リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

強皮症の治療(2016)

膠原病の診療2016」と題して、お話させていただく機会をいただきました。
 
2016とつけたのは、ここ数年の膠原病・血管炎の領域における大きな変化を経て、現在の最新治療のあり方についてお伝えしたかったからです。
 
この度はそのなかから、ぜひ触れておきたかったテーマをアップします。
 
強皮症の治療学です。強皮症の治療は、二つに分けられます。
 
血管の異常に対する治療、そして、線維化に対する治療です。
 
イメージ 1

前者についてまとめますと、
 
CCBsをはじめとする降圧剤、ボセンタン、保険適応はありませんが、PDE5阻害薬です。
 
 
 
イメージ 6
 

プロスタノイドはエビデンスが弱いです。ドルナー(20μg)3T3×という処方をよくみかけますが、上の論文をぜひ手にとってほしいものです。
 
欧米で使用されるilloprostは潰瘍を治すくらいのパワーがある薬のようですが、残念ながら日本で開発されたベラプロストはそういう作用はありません。
 
 
イメージ 7

 
2015.8月にこの薬の保険適応が拡大され、強皮症の皮膚潰瘍に使用できるようになりました。

既存の皮膚潰瘍を有するSSc患者を対象に、皮膚潰瘍の発生をプラセボで2.7ヶ→ボセンタンで1.9ヶに抑えるというわずかな効果ですが。もうひとつのPrimary outcome、既存の潰瘍を治す効果は証明されませんでした。
 
肝障害などの副作用もある薬なので、大切に注意して使いましょう。
 
 
 
イメージ 2
 

間質性肺炎や皮膚硬化などの線維化に対する治療としては、以前にこのブログでも触れた英国で行われた、シクロフォスファミドパルス療法+少量ステロイド療法でしょうか。
 
有意差はつきませんでしたが、Scleroderma-lung studyのデータ(↓)も一緒に考えると、このTrendはnが少ないためにこうなっているだけで、nを増やせば有意差が出ると個人としては考えております。
 
 
イメージ 3
 
イメージ 4
 
間質性肺炎も皮膚も、エンドキサンで炎症を強力に抑制することで、1年半までは改善が得られるのです。
 
ただ、そのToxxicityのため投与期間が1年と制限があることは仕方がありません。そのため、2年後には1年半までの有意な改善はなくなってしまいました。
 
 
 
D-penicillamineの負の歴史にも触れておきたかったので、触れておきます。
 
 
イメージ 5
 

「慣習が正しいかどうかは分からない。」
 
 
このRCTは、若かりし頃のリウマトロジストにとって、EBMの洗礼を受けた忘れられない研究です。
 
皮膚硬化、間質性肺炎に対するよりよい治療が開発されるよう願ってやみません。
 
今後はB cell depletionなどの新規治療に期待したいですね。