リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

高安動脈炎における生物学的製剤①

Clinicalscenario
20歳女性 高安動脈炎
プレドニゾロンPSL1/kgで治療開始し、一旦改善したがPSL20mgで再発した。MTXを併用しPSLを増量したところ、再度改善した。PSL15mgまで減量したところ再度CRPが上昇し始めた。

(症例は架空です)
 
< 疑問、発生!>
ステロイド抵抗性、MTX抵抗性の高安動脈炎に対する生物学的製剤の効果を知ろう。
 
Uptodate
Treatment of Takayasuarteritisを読みましたが、以前訳したときと同様でした。

 
それにしても、TCZ(トシリズマブ、アクテムラⓇ)の記載が少ないように思うのですね・・・
 
Pubmed
Uptodateで今ひとつなので、Pubmedで調べてみます。日本で使用できるBiologicsと高安で掛けてみます。
 
検索式
*1 AND(takayasu[title] or takayasu's[title])
Limits: Language-English
61件ヒット(Accessed, 12/16/2015
 
いくつか気になった論文をチェック!大量なので、流し読みです。あしからず。

リウマトロジストのコメントを→赤で記載しています。
 
1. Efficacy ofBiological-Targeted Treatments in Takayasu Arteritis: Multicenter,Retrospective Study of 49 Patients.
Circulation2015;132(18):1693-700.
Abstract
高安動脈炎(TAK49例の特徴とアウトカウを調べるための後ろ向き多施設協同研究(80%が女性; 平均42[2055]TNF-α阻害薬[80%]またはTCZ[20%]で治療され、ACRまたは石川基準を満たすを満たすTAKCRに関連する要素を調べた。48%が従来型の免疫抑制剤で十分にコントロールされなかったか、耐用できなかった(中央値3 [15])。生物学的製剤に対する全体的な改善率(完全または部分的)は6か月、12か月の時点で75%83%。生物学的製剤の治療で改善した者は改善しなかった者に比べ、治療開始時のCRP値が有意に低く(22 mg/L [1046 mg/L] versus 58 mg/L [2676 mg/L]; P=0.006)、生物学的製剤の前に使用した免疫抑制剤の数が有意に低い傾向があった(P=0.054)CRP値と毎日のプレドニゾン量は生物学的製剤を開始して12ヶ月後に有意に低下した (30 versus 6 mg/L [P<0.05]and 15 versus 7.5 mg [P<0.05] at baseline and 12 months, respectively)。生物学的製剤の治療で3年間のrelapse-free survival90.9% (83.5%99%)であり、抗リウマチ剤を使用した場合は58.7% (43.3%79.7%; P=0.0025)であった。TNF阻害薬とTCZとの間に有効性の差はなかった。中央値24カ月の後、21%の患者が副作用を経験し6.6%で中止された。
結語 この全国的な研究は難治性のTAK患者において高い有効性と容認できる安全性を示した。

(本文より)
aTNF56回(80%)の治療のうちIFX (インフリキシマブ;レミケードⓇ)44例, ETN (エタナセプト、エンブレルⓇ) 6例、ADA (アダリムマブ、ヒュミラⓇ) 6例。TCZ 14例(20%).

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Figure 3. TAK49例におけるDMARDn73治療回数)、生物学的製剤(70治療回数)で治療された血管系の合併症の累積発生率

 
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Figure 4. TNF阻害薬(n56治療回数)、TCZ14治療回数)TAK49例における再発なし生存

→最初からすごい報告ですね。TNF阻害薬(ほとんどIFX)もTCZもRelapse-free survival@3年はともに9割前後。5年まで9割を保っているTNF阻害薬の方がよいかも(TCZは3年まで)。

5. Cytokine storm aftercessation of tocilizumab in a patient with refractory Takayasu arteritis.
Int J Cardiol.2015;187:319-21.
TCZ寛解20回目で中止。その9週間後に咳あり、CRP1.22TCZ再開にて改善。サイトカインを測定すると著増していた。
→症例報告。怖い話かと思いましたが・・たいした話ではなかった。
 
10. Efficacy and safety ofanti-interleukin 6 receptor monoclonal antibody (tocilizumab) in Colombian patientswith Takayasu arteritis.
J Clin Rheumatol. 2014Apr;20(3):125-9.
コロンビンのTAK8人にTCZを少なくとも9カ月使用。全例8mg/kg/月。全例が改善し、PSN50mg/d6.25mg/dに。一例で画像にて改善を確認。TCZ投与の中央値は18カ月。
→TCZを使った8例。画像の評価は十分でない。
 
12. Rapid control of diseaseactivity by tocilizumab in 10 'difficult-to-treat' cases of Takayasu arteritis.
Int J Rheum Dis. 2013Dec;16(6):754-61.
インドからの10例の報告。2例はもともとIndian Takayasu Arteritis Score(ITAS)ゼロのStable8例が1以上のActiveTCZ 4回目の投与までに4例がITASゼロになった。残り6例も6カ月以内に画像・CRPとも安定。1Lost to followupで残った9例全例がTCZ中止され、TCZ中止後中央値8ヶ月フォローされた。Stableを維持できたのは9例中2例のみ。
→TCZで寛解しても中止するとほとんどが再発。
 
13. Tocilizumab for the treatment of patients with refractory Takayasu arteritis.
Int Heart J.2013;54(6):405-11.
大阪大学からの報告。4例全例がCRPSAA改善。2例は動脈肥厚の改善。PSL21.3 mg/d1.5 mg/dに減量できた。

 
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→2例で画像上改善したというが、いずれもステロイド増量(高用量)と同時にTCZを開始しており、良くなって当然かもしれません。でも、1例目(↑)はステロイドを中止できているので、TCZの効果もあったのかもしれません。
 
17. J Rheumatol. 2013Dec;40(12):2047-51.
Treatment of refractoryTakayasu arteritis with tocilizumab: 7 Italian patients from a single referralcenter.
イタリアのサンラファエル大学からのRetrospective cohort62例のTAKのうち22例がTNF阻害薬、7例がTCZで治療された。フォロー期間の中央値は14ヶ月。Complete response3例、Partial1例。残り3例は疾患活動性が残っておりTCZを中止。画像上、CR3例は進行なし。2例は1ヶ所進行、残り2例が少なくとも1ヶ所の新規病変。3例に副作用ありTCZ中止;再発性肺炎、再発性気道感染、重症皮疹。

→大切な報告です。TCZを使った7例中CR3例、PR1例、それ以外が3例。7例中3例において疾患活動性が持続したそうです。ただし、TCZでCRになった3例では画像上の進行はなかったとのこと。副作用の再発性肺炎、重症皮疹は重大ですよね。
 
19. Serial analysis ofclinical and imaging indices reveals prolonged efficacy of TNF-α and IL-6 receptor targeted therapies in refractory Takayasu arteritis.
Clin Exp Rheumatol. 2014;32(3Suppl 82):S11-8.
98例を後ろ向きにレビュー。9例がBioで治療され、8例が抗TNF3例がTCZ。抗TNFIFX4/ETN2/ADA1例。抗TNF1例はIFX10mosで新規の血管狭窄が出現し、TCZに変更しRemission。もう1IFX使用中に胸部大動脈瘤を来した。その他の5例では進行なし。TCZ残り2例は19mos20mosで血管障害の進行なし。
→IFX抵抗性でTCZでレスキューされた症例。
 
20. Tumor necrosis factoralpha inhibitors in patients with Takayasu's arteritis refractory to standardimmunosuppressive treatment: cases series and review of the literature.
Clin Rheumatol. 2013Dec;32(12):1827-32.
 
難治性TAK9例にTNF阻害剤を使用;8例にIFX1例にADAIFX200300mg/46wksADA40mg/2wksで開始。1例を除き高い活動性を有していた。完全寛解5例、部分寛解3例。全例PSN10mg以下に減量できた。PETの再検ができた7例中6(85.7%)で活動性の低下を認めた。1例にIFXのアレルギー反応。4例でIFXの間隔を6-8wksに伸ばすと再燃した。

 
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 IFX開始前と1年後;FDG集積が消失

→IFXもなかなか良いです。PETは7例中6(85.7%)で活動性の低下を認めた。4例でIFXの間隔を6-8wksに伸ばすと再燃した。
 
その2へ
 
 

 

 ps;↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

以下でEGPAのreviewを執筆をさせていただきました!

 


 

*1:infliximab or etanercept oradalimumab or certolizumab or golimumab or tocilizumab or abatacept