月以降は1gまで減量してもよいこととされた。調査者の判断によって高用量ステロイド(1-3回数のmPSL0.5-1.0gのパルス)を導入療法の時に投与してよいこととし、後療法はPSN 0.5-1.0mg/kg/日で最大投与量60mg/日とした。治療レジメンはEuro-Lupus Nephritis Trial and the Aspreva Lupus Management Studyに基づいた。ACE阻害薬やARB、HCQの投与はtrial protocolにおいて推奨された。

 

Efficacy End Points

オリジナルのprimary end pointであるweek 104の順序に応じた腎改善率(complete, partial, no response)はUPCR、尿沈渣、calculated GFRに応じて決められた。長期的な腎のアウトカムの予測因子に関するエビデンスが蓄積されつつあることに対応し、primary end pointはpartialを除いたweek 104の2つのend pointとした。partial responseが長期的な臨床的価値が不明なアウトカムであるためだ。primary efficacy renal response (PERR) はUPCR<0.7かつeGFRの悪化>20%がないか60ml/min/1.73m2以上、かつ治療失敗に対するレスキューがないことと定義された。

 

major secondary end pointsはweek 104のcomplete renal response (CRR: UPCR<0.5、かつeGFRの悪化>10%がないか>90ml/min/1.73m2、かつレスキューがない事)、week52のPERR(上述)。

 

Definitions of Treatment Failure

患者はweek24までにPSN≤10㎎で、week104までこの量を維持することが求められた。ただしweek 24-76の間、LN以外の理由でプロトコールで定められた短期間のレスキュー治療は許可された。ステロイド以外のレスキューはweek76-104の間は許容された。患者は導入~維持療法のレジメンの間、ステロイドのルールを守れなかったり、免疫抑制剤を追加された場合は治療失敗とみなされた(局所の免疫抑制剤は許可)。week24以降にACE阻害薬・ARB、HCQが追加された場合、標準療法(IVCY-AZP or MMF)の許可された投与量を超えた場合も治療失敗とみなされた。

 

Safety Assessments

安全性の評価は有害事象AEs、重症AEs、興味のあるAEs(癌、注射時のアナフィラキシー・過敏性反応、興味のある感染症うつ病、自殺、自傷行為)、死亡、免疫原性。独立したデータと安全性管理委員会が進行中の安全性データのレビューを提供した。

 

Statistical Analysis

私たちは448例のサンプル数があれば80%のパワーでprimary end point (PERR at week 104)において13.6%ポイントの群間差、および最小の検出できる群間差9.7%を検出しうるであろうと算出した。placebo群の患者の改善率が40%と推定したうえで。

 

Efficacy end pointsはmodified ITT populationで解析した。これはランダム化されてbelimumabまたはplaceboを少なくとも1回投与された全ての患者を含むというものだ。complianceの問題があった施設からの2例をmodified ITT populationから除外した。安全性end pointsはランダム化され少なくとも1回belimumabまたはplaceboを投与された全ての患者で解析された。end pointsは全体的なtype I errorを制御するため予め設定された階級制度でstep-down sequential testing procedureを用いて解析された。PERRとCRRはlogistic回帰を用いて解析された。腎関連イベントや死亡までの時間はCox proportional-hazards regressionを用いて解析された。尿沈渣を含まない、順序に基づく腎反応性はrank analysis of covarianceを用いて解析した。Statistical models controlled for induction regimen, race or ethnic group, baseline ratio of urinary protein to creatinine, and baseline eGFR. (導入レジメン、人種や民族、baselineのUPCR、baselineのeGFRで調整でコントロールされた統計モデル?)

 

PERR、CRRとordinal renal responseの解析においてbelimumab/placeboを 中止した患者、trialから離脱した患者は改善しなかったと考えられた。In the Cox proportional-hazards model, discontinuation of belimumab or placebo, treatment failure that was not related to a kidney event, or withdrawal from the trial before a renal-related event or death occurred were bases for censoring of patient data. (Cox比例ハザードモデルでbelimumab or placeboの中止、腎イベントと関連しない治療失敗、あるいは腎関連イベントや死亡が起きる前の研究からの離脱は患者データの検閲のベースであった?) 安全性データは患者がbelimumab or placeboを投与されている間のデータを対象とした。

 

Resultsへ

oiwarheumatology.hatenablog.com

 

 

ps;7月にEULAR学会報告の抄録だけについて触れていましたね↓

BLISS-LN (EULAR 2020抄録より) ーベリムマブ静注10mg/kg/月はLNに有効ー - リウマチ膠原病のQ&A