リウマチ膠原病のQ&A

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DPP-4阻害薬による関節炎

最近、話題のDPP-4阻害薬による関節炎ですが、日本人の報告を紹介します。

RS3PE in association with dipeptidylpeptidase-4 inhibitor: report of two cases.
Yamauchi K, et al.
Diabetes Care. 2012 Feb;35(2):e7. doi:10.2337/dc11-1995.
 
RS3PE in Association With DPP-4 Inhibitor: Reportof Two Cases
 
 RS3PEMcCartyによって最初に報告された、手指・足趾の対称性のPitting edema、圧痛、腫脹、and/or 関節可動域の制限; 倦怠感; 発熱で特徴づけられる(1,2)。通常高齢者に起きる (1,2)。私達は最近DPP4阻害薬を開始後すぐに発生し、中止後に著名に改善したRS3PE2例を経験した。

Case 130年間の2型糖尿病の歴を有する74歳女性。gliclazide20 mgsitagliptin50 mgに変更後に5週間後に手の浮腫、微熱、倦怠感発生した。診察上、両手背の高度のpittingedema、手指と足背の軽度の浮腫を認めた。軽度の関節痛が手と膝にあった。HbA1c7.2% (National GlycohemoglobinStandardization Program equivalent)
Case 21年間の2型糖尿病を有する71歳男性。Vildagliptin 100 mg開始8週間後に手背と足背のpitting edemaに気づいた。HbA1c5.7%

Case 1 and 2において、CRP (基準値 ,9.5 nmol/L)は各1,313 and 13 nmol/LESR86 and 23 mm/hRFACPAANA、抗DNA抗体が2例とも陰性。2例とも薬剤アレルギー、膠原病はなし。Case 1ではDPP4活性を有するリンパ球膜プロテアーゼCD26の表現が末梢リンパ球の38%であり、正常であった(3)。症状と所見、ラボデータはRS3PEの診断を確率した。DPP3阻害薬の使用がRS3PEに関連したという仮の判断のもと、2例ともDPP4阻害薬は中止された。Case 1において症状・所見は7日後に著名に改善した。CRP837 nmol/Lsitaglipinを中止して25日後、浮腫は完全に消失しなかったため、Prednisolone 20mgを開始した。浮腫は完全に消失し、CRP76nmol/Lになった。Case 2ではvildagliptin中止10日以内に症状と所見の著明な改善とCRPの正常化 (8nmol/L)がえられた。

DPP4阻害薬は比較的新しい経口血糖降下剤である。血漿のグルカゴン様ペプチド1を活性を上げ、そのことで膵臓B細胞から放出される血糖誘発性のインスリンを増強する。この報告はDPP阻害薬を内服する患者においてRS3PEが発生するという最初の報告である。原因・結果との関連は決定的に確立されてはいないが、一過性のイベントの発生はDPP4阻害薬がRS3PEの発生に関連するかもしれないことを強く示唆する。メトホルミンとDPP4阻害薬との組み合わせの副作用の可能性として、水疱性類天疱瘡が二つのグループより報告された (4,5)。私達の2例の観察よりDPP4阻害薬の皮膚科学的な可能性のある副作用を評価する点において認識が高まることが提案される。もしその他の報告が観察されれば広範な疫学的研究が必要かもしれない。
 
※vildagliptin・・エクア、sitaglipin・・グラクティブ、ジャヌビア

 

ps;↓ですが、執筆協力しております!