リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

SARAH trial;RA患者には手の運動とストレッチを。

SARAH trial
 
RA運動療法の有用性を調べていて、大規模なRCTを見つけました。
 
Strengthening and stretching for rheumatoidarthritis of the hand (SARAH): SARAH trial
 
イギリスにおいてStable RA490例を対象とし、手の運動療法とストレッチの有効性を評価した試験です。
 
試験のプロトコールは以下、
 
介入の詳細は以下に示されています。
 
Lancetに掲載された論文のAbstractを訳します。
 
Lamb SE, et al.
Exercises to improve function of therheumatoid hand (SARAH): a randomised controlled trial.
Lancet. 2015 Jan 31;385(9966):421-9.
 
BACKGROUND:
疾患を修飾する生物学的製剤やその他の薬物はRA患者の疾患活動性、関節破壊を大きく改善させた。しかし、身体機能とQOLの改善は同等には示されているとは言えない。患者に応じた手の運動(tailoredhand exercises)は付加的な改善を提供するかもしれないが、証拠は欠如している。私たちは12ヶ月間、通常の管理に加えtailored hand exercisesによる効果とコスト効果を評価した。
 
METHODS:
UKの国立健康サービス17施設におけるこの実際的な多施設並行群試験において、疼痛と手の運動障害を有し、少なくとも3ヶ月間薬物療法が変わっていないRA490例を通常のケア、および通常ケアに加え強化・ストレッチのtailored hand exercisesプログラムに無作為に割り付けた。参加者はセンターによって送別化されランダム割り付けされた。割り付けはコンピューター発生で行われ、参加者と治療を行う治療者はランダム化の後に隠蔽化はされなかった。アウトカムの評価者と全ての調査者は割り付けについて隠蔽化された。理学療法士作業療法士は治療を提供した。The primary outcome12ヵ月後のthe Michigan Hand Outcomes Questionnaireの手の機能の全般スコア。ITT (intention to treat)解析で行われた。私たちは質調整生存年(生活の質で調整した生存年)あたりのコストを計算した。This trial is registered as ISRCTN 89936343.
 
FINDINGS:
2009/10/5-2011/5/10の間、1606例をスクリーニングし、490例が無作為に通常ケア (n=244)、またはtailored exercises (n=246)に割り付けされた。438/490 (89%)12ヵ月の観察期間のデータを提供した。手の全般機能の改善は通常ケアで3.6points (95% CI 1.5-5.7)exercise 群で7.9 points (6.0-9.9) (mean difference between groups 4.3, 95% CI 1.5-7.1;p=0·0028)。疼痛、薬剤レジメン、医療財源の使用は12ヶ月間安定しており、二群間で差は無かった。治療に関連した重症のAEsは観察されなかった。tailored hand exerciseのコストは一人当たり£156; 質調整生存年(生活の質で調整した生存年)あたりのコストは£9549 with theEQ-5D (£17,941 with imputation for missing data)
 
INTERPRETATION:
私たちはtailored hand exerciseのプログラムが様々な薬物療法に加えて提供することでコストが低く、価値がある介入であることを示した。機能、身体障害、健康関連QOLにおいて生物学的製剤、DMARD療法の利益を最大限に高めることを治療の大きな目的とするべきである。

 

 
<孫引き>
介入の詳細を拾ってみます。患者さんの説明に役立ちそうです。
Heine PJ, et al:Physiotherapy 98:121-130,2012
 

Figure
 
イメージ 1
 

Table

 
運動の内容
反復
 
最初の静止
最初の負荷
運動の拡大
可動域
MCPの屈曲
5
5
-
①反復を10回まで増やす
②静止時間を10秒に増やす
 
手指屈筋腱の運動*
 
23指間の開大
 
手関節の回し運動
 
手指を開く
 
手指で後頭部を触る
 
手背を背中に当てる
強化
手関節伸展**
10††
-
3-4/10
10回の反復を2セットする
Borg scale4-5に上げる
Borg scale5-6に上げる
10回の反復を3セットする
 
握力
 
23指間で挟む
 
12指でつまむ
*PIPDIPを最大限屈曲させて、指腹を手指から手掌につくようにMCPを緩徐に屈曲させる。
**紐の両端をつないで円形にしたものを両手で掴んで、両側の手関節を伸展させることで紐をひっぱる。
†太い棒のようなものを手指と手でしっかりと握る
††812
‡修正されたBorg scaleで感覚的な疲労度を10段階で評価する。5hard 10very, very hardとして、3moderate)、4somewhathard)に相当する程度。